目次
組織力向上の鍵となるエンゲージメント
人手不足倒産という言葉が報道で大きく取り上げられています。求人募集をかけても人が来ない、せっかく採用してもすぐに辞めてしまう、人が育たない。こうした問題に直面する企業が増えています。定着率の低さは長期的な人事戦略にも影響を及ぼすため深刻な課題です。
かつてのように企業に対する忠誠心や帰属意識が期待できなくなっている中で、企業が生き残っていくためには、時代の変化に対応できる強い組織づくりが必要です。いま企業の人事戦略では、働きやすい環境を整えることで、エンゲージメントが高まり、そのことが業績向上に寄与すると注目を集めています。
エンゲージメントとは?
エンゲージメントとは「愛着心、思い入れ」という意味です。しかし企業組織で考えた場合はもう少し広い意味を持ちます。人事戦略で言うエンゲージメントには「自分自身の知識や経験、スキルの向上を通じて組織に貢献し、個人としても組織としても成長していることを実感することで、組織に所属する意義を感じる」という意味があります。
無条件の愛社精神とは異なり、成長の場を与えられ、実績が適正に評価され、企業自体の成長を実感できることが必要です。逆にいえば自分が成長できない、正しく評価されない、企業の成長性が感じられない、となると社員がエンゲージメントを得ることはありません。
エンゲージメントが必要な理由
終身雇用の崩壊やグローバル化などにより企業と社員の関係性も変わってきました。社員にも「就社」という意識は薄れ、転職に対する心理的ハードルは下がっています。
特に優秀な人ほど自身のキャリアを冷静に見つめステップアップしていきます。また、仕事第一ではなく私生活を大事にしたいなどキャリアに対する考え方も多様性に富んでいます。
企業としては、せっかく育てた社員がこれから本格的に戦力として貢献してくれるだろうと期待していた時にいなくなるのは大きな痛手です。もしくは退職しないまでも、モチベーションが上がらず、目標や問題意識もないまま日々の業務を続けるだけで一向に生産性が上がらない状態となってしまいます。
日本の労働生産性は、主要先進7カ国(米・英・独・仏・日・加・伊)で最下位の状況が続いています。その背景には、エンゲージメント(幸福度・働きがい)の低さがあります。
世論調査及びコンサルティングを行う米ギャラップ社の調査では、エンゲージメントが高い人は、エンゲージメントが低い人に比べて生産性が2割ほど高いという結果が出ています。
そのため、労働生産性を上げるためには、エンゲージメントを高めることが最重要課題といえます。人事部門に求められているのは、エンゲージメントを高め、社員のパフォーマンスを引き出すことと、そうして能力開発した社員をいかに会社組織の中に留めておくかということです。
単に社員に優しい施策で従業員満足度を高めるだけではなく、時には厳しく成長を促すように誘導する必要があります。社員一人ひとりに「この会社を作っているのは自分だ」と経営に参加しているという感覚や意識を持たせることができれば、人事部門の役割をしっかり果たしているといえるでしょう。
人事部門の武器はコミュニケーション
では、人事部門が社内のエンゲージメントを高めるためにできることにはどのような方法があるでしょうか。たとえば社内イベントの企画や公認サークルや部活、サロンスペースの設置などがあげられます。その結果、部署を越えたコミュニケーションが可能になり、チーム力を高めることにつながります。
また定期的な面談も効果的です。通常、人事評価は1年もしくは半年に1度行う企業が多いですが、人事面談は四半期に一度程度が良いでしょう。それより多いと人事部門の負担が大きく、半年以上空くと即時性が薄れてしまいます。
組織の生産性を上げるためには、コミュニケーションが不可欠です。コミュニケーションが活発で明るい職場は、従業員が働きやすい職場となります。
コミュニケーションを武器にエンゲージメントを高めることが働きがいのある職場づくりや生産性向上への近道です。そのためにはまず組織としての柔軟な対話力が必要だといえるでしょう。
いま、人事領域で話題のエンゲージメントがこの1冊でわかる!エンゲージメントの概念、活用方法、実際の取り組み事例などを収録したお役立ちハンドブック『人事担当者のためのエンゲージメント基礎知識』