ENGAGEMENTと人々のパネル

組織のエンゲージメントを向上させることは可能か?取り組み事例をご紹介

Facebookでシェア ツイート
「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

近年、世の中で「エンゲージメント」という言葉が、ホットワードとなっています。「エンゲージメント」の意味をご存知でしょうか?

「エンゲージメント」とは従業員が自分たちの仕事にやりがいや充実感を持って働き、仕事と働いている人、双方の歯車がしっかりとかみ合って、仕事の生産性が高まっている状態です。

そのため、私たちは「エンゲージメント」を‟「しっくりとかみ合っている状態」の感覚”と表現しています。

私たちのお客様である経営者や人事担当者からも
【エンゲージメントを高めるためにはどうしたら良いのでしょうか?】
とご質問を頂く機会があります。

私たちの答えとしては
【全ての組織のエンゲージメントを上げる共通の方法はございません】
となります。

しかし、様々な施策を試みながら、組織の「エンゲージメント」が上がった実績はいくつかあります。今回は、私たちが関与している組織の中で企業としての成長のために組織の「エンゲージメント」を良くしようと試みた結果「エンゲージメント」が上がった組織のある事例を紹介します。

ここでは「組織のエンゲージメントを上げるためには、組織全員による相互の働きかけが大きな鍵を握る」ことを、お伝えします。

チームの「エンゲージメント」を上げ、業績向上に繋がった事例

■組織が抱えている背景事情

経営陣が求める期待・役割に大きな変化があった年度でした。またメンバーのほぼ半数以上が入れ替わる中、前年度以上の業務量を求められ、もはや、 属人的には対応しきれない環境にありました。
    
※組織概要
該当組織の特徴:プロフェッショナルサービスを提供する集団
組織人数:24名
組織長:部門長の方
マネージャー:リーダーや課長等の役職の方
メンバー:役職を持たない方々
組織形態:下記図参照

該当組織の組織形態に関するフローチャート

■取り組んだ施策

私たちは、その組織に対して、3つの立場から施策を実行することを助言しました。以下、実際に取り組んでもらった施策の抜粋になります。

●組織長

・メンバーが仕事に対して前向きに取り組める組織作りを行う
<メンバーが自発的に動ける組織体制構築>
まず、組織のエンゲージメントを少数設問で定期的に測定するツールであるパルスサーベイの調査結果をメンバーに開示することで、チーム風土・状況を共有しました。そして組織のエンゲージメントスコアを向上させていくために、必要なアクションプランを 4半期に1回全員で考えて作成する機会を設けました。

アクションプランを作成したことによって、メンバーは組織のための行動が明確化され、自発的に取り組みやすい環境になりました。また教育体制も前年度までは業務に必要な能力定義が明文化されておりませんでしたが、業務に必要な能力を「問題解決力」「自社商品理解」等の項目に分け、業務において次のステップに上がるために、どんな能力を身につければ良いか明文化しました。

業務に必要な能力定義が明文化されたことによって、メンバーにとって業務やキャリアの成長につまずいた時に、組織長や教育担当のメンバーへ相談しやすくなったり、今後のキャリアに関して見通しを立てやすくなったりして、仕事を前向きに取り組みやすい環境になりました。
                  
●マネージャー

・仕事で必要なことがあれば、自分の役割を超えて仕事を行う
<メンバーが積極的に動ける環境作り>
前年度まで縦のヒエラルキーが強かった組織風土に対し、マネージャー層とメンバーで対等な関係を意識しました。例えば、発信のメッセージ(メールや口頭)において言葉遣いをできるだけフランクにして、メンバーから出てきた意見を受け止め、背景・理由を一旦ヒアリングした上で、フィードバックや意見を述べるようにしました。その結果、メンバーは意見を述べる際に否定や批判を受ける恐怖が少なくなり、積極的に意見を述べたり、行動できたりするようになりました。

・求められる以上の仕事を自発的に行う
<組織長の判断が必要ない業務はマネージャー層で対処>
多忙で組織長が対応できない場合は、「営業部より○○(困りごと)というメールが来ていますが、Aという選択肢を示して対応しても良いか?」といった具合に、組織長との合意を取った上で代わりに対応したり、マネージャー層の判断できる範囲を組織長と合意して、役割を明確化したりしました。その結果、組織長の判断の必要ない業務はマネージャー層で判断できるようになったことによって、組織長の判断を待つために滞っていた業務が減少したことで業務スピードが上がり、組織的な意思決定スピードも上昇しました。

