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衛生委員会とは? 安全委員会との違いや役割、設置基準も解説

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「アドバンテッジJOURNAL」編集部

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法律により、事業者は一定の規模の事業場ごとに衛生委員会の設置が義務付けられています。衛生委員会とは、職場の安全や従業員の心身の健康維持・増進、職場環境の改善など、産業保健活動の取り組みを審議する場ですが、運営に課題を感じている企業も多いのではないでしょうか。「健康経営」の重要性が再認識されているなかで、衛生委員会のあり方や運営方法を改めて見直す企業もでてきています。今回は、衛生委員会の目的や設置基準、メンバーの役割、月別テーマ例などについて、わかりやすく解説します。

衛生委員会とは?

会議をする社員達

まず、衛生委員会とはどのような存在なのかについて解説していきます。

設置目的と役割

衛生委員会は、企業内で労使が協働して、従業員の健康障害や労働災害防止の取り組みを行う目的で設置されるものです。労使とは「労働者」と「使用者」と定義されていますが、衛生委員会における労使とは、わかりやすく言うと「一般従業員(労働者)」と「人事権を持つ管理職以上(使用者)」を指します。

従業員が健康で安全に働ける職場づくりを目指す産業保健活動は、事業者・使用者側の取り組みだけでは不十分です。現場で働く従業員の意見も取り入れながら、双方がいったいとなって進めていくことが必要です。衛生委員会を設置し議事を行うことは、従業員が働きやすい職場づくりのきっかけとなります。

設置基準・義務

労働安全衛生法第18条、及び第19条により、労働者が50人以上の事業場は業種に関係なく衛生委員会を設置することが義務付けられています。そして、月1回以上開催する他、委員会で話し合われた内容や講じられた措置について記録を取り、3年間保管すること(労働安全衛生規則第23条)なども法律で定められています。

50人未満の事業場では衛生委員会の設置義務はありませんが、委員会を設置している事業場以外の事業者は安全または衛生に関する内容について、関係労働者の意見を聴くための機会を設けなくてはいけません(労働安全衛生規則第23条の2)。

ワンポイント
「常時50人以上」の従業員数には、パート・アルバイト従業員や派遣従業員なども含みます。衛生委員会の設置義務は、従業員数が50人に到達した時点から発生します。従業員数が増加することが見込まれている場合には、衛生委員会の設置に向けた準備に早めに取りかかりましょう。設置の義務が生じているにもかかわらず、設置しなかった場合、50万円以下の罰金が課せられることがあります。

参考:厚生労働省安全衛生に関するQ&A

衛生委員会で審議する内容


衛生委員会では、企業の衛生に関連する議題について課題や解決のための対策を話し合います。なお議題は衛生に関する内容にとどまらず、業務内容・ハラスメント・職場設備など多岐に渡ります。また、労働者の健康や安全を維持するための、職場環境の改善なども議題の一つです。

衛生委員会での調査審議内容は以下の通りです。

労働者の健康障害を防止するための基本となるべき対策に関すること。
労働者の健康の保持増進を図るための基本となるべき対策に関すること。
労働災害の原因及び再発防止対策で、衛生に係るものに関すること。
前三号に掲げるもののほか、労働者の健康障害の防止及び健康の保持増進に関する重要事項

引用:労働安全法第18条

また、上記における「労働者の健康障害の防止及び健康の保持増進に関する重要事項」は、以下の通りです。

衛生に関する規程の作成に関すること。
法第二十八条の二第一項又は第五十七条の三第一項及び第二項の危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置のうち、衛生に係るものに関すること。
安全衛生に関する計画(衛生に係る部分に限る。)の作成、実施、評価及び改善に関すること。
衛生教育の実施計画の作成に関すること。
法第五十七条の四第一項及び第五十七条の五第一項の規定により行われる有害性の調査並びにその結果に対する対策の樹立に関すること。
法第六十五条第一項又は第五項の規定により行われる作業環境測定の結果及びその結果の評価に基づく対策の樹立に関すること。
定期に行われる健康診断、法第六十六条第四項の規定による指示を受けて行われる臨時の健康診断、法第六十六条の二の自ら受けた健康診断及び法に基づく他の省令の規定に基づいて行われる医師の診断、診察又は処置の結果並びにその結果に対する対策の樹立に関すること。
労働者の健康の保持増進を図るため必要な措置の実施計画の作成に関すること。
長時間にわたる労働による労働者の健康障害の防止を図るための対策の樹立に関すること。
労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立に関すること。
十一 第五百七十七条の二第一項、第二項及び第八項の規定により講ずる措置に関すること並びに同条第三項及び第四項の医師又は歯科医師による健康診断の実施に関すること。
十二 厚生労働大臣、都道府県労働局長、労働基準監督署長、労働基準監督官又は労働衛生専門官から文書により命令、指示、勧告又は指導を受けた事項のうち、労働者の健康障害の防止に関すること。

引用:労働安全衛生規則第22条

衛生委員会と安全委員会の違い

白と黄色のヘルメット

衛生委員会に類似するものとして安全委員会があります。安全委員会では、安全に関する規定や安全計画、安全教育など、労働者が働くうえでのリスクとなりうる危険性や有害性などについて調査審議が行われます。

