職場で、笑いながら電話をしている妊婦

「新しい働き方」に対応した両立支援とは ”産育休編”

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「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

働き方改革や新型コロナウイルスの感染拡大などを背景とし、リモートワークをはじめとした「新しい働き方」への対応が急速に求められている中、人事総務にとって従業員の仕事と育児・病気の治療・介護などとの両立支援は大きなテーマの一つです。

「新しい働き方」に対応した両立支援にはどのようなポイントがあるか、本記事では第一弾として「産育休」について解説します。

はじめに

多様な人材に活躍してもらうために人事総務部門として欠かせないキーワードの一つが、仕事と育児・病気の治療・介護などとの両立支援です。

内閣府の「男女共同参画白書 令和元年版」によると、共働き世帯は年々増加し、2018年時点で1,219万世帯(専業主婦世帯の2倍以上)に上っています。女性の社会進出が進んだ今日、仕事と育児などの両立は女性に限らず男性にとっても大きな課題となっています。

国はこれまで法律の制定やガイドライン・指針の策定、助成金の拠出など、制度の整備を進めることで企業の両立支援に対する取り組みを後押ししてきました。

少子高齢化、人口減少が進み、将来にわたって働き手が不足するリスクが高まっている今日、多様な人材が中長期的に活躍できるよう両立支援策を実施し、体制整備を進めている企業が増えてきています。昨今、新型コロナウイルスの影響によりリモートワークなど「新しい働き方」が定着しつつあります。

リモートワークは場所や時間の制約を緩和し、両立支援を必要とする働き手にとってはメリットをもたらす一方で、人事総務部門自体のリモート対応を含めた働き方改革はまだ十分に進んでおらず、両立支援や復職支援に支障をきたしたという事例も見られます。

このような状況変化を受け、本シリーズでは「新しい働き方」における両立支援・復職者支援のポイントを紹介いたします。両立支援の主なテーマとして産育休、私傷病(メンタル疾患やがんなど)、介護休などが挙げられますが、本記事ではまず休業者の数が最も多い「産育休」について解説したいと思います。

産育休者管理業務における課題

産休育休者と企業の人事総務担当者には以前より様々な悩み、課題が存在していましたが、「新しい働き方」が求められる昨今、その課題感が顕在化してきています。それぞれについて主だった悩み、課題の内容を以下に紹介します。

産休育休者の悩み

・ 人事担当者や上長との連絡が途絶え、会社の情報も入ってこない。スムーズに復職できるのかという不安
・ 復職後、キャリアと育児の両立ができるのか、サポートしてもらえるのかという不安・悩み
・ 保活の失敗や新型コロナウイルスのような環境要因による休業期間変更に対する不安 

企業側からのコミュニケーションが適切でなかったり、頻度が少なかったりすると、休業者の不安や悩みは大きくなります。

そもそもスムーズに復職ができるのか、復職後のキャリアと育児の両立は可能なのかといった悩みに加え、最近では新型コロナウイルスの影響で急に休業期間が変更となったケースもあり、休業者は復職に向けてより大きなストレスを抱えやすい状況となっています。

このような休業者の不安や悩みを助長してしまう大きな理由の一つとして、企業側の産育休者管理業務が新しい働き方に対応しきれていないということが考えられます。

人事総務担当者の産育休者管理業務における課題

・ 休業者と適時・適切にコミュニケーションをとることが難しく、丁寧なフォローができていない
・ 出産日などの連絡がないことによる手続き不備の発生
・ 出勤しなければ対応できないタスクや書類管理が多い
・ 復職タイミングに設定されやすい4月・5月に向け、特定の時期に休業者からの照会が集中し業務負荷が増大

新型コロナウイルスの影響で部署を問わずリモートワークが推奨されるようになったことで、これまで見過ごされてきた産育休者管理業務における課題が浮き彫りとなってきました。

産育休者管理業務は未だに出勤しなければならない業務が多く、休業者とのコミュニケーションや申請・手続きに遅れや漏れが生じているケースは少なくありません。

復職するタイミングが4月・5月に集中するのも産育休者管理業務の特徴です。保育園の入園手続きが始まる11月頃から休業者の照会が急増し、人事総務担当者は勤務証明書などの書類作成対応に追われます。

2月に入ると保育園への入園可否が分かってきますので、休業者の状況に応じて復職面談の設定や休業期間の延長など、丁寧なフォローを個別に行うことが求められます。

先述のように休業者は様々な不安や悩みを抱えています。人事総務担当者や上長が休業者と適時・適切なコミュニケーションをとることで、休業者の不安や悩みを和らげスムーズな復職を後押しすることが可能となります。スムーズな復職は、従業員の復職後のパフォーマンスにも良い影響を与える可能性があります。

Withコロナで見直す産育休者管理業務

前項の悩みや課題を踏まえ、これからのWithコロナ時代、産育休者管理業務において人事総務担当者側が取り組むべき項目について解説します。

・休業者からの情報や相談をスムーズに吸い上げられるようにコミュニケーションを円滑化する
保育園の入園手続きに必要な書類の情報や入園可否の状況、復職のタイミングに関する情報など、人事総務担当者がタイムリーに休職者から入手する必要がある情報は少なくありません。

