働き方改革によって長時間労働の削減に拍車がかかるようになり、職場におけるメンタルヘルスの重要性も叫ばれるようになってきた現在。とはいえ、いまもストレスから心を病む人が多いのが実情です。
ストレス要因の多くは、仕事の質や量の問題、セクハラやパワハラといった人間関係、仕事の失敗や責任に対する圧迫感、役割や地位の変化といわれていますが、人によって受けるストレスの大きさは様々です。
ストレスに強い人と弱い人との違いを踏まえることで、従業員のストレス耐性の向上や、企業の効果的なストレス対策に繋がるといえるでしょう。
目次
ストレスの原因を明確にし、上手にコントロールするために
心の持ち方や考え方により、ストレスからくる精神的負荷は人それぞれ異なります。何かをする時に、「きっとうまくいく」というポジティブ思考と「失敗したらどうしよう」というネガティブ思考では、どちらがストレスを上手にコントロールしているかは一目瞭然。
ストレスに強い人は物事を前向きに捉える傾向があり、また自分だけでどうにもならないことには時間を費やさない、合理的な考え方をしています。仕事の達成感や自己成長にフォーカスしている面もあります。
逆にストレスに弱い人は物事を悲観的に捉え、後ろ向きで何事にも受け身になる傾向があります。つまり自己評価が低いため、行動も消極的になり、結果としてストレスを溜めることになるのです。
もちろん性格や育った環境によるところもありますが、ストレスはトレーニング次第で対処することができます。仕事、人間関係、プライベートなど自分を取り巻く環境を一度見つめなおし、各人に合った傾向と対策でストレスに強くなる習慣を持ってもらうことが大切です。
ストレスに強くなるための7つの具体策
1:「わたし」を主語にして表現し、事実と感情を切り分ける
心が折れない人は、「自分の感情を適切に処理」する方法を知っています。不安や怒りといったマイナス感情が芽生えても、自分を抑えすぎることもなければ、暴発して人間関係を壊したりすることもありません。自分自身の感情の動きを理解し、上手に事実と切り分けています。
「きょうも上司に理不尽に怒られた」という場合でも、次のように「わたし」を主語にし、事実と感情を切り分けて考えることができます。
・「きょうも」→「この1週間で2回目」
・「理不尽に怒られた」→「上司に厳しい口調で注意されたので、(わたしは)理不尽だと感じ、悔しく腹がたった」
この場合、上司はおだやかに注意するべきだという期待があったのでしょう。また、上司には失敗に思えても、自分にはそれなりの理由があるので、弁解を聞いてもらえなかった悔しさがあったのかもしれません。
さらにその背景には、普段から一生懸命仕事をしているのに、上司に認められないという不満を持っていることも推察できます。
このように自分の感情が出てきた背景を落ち着いて俯瞰することで、マイナス感情を無視することなく、かつ攻撃的になることもなく、同僚への相談や上司への上申といったこともできるようになります。悲観的な従業員にはそうした意識を持たせることが大切です。
2:細分化した小さな目標を設定する
「今ここでやるべきことに集中する」ことの習慣化も大切です。ポイントは計画に余裕を持って、ちょっと頑張ればできる程度の小さな目標を積み重ねること。小さな目標をひとつ完遂するたびに達成感を感じることができ、自信がつきます。
さらに予定通りにいかない場合も早めの軌道修正が可能になります。なにより大切なことは、「本当にできるだろうか」という不安で立ちすくむのではなく、目の前にある小さな目標にきちんと集中することなのです。
3:考えても結論がでない時は、いったん棚上げにする
いくら考えても、いくら頑張っても、現状の自分の力だけではどうしようもない問題に直面した時、これ以上何をやっても状況は動かないと悟ったら、一旦考えるのをやめて、その問題をなるべく心から追い出すことも効果的です。
例えば仕事に問題がある場合、好きな小説や映画に没頭する、ちょっと手の込んだ料理を作ってみる、友人と会って会話するなど、あえて仕事から離れて気分転換をする選択肢もあります。
どうしても気になる場合は、前述の「いまやるべき行動を考えて、そこに集中」することです 。それほど必死にならなくても、真剣に取り組めば確実にできる程度のことをやるのがストレスを溜めないコツです。
4:ひとりですべてやろうとせず、周りに頼る
「自分の限界」を知ることも、大切なポイントです。困ったことがあった時に、人に頼らずにまず自分で解決しようと試みることは、通常はよいこととされています。
しかし、それが過度になり「何事も自分ひとりで解決すべき」「他人に頼ったら負け」という偏った信念を持つようになると、いずれ心が折れてしまいます。
また、「もう限界だけど、だれに頼ったらいいのかわからない」ということもあるでしょう。頼りにできる相手を日頃から探しておくこと、また企業側もチームで仕事を進める重要性を伝えていくことが求められます。
・手助けを求められる相手
同僚や家族に「ちょっと手伝って」と言えないような関係になってはいないでしょうか。身勝手だと思われないか、頼んだらイヤな顔をされるのではないか、そのようなためらいが感じられる場合はサポートに入る必要があるでしょう。ストレスで倒れてしまったら、一番困るのは周りの人たちだということに気づかせることが必要です。
・本心を打ち明けられる相手
誰かに悩みを話したからといって、状況は変わりませんが、本当の気持ちを話すことで心が癒され、問題に取り組む意欲が湧いてくることもあります。時には、愚痴も必要です。上司や人事担当者だと本音を出せないケースもあるでしょう。同僚や友人はもとより、カウンセリングなどのサービスを企業側で用意して利用を促すことも有効です。
5:どんな状況でも自分にプラスになることはないか考える
「つらい状況から希望を見出す」方法を知れば、すっと心が軽くなります。上司に叱られた時、「厳しく指導されるのは、期待されているからだ」と物事のよい面を見ようとし、前向きに考えることが習慣になるとストレス軽減にも効果が出ます。
また、「この状況から、自分は何を学べるのだろうか」と、自分にプラスになることを探してみることも有効です。不本意な仕事や、気の合わない上司、同僚であっても、そこから学ぶことは必ずあるはず。その意識ひとつで、やりがいを見出すことができるという観点を知ってもらうことが大切です。
6:睡眠時間や自分のための時間を削らない
心が折れない人は、「自分自身を大切にする」ことを知っています。まず考えなければならないのは、睡眠時間を確保するということ。自分は短時間でも大丈夫、と睡眠を疎かに考える人もいますが、睡眠6時間未満で足りるショートスリーパーは、人口の1割にも満たないといわれています。
自分では気づかなくても、睡眠不足の影響で仕事効率が落ち、イライラしやすくなったり、気力がなくなったりすることがあります。
さらに、食生活と運動のバランスも大切です。体の調子を整えることで心の調子を良くし、ストレスに負けない自分を作っていることを認識してもらいましょう。趣味や気晴らしの時間も必要な時間だと意識させることも必要です。
7:周りの人に気軽に「ありがとう」と言う
「周りの人を大切にする」ことでよい空気が流れ、自分を応援してくれる人も増えます。職場のストレスの大きな部分は、人間関係からもたらされています。
自分は一生懸命やっているのに周りは誰も認めてくれない、という気持ちに陥ってしまった場合は、思考を変えて、まず自分から周りの人を認めることから始めることを勧めます。
仕事でストレスフリーな状況を作ることは、至難の業でしょう。しかし、ちょっとした工夫や心の持ちようでストレスは大幅に軽減できます。企業側も従業員のストレスを感知するとともに、ストレス要因を見極めた早めのケアやストレス耐性を高める取り組みを行うことが求められます。