安全委員会は、設置義務が発生する従業員数が業種ごとに異なるなど、衛生委員会よりもさらに設置条件が細かく定められているのが特徴です。両方を設置しなければならない事業場では、2つをセットにした安全衛生委員会を開くことも可能です。

構成委員会の構成メンバーと役割

曲線で結ばれた人のブロック

衛生委員会では有意義な話し合いを行うため、委員の構成が法律で定められています(労働安全衛生法第18条)。

構成メンバーは以下の通りです。

<構成メンバー>

  • 総括安全衛生管理者、または事業の実施を統括管理する者、もしくはこれに準ずる者(1名)
  • 産業医
  • 衛生管理者
  • 当該事業上の労働者で、衛生に関し経験を有する労働者

議長以外の委員は事業者が指名することとされています。また、議長以外のメンバーの半数は、その事業場における過半数を占める労働組合の推薦に基づいて指名をする必要があります。

もし労働組合がない場合には、労働者の過半数以上の推薦に基づいて指名しなければなりません。衛生委員会は、経営側に都合の良いメンバーのみで構成されないような仕組みになっています。ここでは、衛生委員会の構成メンバーとそれぞれの役割について解説します。

議長(1名)

議長は、衛生委員会において中立的な立場で「使用者(企業等)側」「労働者側」の各メンバーの積極的な意見を促しまとめていく、リーダー的な役割を担います。厚生労働省によると「総括安全衛生管理者又は事業の実施を統括管理する者若しくはこれに準ずる者」とされていますが、社内に総括安全衛生管理者が不在の場合は、総務部や人事部の部長、支店長、工場長などが担当することが一般的です。

責任ある役職者が議長を務めることにより、委員会内で持ち上がった課題に対する解決のためのアクションが取りやすくなります。スムーズな進行が求められる他、活発な議論がなされるよう、話題の提供や発言を促す役割も担います。

産業医(1名以上)

産業医は、「使用者側」のメンバーとして衛生委員会に参加します。産業医とは、医師免許を有していることに加えて、労働者の健康管理などに必要な知識を有する認定産業医の資格を持った医師です。労働安全衛生法で、常時使用する従業員が50人以上のすべての事業場に産業医の選任義務が課されています。

産業医は、医療的な観点から職場環境や労働災害対策に関するアドバイスを行います。専門家が加わることにより、審議が深まるだけではなく、メンバーの知識も豊かになることが期待されるでしょう。

衛生管理者(1名以上)

「使用者側」のメンバーとして衛生委員会に参加する衛生管理者は、労働安全衛生法で定められた国家資格です。常時50人以上の労働者がいる事業場は、従業員の健康障害防止のため、衛生管理者を専任しなければならず、一般的には人事・総務担当が取得していることが多いです。

ただし、専任する人数は事業場の規模によって異なります。外部の専門家と社内の橋渡し役となることも多いため、専門的な知識があり、かつ職場の状況にも詳しい有資格者の従業員が望ましいでしょう。

労働者(1名以上)

衛生に関する経験を有する従業員は、「労働者側」のメンバーとして衛生委員会に参加します。さまざまな立場からの意見が集まるように、部署、役職、性別、年齢などを考慮すると良いでしょう。

選任のポイント・注意点

各委員の任期に法律的な決まりはありませんが、一般的には1~2年周期で入れ替えを行います。また法律では議長以外の人数を定めていませんが、採決を取るときに構成メンバー数が偶数だと票が割れる可能性があるため、合計人数が奇数になるよう決めると良いでしょう。100名程度の企業の場合、一般的な最少人数は委員長(議長)以外を労使同数とした7名ですが、衛生管理者=人事担当者の場合は5名とすることもあります。自社の規模や実態に即して検討していくのがポイントです。

使用者(事業者)側の委員については、少なくとも1名は役員、またはそれに準ずる立場の人物を選任すると、審議された内容をスピーディーに進められます。審議をより充実させ、職場環境改善に向けた取り組みを後押していくために、保健分野の専門家として産業保健師に参加してもらうと良いかもしれません。

当社アドバンテッジリスクマネジメントでは、自社の産業保健活動推進、健康課題への対策にお役立ていただける「保健師活用ガイドブック」を配布しています。

衛生委員会の進め方

青の背景に白い空白の吹き出しを持つ医師

続いては、衛生委員会の進め方や開催後の対応について解説します。

衛生委員会開催の流れ

衛生委員会は、毎月開催しなければなりません。議事内容は、長時間労働やハラスメントなど通年審議が必要な課題や、企業で定めた毎月のテーマが中心です。

●衛生委員会の流れの例
①前回の衛生委員会で話し合った議事についての振り返り
②防災訓練や定期健康診断、インフルエンザ予防接種などのイベントの告知
③産業医による職場巡視の結果報告、面談やストレスチェックの対応報告
④今月の議題(テーマ)について審議
⑤次回の議題について検討
⑥議長からのまとめ

