多くの企業が、採用選考で適性検査を実施しています。適性検査は、入社後に高いパフォーマンスを発揮できる人材を把握したり、逆に極端な傾向を持ちトラブルをおこしかねない人材、入社後早々に挫折しやすい人材などを見極めるために欠かせません。企業カルチャーと人材との相性を見る上でも重要です。
そもそも人の行動特性、心理特性は、本人ですら気づいていないことが多いため、面接で見極めるのは困難です。できるだけ精度の高い適性検査を実施し、自社にマッチングする人材を選考していきましょう。
この記事では、適性検査において重視すべきチェック項目は何か?入社後に成長していく人材を見極めるためにどのような適性検査を選ぶべきかを紹介します。
目次
適性検査で重視すべき項目は性格よりも「行動特性」
優秀な人材と聞くとどのような人を思い浮かべるでしょうか?一般的には“学歴が高く明朗でコミュニケーション力があり成長意欲が高く、精神的にも強そうな人材”を想像するかもしれません。ところが、頭が良く高学歴で性格も申し分ないにもかかわらず課題を抱える人材もいれば、内向的でコミュニケーションが苦手そうな人材が高いパフォーマンスを上げるケースもあります。
中途採用などを行うと同業界で活躍していた人が自社の現場で成果をあまり発揮できないケースもよくあります。多くの場合それは「わが社の基準には合わない」と当たり前のように受け止められます。実は企業における“優秀な人材”の基準はかなり多様なのです。
2000年代からは「行動特性=コンピテンシー」という概念が登場して注目され、世間一般の基準ではなく「自社で活躍できる人材」を分析し、必要な行動特性を把握した上で採用時の指標とする企業が増えています。コンピテンシ―とは、本人が生育環境やこれまでの人生で身につけてきた特性であり、仕事の取り組み方に大きく影響します。
採用にあたっては、自社の業務に必要な行動特性を理解した上で、応募者の行動特性と照らし合わせることがポイントです。
なぜ採用時に「ストレス耐性」を重視すべきなのか?
もう一つの重要なチェック項目は「ストレス耐性(ストレスに対する強さ)」です。なぜなら、一般に人は過度なストレスがかかると個性のネガティブな面が強く出てしまい、パフォーマンスにマイナスの影響を与えるからです。
例えば、平常ならリーダーシップのある人材が過度なストレスによって部下に攻撃的になったり、協調性のある性格のよい人材が優柔不断になり保身に走ったり、きわめて分析的で頭脳優秀な人材がストレスがかかると、成果が出ないにもかかわらず過去に成功した手法を繰り返し続けることがあります。
適度なストレスは悪いものではなく、ときとして良いパフォーマンスに繋がることもありますが、それが過度になってしまうことで「行動」が変容する可能性があることに留意しましょう。そうはいっても、精神的に強靭な人材ばかりを採用することも難しいでしょう。
しかし、ストレス耐性が低いタイプはちょっとした外部環境の変化でもネガティブな特性が出やすい傾向があります。厳しいプレッシャーがかかると自認する企業であれば、応募者の「ストレス耐性」は採用時の重要指標でしょう。その後の人材の成長、定着率に大きく影響するからです。
ストレスがかかる場面でも、必要な成果をもたらす「行動特性」を発揮できる人材こそが、企業にとって優秀な人物といえるのではないでしょうか。
「ストレス耐性」を診断できる適性検査がトレンド
近年は、多くの企業でメンタルヘルス不調者の発生が課題になっていることもあり、適性検査業界でもストレス耐性やストレスがかかったときの行動特性を診断できるアセスメントが増加しています。Web上にもストレス耐性が測れるさまざまな適性診断サービスがあります。無料・安価なものも増えました。
ただ、あまりに計測項目が少ない検査は、簡便に測定できる一方でストレスへの脆弱性を見抜けないリスクがあることに注意しましょう。少なくとも人事部門が採用選考のための適性検査を選ぶときは、ストレスの影響を強めてしまう性格傾向はどのくらいのレベルか? ストレスを受けた後の対処能力(コーピング)はどうか? 周囲からのサポートなどストレスを緩和する力はあるかなど、ストレス耐性を幅広い視点で見極められる検査かどうかをチェックしましょう。
適性検査だけで人物を100%判断することは不可能ですが、面接だけでは見抜くことが難しい「ストレス耐性」について適性検査を活用することは有効です。あわせて面接の際に応募者がストレスを抱えていると感じた場合には、適切な質問を行い回答内容で現在のストレス状態を確認しましょう。
ストレス耐性が高い人材は、問題解決能力が高く、プレッシャーがかかった現場においてもパフォーマンスを発揮できる可能性が高い人材です。採用時の適性検査で行動特性やストレス耐性に注目し、入社後に力を発揮できる可能性が高い人材を選抜していきましょう。
今後、少子高齢化による労働人口減少により、人材確保が難しい企業も増えていくと考えられます。適性検査の結果は、ボーダーラインとして利用するだけでなく、入社後のフォローアップとしても活用できます。社員がどういった点でストレスを感じやすいか、配属先の上司などに検査結果を共有することで、適切なフォローアップやサポートにも繋がるでしょう。