コラボヘルスとは、健康保険組合(保険者)と企業が積極的に連携し、明確な役割分担と良好な職場環境のもとで、保険加入者(従業員・家族)の予防・健康づくりを効果的・効率的に実行する取り組みのことを指します。健康保険組合・企業・従業員の三方にメリットがあると言われているコラボヘルス。注目される背景には日本企業が直面する「超高齢化社会」が深く関与しています。
本記事では、改めて日本の医療制度が直面している高齢化の現状、2021年時点での企業のコラボヘルスの取り組みの状況等をご紹介します。
目次
コラボヘルスが注目される背景とは~「超高齢化社会」に向けて
コラボヘルス推進の背景には、既に日本が突入している超高齢化社会(少子高齢化)という共通の課題があります。少子高齢化が進み、日本の医療保険制度が岐路に立たされている今、その取り組みの中心を担っているのが健康保険組合です。
健康保険組合は、1961年に創設された国民皆保険のもとで医療費の支払補助だけでなく、健康診断や人間ドックなどを通じ加入者の健康づくりに大きく貢献してきました。しかし、加入者の高齢化に伴い、がんや心疾患などの生活習慣病が増加、結果として医療費も膨らみ、国民医療費は2013年度に40兆円を超え、その後も増加。
2019年度には43.6 兆円と過去最高の金額になりました。2020年のコロナ禍は減少したものの、いまだ42兆円を超える高い数値が続いています。加えて、その医療費を肩代わりしている現役世代が減少している実態も重なり、全国では赤字の健康保険組合が増加しており、存続の危機に直面しています。
一方、企業にとっても、従業員の高齢化と生産年齢人口の減少は大きな課題です。基礎疾患を持つ割合が多い高齢者ほど健康障害を発症しやすくなります。職場の平均年齢が高くなった企業も多い昨今、おそらく多くの企業で健康リスクを抱える従業員は増えているといえるでしょう。
言うまでもなく健康は仕事へのモチベーションや成果の基盤。企業には、生産性という観点からもこれまで以上に従業員の健康を守る取り組みが求められます。また、近年の景気拡大・労働人口減少に伴う人材不足の状況は、産業ごとの格差はあるものの全体で見ればコロナ禍以降も大きく変わってはいません。
2021年10月時点での失業率は2.7%と昨年と比較し改善傾向にあり、有効求人倍率も低下したとはいえ1.15倍とバブル期同様の高さです。従業員の健康維持・増進に寄与しながら、生産性を維持する環境を作ることは企業にとって継続した重要な課題といえるでしょう。
このような超高齢化社会という共通課題を背景に、健康保険組合・企業(事業主)両者協力体制によるコラボヘルスを通じて、健康保険組合・企業・従業員の利益創出が期待されています。
コラボヘルス導入に期待できる効果とは
平成29年閣議決定の「未来投資戦略2017」では、「健康保険組合のデータヘルスを強化し、企業の健康経営との連携(コラボヘルス)を推進する」と記載されています。「データヘルス」とあるように、鍵となるのがデータの活用です。具体的には、健康保険組合と企業のデータを疾病予防や健康増進のために活用していきます。
用いられるデータには様々なものがありえますが、例えば個人の健康診断の結果やストレスチェック、レセプトデータ、企業が独自に行うエンゲージメントサーベイや労働生産性を測定するプレゼンティーズム(従業員が出社していても何らかの不調で思うように働けず、本来発揮されるべきパフォーマンスが低下している状態)調査などがあげられます。
残業時間、有給休暇の取得状況や欠勤日数など、企業側が持っている人事労務データも活用できます。
コラボヘルスの具体的な取り組みとして、禁煙対策やメタボ対策の例をみてみましょう。まず、健康保険組合は健康診断結果から体重・腹囲や血糖値などのフィジカルデータ、食事や喫煙などの生活習慣調査を行います。そのデータに、企業が持っている労務管理データやストレスチェックなどメンタルへルスに関する情報を掛け合わせるのです。
それにより、フィジカル・メンタルの双方のデータから介入が必要な高リスク群を高い精度で見分けることが可能になります。従業員への告知や相談場所の設置などの環境を整え、健康保険組合が保健師や健康運動指導士などの専門家によるサポートや個別指導を行うなどの連携も有効です。
以下の企業事例もぜひご参考になさってください。
健康経営銘柄に選定された企業の取り組みとは~明電舎の事例~【前編】
健康経営銘柄に選定された企業の取り組みとは~明電舎の事例~【後編】
近年は、先進国を中心に世界的に従業員の健康を維持・増進し、生産性向上を目指す「健康経営」がますます注目されています。企業・健康保険組合のデータを活用しコラボヘルスを推進し、従業員の健康づくりをサポートしていきましょう。