以前「在宅勤務の部下を襲う「コロナうつ」上司がとるべき4つのサポート」という記事で、新型コロナウイルスの感染拡大が続く中で、在宅勤務や自宅待機によって働き方が変わり、「コロナストレス」を感じている人が増えていることをお話ししました。
人間はコロナストレスがたまると、気分の落ち込みや意欲減退、不眠などの症状が体に現れ、「コロナ疲れ」に陥ってしまいます。そして、対策を講じないと「コロナうつ」になる可能性があります。
緊急事態宣言が全国に拡大し、期間も長期化している今、「コロナ疲れ」への対策が急務です。そこで、今回は、「コロナうつにならないために自分自身でできる対策」についてお話しします。
目次
コロナ疲れ解消のヒントはRPGにある?
コロナストレスがたまる状態が続き、コロナ疲れに陥ったときにはどうすればいいのでしょうか。そのヒントはコンピュータゲームの「RPG(ロールプレイングゲーム)」にあります。
世の中にはさまざまなRPG(ロールプレイングゲーム)がありますが、多くのRPGでは、敵に遭遇すると、その場ですぐに交戦するのではなく、まずは「コマンド」が表示されます。
プレイヤーは「たたかう」、「にげる」、「どうぐ(をつかう)」、「じゅもん(をとなえる)」などの複数のコマンドの中から自分が取る行動を選択します。その行動によりキャラクターの経験値を蓄積してパワーアップすることによって、目標を達成していくのです。
このRPGの仕組みを、現実世界の今の状況に置き換えてみましょう。ここで私たちに与えられている「コマンド」も、「たたかう」か「にげる」かの二択ではありません。
つまり、RPGのように「どうぐ」や「じゅもん」を使って新型コロナウイルスという敵(脅威)に対して感じているコロナストレスを緩和し、敵を倒していくことができるのです。
ここからは、「どうぐ」や「じゅもん」を使ってコロナストレスを緩和していく具体的な方法をお話ししていきます。
ストレス緩和に有効な6つの「どうぐ」「STRESS」
「どうぐ」とは、本来であれば「ワクチン」でしょう。新型コロナウイルスという敵を倒せるワクチンはまだ開発されていないようなので、今は敵が生み出すストレス状態から自分で脱する方法を知る、つまり自分でできるコロナストレスの対処法という「どうぐ」を身につけましょう。
まずは、ストレスの対処法として「STRESS」という方法を紹介します。
S ・・・ スポーツ(運動をする)
T ・・・ トラベル(旅行に行く)
R ・・・ レクリエーション(遊ぶ)
E ・・・ イート(食べる)
S ・・・ スピーク(しゃべる)
S ・・・ サケ(お酒を飲む)
現在は外出の自粛などの規制があるので、一部できないこともありますが、自宅でできる範囲で取り組んでください。何をやるにしても、大切なことは「普段できないことが自宅にいることでできる」というポジティブな気持ちで取り組むことです。
読書やDVDの視聴、音楽を聴くなどをやってみたり、自己啓発につながる勉強をしたりするのもお勧めです。また外出の自粛によって、オンライン飲み会といった、自宅にいながら友人などとオンライン上で会話しながらお酒を飲む手法が流行っています。
規制があるなかでも工夫をし、新たな楽しみを見いだす人も増えています。
「笑う」、「泣く」、「歌う」もストレス緩和に有効
次に、「感情を吐き出してストレスを発散する」という方法を紹介します。たまったストレスに対処するためには、自分のこころにたまった感情を吐き出すことが効果的だといわれています。
在宅勤務や自宅待機が続く中、普段は表に出せない感情を意識的に思い切り表現することでスッキリした気分になることができます。このように、感情を吐き出してスッキリすることは「カタルシス効果」と呼ばれています。具体的には、「笑う」、「泣く」、「歌う」をやってみましょう。
「笑う」・・・テレビで漫才やバラエティ番組などを見て大声で笑ったらスッキリしたという経験は誰でもお持ちだと思います。笑いにはこのようなカタルシス効果のほか、からだの筋肉を緩め、こころの緊張をほぐすというリラクセーション効果もあるといわれています。
「泣く」・・・「涙を流す」ことによってスッキリする「涙活」もお勧めです。一人の部屋で誰にも見られない環境で、涙を拭きとるためのハンカチやティッシュペーパーと水分補給のための「お水」などを用意します。あとは泣ける映画や動画を見て、思い切り涙を流してみましょう。きっと泣くことで気分がスッキリするでしょう。
「歌う」・・・「歌う」には大きな声を出してスッキリする効果があります。また、普段とは違った自己表現ができる効果もあります。歌の歌詞には「私は~したい」などの表現や「好き、うれしい、ドキドキする」など多くの感情を表す言葉が登場します。歌を歌って自分の気持ちや感情を思い切り表現することで、スッキリする効果が期待できます。
