目次
はじめに
2015年12月からストレスチェック制度が施行され、丸4年が経過しました。制度の中では努力義務とされている集団分析を実施している企業も年々増えています。
弊社データによると、経営層に対する集団分析結果の展開は2018年では約7割の企業で、2019年では約8割の企業で実施されており、職場改善に向けたデータとしての重要性が年々評価されています。
一方で、集団分析に基づき高ストレス職場をスクリーニングした後、どのように該当職場にアプローチしていけば良いのか悩まれている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
本編では、高ストレス者が特に多い職場を改善につなげていく方法をご紹介いたします。
ポイント1:経営層の理解を得る
人事部門主導で職場改善を進めることも可能ですが、ハイリスク職場の管理者が結果に無関心であったり、非協力的であったりする場合、なかなかアプローチしづらいのが実情ではないでしょうか。職場改善のプロセスを上手く推進するためには、経営層の理解を得ることが不可欠です。
高ストレス者を減らし、エンゲージメントが高い職場にしていくことが生産性の向上や人材の定着につながっていくことを経営層に説明し、理解を得ましょう。最近では健康経営という用語が定着しつつありますが、従業員への健康投資を行うことは、結果的には会社の業績向上につながると期待されています。
ポイント2:個人批判をしない
20名で構成されるチームXが有ったとしましょう。チームXは毎年高ストレス者割合が高く、今年度は高ストレス者割合が30%でした。人数に換算すると、6名が高ストレス者です。人事担当のあなたは、このチームXに対してどのようにアプローチを行うでしょうか。
チームXの管理者を個別で呼び出し、結果を見せながら「あなたの管掌組織は高ストレス者が多いので、管理者として対策を考えてください」と伝えるだけでは、管理者の反感を買い、望ましくなさそうですね。
ストレスチェックの結果はあくまでも回答者の主観で「そう感じている」度合いを示しているものなので、管理者の成績のように評価するものではありません。また、数値の背景には、管理職からの働きかけのみでは改善が困難な状況が有るかもしれません。
組織の実態を配慮せずに結果を伝えた場合、管理者の協力が得られないばかりか、ネガティブな回答をした従業員を特定するような個人攻撃につながりかねません(例『6名の高ストレス者は誰だ!』)。
データはあくまで組織の状況を把握するための参考資料として位置づけ、管理職の気持ちに寄り添ったフィードバックが求められます。
ポイント3:良好点に触れる
「あなたのチームのメンバーは、上司からのサポートが低い、職場の人間関係もよくないと感じているようですし、仕事の負担感も高いようです。」こうしたネガティブ結果のフィードバックのみでは、管理職を責めている印象を与えかねません。
結果の中でも良かったところや、問題ではなかったところを併せて報告するようにしましょう。また、仮に悪かった結果が有ったとしても、ストレスチェックの結果に加えて、残業時間や休業者人数、産業医や保健師の情報をもとに、問題の背景にある課題を仮説立ててフィードバックすることも重要です。
例えば、上司からのサポートが低い結果であったとしても、メンバー自身が忙しすぎて相談をする時間がとれなかったことが背景にあるかもしれません。
ポイント4:職場内でのグループワークを検討する
「毎年、課題が強い職場の管理職に対して適切にフィードバックしているけれども、一向に結果が改善しません。」そのような場合、チームのメンバーを巻き込んだ従業員参加型の職場改善に取り組むことが有効かもしれません。
高ストレス職場では、管理職が改善の必要性を認識することが第一に重要ですが、実際の職場改善に繋げるためには、管理職主導のアプローチのみでは限界が生じる場合があります。
管理職とメンバーの間で、職場の優先改善事項のギャップがあるためです。従業員参加型の職場改善では、集団分析の結果を開示しながら、メンバーそれぞれが職場の良い点、改善したい点(課題点)を挙げ、組織として向かう方向を整理していきます。
ただし、従業員参加型の職場改善になじみがない職場は、かえって心理的な負担が高まり、従業員が言いたいことが言えないまま終わってしまうリスクもあります。初めて個別職場での介入をする場合は、外部の専門職がファシリテーションを行う専門職主導型の職場改善を行うことも有効な手段の一つです。
おわりに
以上、職場環境改善をすすめるためのポイントをいくつかご紹介しました。予防医学の分野では、高いリスクを持った個人に対象を絞り込んだ戦略をハイリスクアプローチといい、対象を一部に限定しない集団全体への戦略をポピュレーションアプローチといいます。
高ストレス職場へのハイリスクアプローチは効率的な介入方法ですが、勤続年数や職位に応じた横断的なポピュレーションアプローチも職場改善には必要不可欠です。
皆さんの企業でも本記事を参考に、集団分析の結果を活かして、全社的に行うことと職場別に行うことを整理し、職場改善に向けたPDCAサイクルを回していきましょう。
株式会社アドバンテッジリスクマネジメント
組織ソリューション部 コンサルタント