外で椅子に座りリラックスするビジネスパーソン

メンタルヘルスと呼吸法 – 人事・労務ご担当者が知っておきたい呼吸のメカニズムと呼吸法 –

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「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

1.はじめに – 呼吸のメカニズムについて –

私たちは日々意識せずに呼吸をしていますが、1回の呼吸(=1回換気量)でなんと500ml入りペットボトル1本分の呼気・吸気が出入りしている事をご存知でしょうか。凄いものですね。私たちの呼吸は身体的には「ガス交換」の役割等様々な大切な役目を担っています。

気道を通って肺に入り、肺胞に到達してから肺胞を取り囲む毛細血管を通じて新鮮な酸素が渡され、代わりに二酸化炭素と交換されて呼気として外へ出る。人が生きていく上で非常に大切な、呼吸という機能がこのように行われ続けている、ということですね。

呼吸はメンタルヘルスにも様々な好影響を及ぼすことが近年様々な医学的根拠等で分かってきました。今回は「人事・労務ご担当者が知っておきたい呼吸のメカニズムと呼吸法」についてお伝えしてまいります。

2.呼吸がメンタルヘルスに好影響を及ぼすーストレス軽減につながる呼吸法ー

従業員のストレスについて様々な観点から研究が重ねられてきており、ストレスの原因やストレス反応、またはストレス対処等、メンタルヘルスケアの重要性が注目を集めてきている中、主にストレスを軽減するといった観点から昨今のストレスマネジメント(セルフケア)の一つとして呼吸法は取り入れられてきました。

ストレスを軽減する呼吸法については様々な方法がありますが、ここでは代表的なリラクゼーションとしての呼吸法(腹式呼吸を意識した呼吸法)を紹介します。

呼吸には大別すると「胸式呼吸」と「腹式呼吸」があります。

前者は、胸を意識して肺いっぱいに息を吸い、吐いていく方法で、主に運動の際に重視される呼吸。後者は、横隔膜の上げ下げを意識してお腹を膨らますイメージで行う方法で、主にリラクゼーションに大切とされている呼吸です。ここでは腹式呼吸について以下記載します。

まず、へその下に軽く手を置きます。人差し指から小指までの四本の指がちょうど終わるあたり(ツボの世界では「臍下丹田(せいかたんでん)」とも「丹田」とも言われます。)になんとなくエネルギーがたまるイメージを持ってもらいます。

⑴ 体の中にたまっている息を全て外に吐き出すイメージで口からゆっくりと、細く長く吐き出します。その時同時に、吐く息でお腹が縮んでいくイメージを持ってください。横隔膜が上がります。

⑵ 吐き出しきったら、今度は鼻から、新鮮な空気を体内に取り入れるといったイメージで鼻から息をすうっと入れます。その時にお腹が膨らむイメージを持つことで横隔膜が下がり、腹式呼吸になると言われています。

⑶ この呼吸を繰り返していきます。この時に大切なのは「吐く」息に特にイメージを持って、細く長く吐き出すように続けることです。

⑷ 最初は2~3分程度。自分の体になじんでくるようになったら、適宜自身の好きな時間で取り組むことをお勧めします。

以上がリラクゼーションを目的とした「腹式呼吸」です。

実際にこうした呼吸法を続けることで、パニック障害を患っている方々の症状の軽減につながった、あるいは軽度のうつ病を患った方々の症状の軽減につながったという報告(医学的エビデンス)がなされております。その他、この呼吸法を続けることで効果があるとされているのは以下となります。

・酸素の交換効率が向上することで、頭がすっきりし、気分改善・向上につながる
・吐く息のコントロールがうまくなるにつれて、副交感神経の働きが活性化され、気分が落ち着き、リラックスする能力が向上する
・腹式呼吸を継続的に行うことで、横隔膜がスムーズに下がり、内臓に適度な圧力がかかるため内臓の血流促進に好影響がある

このような効果・効能があると言われております。

3.呼吸がメンタルヘルスに好影響を及ぼす – 集中力を高め、自己観察につながる呼吸法 –

ここで、いったん日本の歴史に話を転じます。日本では主に仏教の全国的な普及に伴い、様々な宗派が登場しましたが、中でも臨済宗・禅宗では坐禅が精神修養の方法として盛んになり、坐禅とともに数息法(数息法:すそくほう、と読みます。)が合わせて行われるようになりました。

ここで少し数息法について記載しておきます。数息法(数息観)については、古代仏教の瞑想にその大本となる考え方があります。

瞑想には大別すると二つが必要とされており、一つ目は「瞑想をしながらひたすら集中すること」(サマタ;「止」と言います。)、二つ目が「瞑想しながら観察をすること」(ヴィパッサナー;「観」と言います。)、この二つがともに大切であると古代仏教では言われてきました。(日本語に直すと「止観」となります。)

止観の瞑想を初心者が分かるように考え、結びつけられた呼吸法が数息法です。以下ポイントを説明します。

楽な姿勢で座り背筋を伸ばします。軽く目を閉じ、数息にとりかかります。数息法では、特に呼気・吸気どちらかに意識を向けるとかはいたしません。ご自身にとって、自然な呼吸をしながら、心の中で息の回数を数えます。ここでは吸う息・吐く息を1セットとして数えてみてください。

その際にとりわけ、以下の事柄を大切に数息することが大切なポイントになります。
・ひたすら呼吸に意識を向けて数える
・雑念が出てきたら、それらにとらわれず数息(息と息を数えること)に意識を戻す
数息法を実践しながら、是非自身の集中度合いや自己観察の深まりを感じてください。

4.最後に、マインドフルネスを再考する

ここまでメンタルヘルスに好影響を及ぼす呼吸法として、ストレス軽減の観点から腹式呼吸法を、また集中力を高め、自己観察につながるという観点から数息法を紹介してきました。

既にお気づきの人もいるかと思いますが、マインドフルネス瞑想はその両方を併せ持った呼吸法と捉えることができます。

日本ではマインドフルネスが一巡化した感もありますが、マインドフルネスは世界のあらゆる企業で取り組みが進んでおり、更には「第3の認知行動療法」のACT(アクセプタンス・コミットメント・セラピー)を実践していく大切な手法として位置づけられてきている昨今です。

ACTについてはまた別の機会に説明しますが、マインドフルネスをストレス対処・集中力・生産力向上等様々な観点から仕事に取り入れていただきたいと思います。

【筆者】株式会社アドバンテッジリスクマネジメント
組織ソリューション部 研修講師

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【筆者プロフィール】

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部
導入企業数3,140社/利用者数483万人のサービス提供実績と、健康経営銘柄に3年連続で選定されたアドバンテッジリスクマネジメントの知見から、人事領域で関心が高いテーマを取り上げ、押さえるべきポイントやつまずきやすい課題を整理。人事担当者や産業保健スタッフの“欲しい”情報から、心身のヘルスケアや組織開発、自己啓発など従業員向けの情報まで、幅広くラインアップ。「ウェルビーイングに働く」ためのトピックスをお届けします。

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