最近では感染症への懸念を理由として急遽保育園への入園時期を遅らせ、それに伴い復職のタイミングも調整が必要となるケースもありました。このように休職者の状況に応じて情報や相談をスムーズに吸い上げられるようなコミュニケーションの仕組みを構築しておくことが重要です。

・休業者に対し会社の情報を定期的に発信できる仕組みを作る
休業者は会社側からのコンタクトが少ないと、「本当に復職できるのか?」といった漠然とした不安を抱えてしまいます。定期的に会社の情報を休業者に発信しコンタクトを取るようにしたり、全社的な情報について一斉周知できたりするような仕組みを構築することで休業者の不安や悩みを和らげることができます。

・出勤しなくても書類の授受・管理ができるようにする
休業者との間で母子手帳の写しや復職に向けた書類のやりとりを紙ベースで行なうと、出勤する必要が出てきます。

情報の検索性やバージョン管理の観点からも利便性が低く、Withコロナ時代で出勤頻度が減る場合、発送作業などが後手になってしまうことも考えられるため、ペーパーレス化に対応することが重要です。

・休業者の対応履歴管理を効率化することで抜け漏れをなくす
休業者の数が増えてくると、メールや電話などによるコミュニケーションや表計算ソフトといったツールでの管理では、出産日が急に変更になった等のスケジュールの変更や、やらなければならない手続きの進捗を見失ってしまい、作業に抜け漏れが発生するリスクが高まります。

関係者間の対応履歴をわかりやすく確認できる仕組みの構築が重要となってきます。

・管理業務を標準化し、どこでも、誰でも対応できる仕組みの構築
休業者管理業務が属人化していると、業務が集中する時期に特定の担当者の業務負荷が過度に増大してしまいます。管理業務のフローを標準化し、リモートで誰でも対応できる仕組みを構築することで、作業漏れや誤対応を防ぎ、スムーズな復職をサポートすることが可能となります。

「新しい働き方」に対応した業務に必要なこと

Withコロナ時代ではリモートワークが増えることを想定した上で産育休者管理の業務を設計する必要があります。

人事総務担当者が出勤しなければならないような紙ベースでの管理やコミュニケーションは極力減らし、リモートで誰でも対応可能な仕組み作りやシステムインフラの整備が必要となってきます。仕組み作りやシステムインフラを整備する上で押さえておきたい4つのポイントを紹介します。

ポイント1:問い合わせ内容を一元管理できる仕組みを作ること
メールやその他のツール管理では、スケジュールとの連動性や情報の検索性が低く、作業の抜け漏れやファイルの誤送信をしてしまうリスクが高まります。問い合わせ等を含め、コミュニケーションはチャットやメッセージで休業者ごとに一元的に記録・管理することで業務が効率化されます。

ポイント2:関係者とタスク・スケジュールが常に共有されていること
復職にあたっては、人事総務担当者から配布する書類だけでなく、休業者から提出してもらわねばならない書類も多くあります。いつどのようなタスクがあるのかを関係者全員と共有しておくことで、作業の抜け漏れを防ぐとともに、復職までのプロセスを可視化し休業者の不安を和らげることができます。

ポイント3:スケジュールはリマインド機能を有し、変更にも柔軟に対応できること
各書類の提出などの、関係者間で共有されたタスク・スケジュールが確実に実施されるよう、適切なタイミングで担当者に対してリマインドするような機能も重要です。

また出産日の変更などでその後のスケジュールも変更する必要がある場合には、システム的に連動してスケジュールが更新されると人事総務担当者の業務負荷は軽減されます。

ポイント4:リモートワークであってもセキュア環境であること
人事総務担当者がリモートワークを行っても滞りなく対応ができる仕組み・システムであることに加えて、セキュアな環境であることも求められます。

休業者とのやりとりは機密性の高い内容も含まれるため、社外はもちろん、社内でも適切な役割の社員のみが閲覧できるようアクセス権のコントロールやセキュリティレベルを確保する必要があります。

リモートワークなど「新しい働き方」に対応した産育休者管理業務を効果的かつ効率的に実施するためには、上記4つのポイント全てを満たしていることが重要となります。

まとめ

本記事で紹介したような休業者管理業務は、これまで多くの企業は特段仕組みやシステムを導入することなく対応してこられたと思います。しかし「新しい働き方」が求められるようになった昨今、今まで対応できていた業務がスムーズにいかないと感じられている人事総務のご担当者も多いのではないでしょうか。

今後リモートワークが定着してくることを想定した場合、産育休者管理などの両立支援業務は今まで以上に業務を効率化し、どこでも・誰でも対応できる仕組みを構築することが求められます。

休業者とのコミュニケーションを円滑に行えるインフラが整備されていると、仕事と育児の両立に不安や課題を抱えている休職者をより丁寧にフォローすることが可能となります。

株式会社アドバンテッジリスクマネジメント
両立支援事業部 コンサルタント

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【筆者プロフィール】

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部
導入企業数3,140社/利用者数483万人のサービス提供実績と、健康経営銘柄に3年連続で選定されたアドバンテッジリスクマネジメントの知見から、人事領域で関心が高いテーマを取り上げ、押さえるべきポイントやつまずきやすい課題を整理。人事担当者や産業保健スタッフの“欲しい”情報から、心身のヘルスケアや組織開発、自己啓発など従業員向けの情報まで、幅広くラインアップ。「ウェルビーイングに働く」ためのトピックスをお届けします。

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