人事評価制度と従業員エンゲージメントの関係とは?

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「アドバンテッジJOURNAL」編集部

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BtoC企業でFacebook やTwitterなどのSNSで顧客とコミュニケーションを取っている場合、「エンゲージメント率」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。エンゲージメント率とはSNS上で発信した投稿に対する反応率のことを指します。

この場合のエンゲージメントとは、企業(ブランド)と顧客との関係性を指しており、顧客がその企業やブランドに抱く愛着心の度合いが強いことをエンゲージメントが高いと表現します。

一方で従業員エンゲージメントとは企業と従業員との関係性を指しており、経営層や人事部、組織活性化などの業務を任されている部署から注目を集めています。エンゲージメントを高める施策はいろいろありますが、本記事では人事評価制度と従業員エンゲージメントの関係について解説します。

従業員エンゲージメントとは

従業員エンゲージメントとは、企業と従業員の信頼関係や、組織に貢献したいという気持ちの度合いを示す概念です。

エンゲージメント(engagement=約束、婚約)という言葉どおり、あくまで関係性が前提にあるところが、コミットメントやロイヤリティ、モチベーションなどの一方向の概念とは異なります。

従業員エンゲージメントが向上すると、従業員は意欲的に仕事に取り組み、企業の成長も意識して働くようになります。企業に愛着や愛情を持って自発的に仕事に取り組むため、積極的な提案なども行うようになり、結果的に生産性を高めるのです。

従業員エンゲージメントの重要性

日本で従業員エンゲージメントが注目されてきた背景の一つに、日本型雇用システムの崩壊があります。平成の初期までは「御恩と奉公モデル」とも表現されるように、企業が雇用を保障するかわりに従業員は会社に尽くすという関係性が成り立っていました。

しかし、バブル崩壊以降、多くの企業は成果主義にシフトし、徐々にこのモデルが立ち行かなくなります。欧米に比べれば長期雇用が前提ですが、大企業ですら定期的に中高年社員をリストラしたり、非正規社員の比率を増やしたりすることで人件費を削減して利益を向上させてきたのが現実です。

そのため、バブル崩壊後に入社した若い世代は終身雇用を前提とせず、転職を通じて自身のスキルアップ、キャリアアップにつなげることに意欲的です。

昨今は新卒市場でも転職市場でも外資系企業が人気ですが、同じように雇用の安定が保障されないのであれば、優秀な人材が高収入や早期の昇格が可能な外資系企業に流れるのは自然なことだと言えるでしょう。

日本企業が、優秀な人材に定着して活躍し続けてもらうためには、日本型雇用に変わる新たなメリットを従業員に提示し、エンゲージメントを高めてもらう必要があるのです。

従業員エンゲージメントのメリット

エンゲージメントが高く仕事に熱意をもつ従業員は、エンゲージメントが低い従業員よりも離職率が低く、パフォーマンスが高いことが複数の調査や研究により明らかにされています。

そのため、欧米はもちろん日本でもエンゲージメントを重要な経営指標と捉える企業が増えてきています。従業員エンゲージメントを高める要因は決して収入や長期雇用だけではありません。

成長できる機会がある、上司との良好な関係がある、自分が評価されていると感じることができるなどさまざまな要素があります。これらの要素に影響する人事施策の一つに人事評価制度があります。

人事評価とは?

「人事評価」とは、社員の仕事の成果を定められた期間内でチェックして評価する仕組みです。公正な人事評価制度のある企業では、従業員も頑張れば報われるという意識になるためエンゲージメントが向上します。

人事評価制度にもトレンドがありますが、昨今は精緻な評価を追求する人事評価制度と、社員をシビアにランク付けするよりも育成を重視する評価制度の二種類に大別することができます。以下に代表的な評価方法を紹介します。

【精緻さ重視】
・360度評価:1人の従業員に対し上司、部下、同僚などがそれぞれの立場から評価する制度。
 上司も部下から評価されるなど、多面的に人材を評価できる。

・MBO(目標管理制度):期初に設定した目標の成果に応じSA、A、B、Cなどの相対評価をされる。
 評価の分布率が部署により決まっていることが一般的。

【育成重視】
・ノーレイティング:社員の相対評価(レイティング)を行わない評価制度。成果評価はマネージャーに
 一任されるものの、管理職の仕事は部下の育成にウエイトが置かれ、ミーティング、フィードバックの
 回数が重視される。

・OKR:Objectives and Key Results(目標と主要な結果)の略称で、達成不可能なほどの大きな目標を掲げ、
 従業員にチャレンジを促す目標管理手法。評価制度と連動させないことが推奨されているものの、
 現実には評価制度として運用したり連動させたりする企業も多い。

評価制度を核に組織を強化する

人事評価制度は企業の経営戦略の核と言っても大げさではありません。企業内の評価は従業員にとっていわばアイデンティティそのものです。人事評価制度が公平な評価であると同時に、多くの従業員のモチベーションを高める制度となっていれば経営上大きなプラスになります。

近年は働き方が多様化しており、さまざまな雇用形態、勤務スタイルの従業員が社内に混在しています。ヒエラルキー構造をつくるのではなく、人事評価制度のコースを増やしていくことで多くの人材の成長を促すことができれば理想的です。

どのような人事評価制度がベストかは企業規模、社風、事業内容によっても異なります。ただし、企業が従業員に対して人事評価制度の方針を明確に示すこと、透明性、公平性があることなどは、どの制度においても極めて重要です。

【良い人事評価制度のポイント】
・企業の目標が明確
・評価基準が明確
・評価プロセスが公平
・社員の納得度が高い

組織の目標と個人の目標をすり合わせ、可能な限り従業員の能力向上につながる目標設定を行い、適切なフィードバックと評価をすることができれば、本人の成長にも会社の業績向上にもつながります。

人事評価制度の効果的な運用により「自分は会社にとって有用である」と認識する人材が多いほど従業員の総力を結集できていると言えるでしょう。

まとめ

人事評価制度の運用においては、企業のビジョンと社員の目標を同じベクトルに揃えることが重要です。また、適切なフィードバックを行って従業員のモチベーションを高めることが望ましいと言えます。

さらに制度そのものも、制度設計や運用に問題が起きていないか、時代の変化に対応できているかなど定期的に見直すことも大事です。公正で透明性があり自分の成長につながる人事評価制度であれば従業員エンゲージメントは向上し、結果的に企業の生産性にもプラスとなるでしょう。

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【筆者プロフィール】

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部
導入企業数3,140社/利用者数483万人のサービス提供実績と、健康経営銘柄に3年連続で選定されたアドバンテッジリスクマネジメントの知見から、人事領域で関心が高いテーマを取り上げ、押さえるべきポイントやつまずきやすい課題を整理。人事担当者や産業保健スタッフの“欲しい”情報から、心身のヘルスケアや組織開発、自己啓発など従業員向けの情報まで、幅広くラインアップ。「ウェルビーイングに働く」ためのトピックスをお届けします。

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