さらに、歌を歌うことは呼吸法としての効果もあります。歌をうまく歌うためには、大きく吸った息を歌いながらゆっくりと吐き出さなければなりません。大きく吸った息を長い時間をかけて吐き出すという呼吸法は胸とお腹の間にある横隔膜を刺激し、それがリラクセーション効果を生み出します。
緊張をほぐし、ぐっすり眠るための2つの方法
「眠れない」などの症状は心身の健康に大きく関わります。眠れない原因の一つは在宅勤務や自宅待機による生活リズムの変化です。
また、そのような状態が長く続くことで発生する不安感や負担感で心身の緊張状態が続き、自律神経がコントロールできなくなっていることも原因として考えられます。そこで、自分の力で心身をリラックスした状態にして、眠りやすいリズムを作り出す方法を身につけましょう。
【10秒呼吸法】
① 姿勢を整えて(いすの背に軽くもたれて、両手はひざの上に)静かに眼を閉じます。
② 「1、2、3、」と心の中で数えながら鼻から息を吸って、4で息を止めます。
③ 「5、6、7、8、9、10」で口から息を吐き出します。
④ ②と③を3分間くらい続けてやってみましょう。
⑤ 終わるときは両手をグーに閉じたりパーに開いたりして、最後に伸びをしてすっきりしましょう。
【ストレッチング】
① 仰向けに寝転がり、深呼吸を一回して全身の力を抜きます。
② 両手をげんこつにして力いっぱい握りしめます。
③ 入れた力をパッと抜いて、力の抜けた手の感触を感じます。
④ 次に腕にぎゅっと力を入れて緊張させ、肩も思い切りすくめます。
⑤ しばらくそのままにした後、一気に脱力して、手・腕・肩の感触を感じてみましょう。
⑥ 同じように、つま先、両足、顔(目、歯、口)の順に、それぞれ力を入れて緊張させます。
⑦ それぞれ一気に脱力し、筋肉が緩んだ感じを感じましょう。
⑧ 最後に全身に一度に力を入れて、一気に脱力します。全身の感触を感じましょう。
不眠緩和の鍵を握る食事と運動の整え方
在宅勤務や自宅待機の長期化で、出勤しているときにはできていた食事のリズムが崩れる場合もあれば、逆にできていなかった一日三食の適正なリズムや栄養のバランスができるようになる場合も考えられます。
いずれにしても、今回の食事環境の変化が「食事や栄養の大切さを知るいい機会である」ととらえて、今まで時間が無くてできていなかった料理を積極的に楽しみましょう。ネットでレシピを調べてみたり、カロリー計算をしてみたりしてみることもお勧めです。一日三食、リズムと栄養バランスを考えながら、楽しく食事をしましょう。
運動については、「今まで通勤で使っていたカロリー消費量が減っている」ことを意識し、まずは不足しているカロリー消費のための運動をしましょう。また、いい意味で「今まで通勤がこころと体の仕事のオン・オフの切り替えをしてくれていた」ことを意識し、仕事のオン・オフの切り替えや気分転換のための運動を計画的・定期的に実施してみましょう。
テレビやネットでは運動不足を解消するトレーニング動画が流れていますし、体を動かしながら遊ぶコンピュータゲームも販売されていますので、それらを使うのも一つの方法です。
コロナストレスを緩和させる最強の「じゅもん」
最後に、コロナストレスを緩和させる「じゅもん」に関してお伝えします。これは、ポジティブなセルフトークを唱えてストレスを緩和させる方法です。セルフトークとは「独り言(つぶやき)」です。
いつまで続くかわからない自粛生活に対して「この生活はいつまで続くのだろう」というネガティブなつぶやきを消して、「出口のないトンネルはない」、「春の来ない冬はない」、「いつかは元の生活に戻れるだろう」とポジティブなつぶやきを自分に言い聞かせてみましょう。
また、「今の生活で自分や家族の感染を防げるのだろうか」というネガティブなつぶやきを消して、「手洗いとうがいとマスク着用を徹底しているので罹らない」、「3つの密をしっかり避けている」、「これだけ外出を控えれば大丈夫だ」とポジティブなつぶやきを自分に言い聞かせましょう。
さらに、「外出ができない」など、「生活や行動が自分の思い通りにならない」というつぶやきではなく、「事態が収束したらこんなことがしたい」「こんな場所に行ってみたい」などポジティブなつぶやきをしましょう。
このようなポジティブなつぶやきを自分に言い聞かせられるようになるためには、「テレビやネットでニュースや報道番組を見すぎない」ことを心がけてください。ニュースや報道番組の情報には、いかにも今後は状況が悪化していくような「盛られたネガティブ情報」が含まれていることが多いです。
逆に、スポーツ選手や芸人がネットで配信しているSNSなどの情報はポジティブな内容が多いので、できるだけこのようなポジティブ情報を刷り込み、ポジティブなセルフトークをどんどん唱えていきましょう。