●メンバー

・仕事では自分なりの工夫を行う
<各メンバーで自らできることを考え、実行>
上司発信が多かった部のミーティングで、メンバーからの発信量を増やすために、冒頭にアイスブレイクで1人1分ほど、近況を話す時間を導入しました。また、前年度と比べ、約半数の組織所属メンバーが変更になったのでメンバーの属人的な情報などを知るために、新卒メンバーがメンバー全員とランチをする等、メンバー同士で積極的にコミュニケーションを取ろうと試みました。その結果、メンバー同士を知る機会が増えて、相互理解が深まり、職場内の雑談などでも考えたことや感じたことを以前よりも率直に話せるようになり、心理的安全性が高まりました。

■取り組みにより創出された具体的な結果

上記内容を1年間実行した結果 下記の3つの効果がありました。

●パルスサーベイのエンゲージメントスコアが、期末には過去最高値を記録
エンゲージメントスコア:約10pt上昇(年度最低値と年度最高値を比較)

●部門で掲げていた業績目標も、前年比162%を達成
     
●メンバーのコメントを温かく受容する風土の形成(チームワークの向上)
社内SNS上で、あるメンバーが発信した1つの発信に対して5分以内に3つの返信が返ってくる等のレベルで、メンバーのコメントを温かく受容するような、安全な風土が形成されました。

■現場の声

2019年3月にパルスサーベイの調査結果が出た後、組織のメンバーからは下記のような声が上がりました。

(メンバー)正直、この1年間は自分が踏ん張らないと業務が回らない状況であり、体力的にも精神的にも
      厳しかったが、他のメンバーやマネージャーの方と向き合う機会も多く、以前と比べて
      コミュニケーションが増えたと感じます。

(組織長)業務外のイベント(飲み会やBBQ等)が10名程度しか集まらない集団であったのに、
     年度末の飲み会に20名参加し、盛況となっていた様子から組織の変化を感じます。

(社長)前年度までの組織とはメンバーが違うので、単純に比較はできないが、営業と連携するなど、
    社内の人を巻き込んで取り組む姿勢を感じる機会が以前より増えました。

■エンゲージメントが向上した背景にあると推察される要因

今回の事例で推測される成功要因は下記の3つです。

●毎月、パルスサーベイで測定し続けたことで、チーム風土・状況が可視化できたこと
     
●4半期に1回、組織全体のエンゲージメント因子にプラスの影響を与えるより実践的なアクションプランを
 組織のメンバー全員で議論し、実行したこと    

●部を構成するメンバー全員が組織目標達成のために、自らの立場でできることを見つけ出し、
 その行動に自発的にコミットしたこと

■エンゲージメントを向上させるには組織全メンバーで取り組むことが大切

今回の事例から
エンゲージメントを上げるためには、組織目標達成に向けた全メンバーのコミットメントが必要
だと言えるのではないでしょうか。

なぜならば、今回の事例では
・組織長はメンバーが自発的に動ける組織体制を構築した
・マネージャーはメンバーが積極的に動ける環境作りや求められる以上の仕事を自発的に行った
・メンバーは自らできることを考え、実行した
といったように立場に応じて、各々が組織のエンゲージメント向上に必要な取り組みを行ったからです。

※パルスサーベイとは、簡易的な調査を短期間に繰り返し実施する調査手法のこと。

皆さまの組織でお取り組みになる際に、本事例が参考になりますと幸いです。

【筆者】株式会社アドバンテッジリスクマネジメント
組織ソリューション部 コンサルタント

(Visited 2,026 times, 1 visits today)

【筆者プロフィール】

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部
導入企業数3,140社/利用者数483万人のサービス提供実績と、健康経営銘柄に3年連続で選定されたアドバンテッジリスクマネジメントの知見から、人事領域で関心が高いテーマを取り上げ、押さえるべきポイントやつまずきやすい課題を整理。人事担当者や産業保健スタッフの“欲しい”情報から、心身のヘルスケアや組織開発、自己啓発など従業員向けの情報まで、幅広くラインアップ。「ウェルビーイングに働く」ためのトピックスをお届けします。

この著者の記事一覧

Facebookでシェア ツイート

関連記事RELATED POSTSすべて見る>>