現在、日本は超高齢化社会を迎えようとしており、労働人口が不足することが予想されています。このような状況の中、企業は貴重な人材を確保し、定着率を上げる、つまり離職率を下げ、その上で生産性を上げていくことが必要です。
そこで今回の記事では離職率を高めてしまう要因や社員の離職を防ぐ方法について紹介したいと思います。自社の人材確保に課題を感じているという方はぜひ参考にしてください。
目次
離職率の定義
離職率とは、ある時点で企業に在籍していた人数に対し、一定期間(1年か3年とすることが多い)の間で退職した人数の割合を指します。例えば1年間の離職率の算出の際には、(1年間の退職者数)÷(年のはじまりの従業員数)×100という計算式が用いられます。
厚生労働省が平成30年上半期に実施した調査によると、日本の離職率は8.6%でした。前年の離職率は8.5%であったため、離職率は少し上がったという状況です。企業には社員の離職率を高めてしまうさまざまな課題があります。
離職率が高い企業の特徴
社員の離職率を高めている要因とは具体的にどんなものがあるのでしょうか。ここでは離職率の高い企業でよく見られる特徴について説明します。
① 人間関係の不満が多い
人間関係の不満が退職の引き金となることが多く見られます。「自分勝手なワンマン経営者に振り回される」「上司がフォローしてくれない」「みんな忙しそうで質問できない」など、経営者や上司・同僚への不満が多くみられる場合には注意が必要です。
② 休暇を取得しづらい職場環境
離職率の高いサービス業や休日に部活動の指導や補講で出勤する必要のある教育業では、休みを取ることが難しい状況です。これは離職率を高める大きな要因になっています。心身を休める暇もないくらいに働けば、体調を崩して働けなくなってしまいます。 また日本の多くの企業では休まず働くことは素晴らしい、といった考え方が根強く残っている状況もありますが、労働力確保のためにもこのような状況は早急に改善していかなくてはならないのです。
③ 人の育つ環境がない
人材育成に力をいれていない企業でも離職率は高い傾向にあります。またこのような企業では、人材の入れ替わりを見越して常に定期的に大量の人材採用を行っていることが多いです。
④ 働き方に多様性がない
現在、日本でも企業で働く上での価値観は多様化してきています。社員はこれまでと違い、性別に囚われることなく、子育てや介護などのライフイベントと両立して働くようになってきました。一部の企業では、自宅勤務やフレックスタイムといった働き方の自由度が高い制度も積極的に取り入れ始めています。このような企業の取り組みは労働力のアップにも大いにつながっていますが、逆にこのような多様性が認められない企業で働きたいと思う人はこれからどんどん減っていくでしょう。
上記の他にも、給与が低い、激務や厳しいノルマがある、社内で派閥争いがある、残業時間が多いといった悩みも社員の離職につながっています。あなたの会社では社員の間でこのような不満が話題になっていないでしょうか。
離職防止の対策法
しかし、社員の離職を防ぐために今から企業に出来ることはたくさんあります。まずは、休暇を取得しやすい環境づくりです。昔のような休まないことが正しいといった雰囲気は一掃して、有休取得推奨日なども設けてみましょう。ワークライフバランスは企業の成長を握る大きなカギです。
また、社員の職場での悩みに多い人間関係を良好なものにするために、風通しのよい環境づくりについても意識してみましょう。企業では社員同士のコミュニケーションを増やすきっかけとして、フリーアドレスや懇親会費用の補助といった取り組みができるでしょう。
採用の際には、入社後のミスマッチがないように選考をていねいに行うことも離職率の低下につながります。そして正当な評価制度や適切な評価フィードバックも社員の定着には不可欠です。その他に、福利厚生の充実、メンターや指導係の配置を行うことでも社員の離職を防止出来ます。
従業員満足度からエンゲージメントへ
企業のこのような施策の多くは、社員のエンゲージメント(エンプロイー・エンゲージメント)を高めることに貢献しています。エンゲージメントとは、従業員が企業へ主体的に貢献したいと思う度合いのことです。
近年、社員、そして企業の生産性を向上させるのは、これまで重視されていた企業への単なる満足度ではなくエンゲージメントだと考えられるようになってきました。
社員のエンゲージメントが高まると、企業と従業員がお互いに信頼しあう関係となるので、生産性が上がり、結果として、エンゲージメント向上は離職率の低下にもつながっているのです。今後、企業が成長を続けていくためには、従業員満足度ではなくエンゲージメントを高めていく必要があります。
まとめ
労働力不足が深刻化する中、社員の離職率は企業の将来を左右する指標のひとつです。貴重な人材の離職を防ぐには、休暇を取得しやすい環境づくりや評価制度の整備など社員のエンゲージメントの向上をねらった施策を行うことが効果的です。
近年、エンゲージメントの向上は企業の生産性を高められるだけでなく、サービス、品質、安全性を高めるという研究結果が出ているという点でも大変注目されています。
これから企業が存続していくためには、社員のエンゲージメントを高めるための施策を考えていく必要があると言えるでしょう。