ワンポイント
審議をスムーズに進めるため、議題(テーマ)は、参加者にあらかじめ周知しておきます。また、衛生委員会は調査審議を行う場です。交渉や多数決で物事を決めていくのではなく、使用者と労働者がお互いに歩み寄る姿勢を持って十分に審議を尽くし、それぞれが納得できる最善の解決策を考えましょう。

衛生委員会開催後の対応

衛生委員会議事録は3年間の保管義務があり、保管の際には産業医の署名捺印が必要です。労働基準監督署の立ち入り検査などが入った際は、議事録を確認されるため、必ず保管するようにしましょう。

また、議事内容は従業員に周知しなければなりません。周知の方法は、社内掲示板への掲示・書面で通知・社内メールでの通知・社内イントラネット・社内報への掲載などが考えられます。

ワンポイント
産業医がやむを得ず衛生委員会に参加できなかった場合は、次回の開催までに議事録を確認してもらい、アドバイスをもらいましょう。

衛生委員会でのテーマの決め方と月別テーマ例

ヘルスケアに関した絵が書かれたウッドブロック

衛生委員会の月ごとの議事テーマを何にするか悩んでいるケースもよくみられます。最後に、テーマの決め方と月別のテーマ例を紹介します。

テーマの決め方

テーマ決めで大切なのは、その企業が抱えている悩みや問題を解決に導ける内容を考えることです。例えば、建築・接客サービス・製造など、立ち仕事や重い荷物を運ぶことが多い業界であれば腰痛について、IT業界などパソコンに向かうことが多い業界であればVDT作業による健康被害(VDT症候群/IT眼症)などについてをテーマに入れると良いでしょう。

取り上げるテーマについては、委員の当番制にしたり、委員以外から広く公募したりすると、マンネリ化を防げるかもしれません。また日ごろ抱えている悩みや、関心事を把握して解決に導くためにも、定期的に従業員にアンケートを取ることも大切です。

厚生労働省のサイト「安全衛生委員会を設置しましょう」に記載されている審議内容も併せてチェックしてみてください。

また、産業保健スタッフに「さんぽLAB(ラボ)」を紹介し、活用してもらうのもおすすめです。


さんぽLAB
アドバンテッジリスクマネジメントが運営する産業医、看護職、心理職など企業の産業保健の場で働く有資格者が登録可能なサイトです。衛生講和に最適なテーマや、現場で役立つ各種データの閲覧などが可能な、産保スタッフ同士の情報交換ができるコミュニティです。詳しくはこちらから。

さらに自社ならではのテーマに加えて、季節ごとの体調不良や衛生管理面の問題点をテーマにすることもあります。以下の月別テーマ例を参考にしながら有意義なテーマがある場合にはぜひ取り入れてみてください。

毎月のテーマ例

4月新入社員が組織に加わることを想定し、「安全衛生教育の基本」「社内コミュニケーションの取り方」など
5月心身に疲れが見えてくる5月病の時期であるため、「メンタルヘルス」「健康管理の方法」など
6月食中毒など衛生的なトラブルが起こりやすい時期なので「食中毒対策」など
7月暑さが本格化してくる時期であるため、「熱中症予防」といった暑さ対策など
8月健康診断が実施されやすいタイミングなので「健康診断の事後」「生活習慣病予防」など
9月前期の締めくくりにあたる時期であることから、「(部下への)フィードバックの仕方」など
10月働き方にまつわるテーマを設定するケースが多く見られるため、「ストレスチェック」「ワークライフバランス」など
11月感染症が流行し始める時期なので「感染症(インフルエンザなど)の予防対策」など
12月寒さが本格化し始め、路上の凍結などによる事故が増えやすいことから「交通事故防止」「転倒防止」など
1月酒席が多くなりやすいので「アルコールとの付き合い方」など
2月通年テーマである「生活習慣」「疲労回復」など
3月花粉症がスタートする時期であることから「花粉症対策」
または年度の締めくくりとして、「次年度のスケジュール」など

衛生委員会を効果的に運営し、働きやすい職場環境へ

握手する産業医と社員


「健康経営」のもと、従業員が健康に安心して働ける環境をつくるために、衛生委員会は非常に重要な場です。労使が一体となって改善していくという意識を持ち、産業医や産業保健師によるアドバイスを受けながら、自社が抱える悩みや問題の解決に向けて審議を進めることが大切です。ぜひこの記事を参考に、衛生委員会に関する理解を深め、衛生委員会を意味あるものとして効果的に運営し、より働きやすい職場づくりを目指しましょう。

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【筆者プロフィール】

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部
導入企業数3,140社/利用者数483万人のサービス提供実績と、健康経営銘柄に3年連続で選定されたアドバンテッジリスクマネジメントの知見から、人事領域で関心が高いテーマを取り上げ、押さえるべきポイントやつまずきやすい課題を整理。人事担当者や産業保健スタッフの“欲しい”情報から、心身のヘルスケアや組織開発、自己啓発など従業員向けの情報まで、幅広くラインアップ。「ウェルビーイングに働く」ためのトピックスをお届けします。

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