News / Topics

ニュースリリース/お知らせ

東京成徳大学と実施した「感情労働」に関する研究論文が日本ヒューマン・ケア心理学会発行「ヒューマン・ケア研究」に掲載

2025年04月07日

このたび、日本ヒューマン・ケア心理学会が発行する「ヒューマン・ケア研究」誌に、当社の調査研究部に所属する中川が共同執筆した論文が掲載されました。
当該論文は、2019年秋より東京成徳大学の関谷准教授とともに進めてきた共同研究をまとめた論文です。
詳細は以下の通りです。

■学会名:一般社団法人 日本ヒューマン・ケア心理学会
■雑誌名:ヒューマン・ケア研究 第42巻2号 111-122頁(2024年3月刊行)
■論文タイトル:感情労働における深層演技の様態を再検討する─労働者の主観的感覚に基づく記述的検討の試み─
■論文内容:以下参照

<要点>
・本研究の目的は、新しい感情労働*尺度の開発に向けた予備的な研究として位置づけられ、感情労働における2つの演技方略**のうち、特に概念定義が曖昧なままである深層演技の主観的なプロセスについて検討することであった。
・本研究では、フォーカス・グループ・インタビューのデータを逐語化した上で、「うえの式質的分析手法***」を用いて定性的な分析を行った。
・本研究の知見から、感情労働における演技方略に関して以下の点が明らかになった。

深層演技とは、相手に対する共感感情を職務に活用しようとするプロセスである。
(深層演技≠共感)
深層演技は、教育や研修などを通して形成される認知的な枠組みが基盤となっていることが多く、その傾向は看護職など確固たる教育課程がある職種で特に顕著である。
表層演技と深層演技は多様な形で併用されるうるため、それによって深層演技が従事者にもたらす影響に一貫性がなくなる可能性がある。

これらの成果は、当社が提供する商品やソリューションの改善、開発にも反映させることで、ひいては職務ストレスの低減に寄与できるよう活用してまいります。当社は今後も関係学会や各種イベントに参加することで、研究領域においても社会貢献性の高い取り組みを推進していく所存です。

■著者プロフィール

中川紗江
株式会社アドバンテッジリスクマネジメント 調査研究部
2016年に同志社大学心理学部心理学研究科心理学専攻博士後期課程修了(博士 [心理学] ;同志社大学)。同志社大学心理学部その他多数の大学・専門学校での嘱託講師、大学病院での認知症患者を対象とし知能検査担当の心理士を経て、2018年より当社に入社。
ストレス科学・産業組織心理学を専門として、主に、ソリューション開発・改良のための効果検証案件を担当しているほか、アドバンテッジJOURNALにおいて心理学の専門知識に関するコラムを複数執筆している。著書に「感情制御ハンドブック」(分担執筆、北大路書房、2022年)がある。

関谷大輝
東京成徳大学応用心理学部健康・スポーツ心理学科 准教授
2001年に早稲田大学第二文学部卒業後、横浜市役所(社会福祉職)に入庁。福祉事務所および児童相談所において、対人支援に関わる最前線のケースワーカーとして勤務する。
公務員としての仕事の傍ら、2011年に筑波大学大学院人間総合科学研究科生涯発達科学専攻博士後期課程修了(博士 [カウンセリング科学] ;筑波大学)。
2013年より東京成徳大学応用心理学部准教授。社会福祉士、精神保健福祉士、公認心理師、2級キャリアコンサルティング技能士。著者に「あなたの仕事、感情労働ですよね?」(単著、花伝社、2016年)、「感情制御ハンドブック」(分担執筆、北大路書房、2022年)など。論文として、「Development of the Japanese version of the Mindful Eating Scale (MES)」(共著、Japanese Psychological Research、2023年)、「職業的感情管理および仕事と家庭の分離が養育行動に及ぼす影響―共働きの母親を対象とした検討―」(単著、健康心理学研究、2019年)などがある。

注)
*感情労働とは、「公的に観察可能な表情と身体的表現を作るために行われる感情の管理」と定義され、業務の一部として自身の職業的役割にふさわしい感情(例. 優しい、親しみやすい、安心感があるなど)を、表情や声の調子、ジェスチャーなどで作り出すことが求められる仕事を指す。
** 感情労働における対人的な交流において、労働者が自身の感情を適切にコントロールするために用いる手法を指し、表層演技と深層演技の2種類に大別される
***KJ法をさらにシンプルに使いやすくしたデータ処理法とされ、 a)収集したデータを効率よくまとめる、 b)インタビュー時に語り手や聞き手が予想しなかった発見が分析を通じて得られる、 c)データに語らせることで根拠をもとに確実にこれが言えると主張できる、という3点のメリットがあるとされる質的分析手法である