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コロナ禍における健康管理と従業員ケアのポイントとは

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「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

新型コロナウイルスの感染拡大が健康経営にも影響をおよぼす中、「コロナ禍における働き方の変化と従業員の健康状態への影響・対策状況」をテーマに、課題解決に向けたヒントをご紹介します。

※本記事は、8月26日に当社が実施した「Withコロナ時代、従業員の心と体の健康管理セミナー(Web)」の内容を編集して配信しています。

※ 前編 「リモートワークにおける従業員の健康管理の重要性」の記事はこちらからご覧ください。

在宅勤務における従業員の健康状態の変化

まずはコロナ禍における働き方の変化と、在宅勤務における従業員の健康状態を公的な調査により見ていきましょう。東京都防災HPによりますと、2020 年4月の段階で、都内企業(従業員30人以上)のテレワーク導入率は6割以上と、3月時点と比較して大幅に増加しました。

さらに新型コロナウイルスの感染防止対策として、実際にテレワークを実施している従業員がいる割合も平均約5割となっています。

コロナ前後での在宅勤務の普及率の変化に関する図

また、経産省が6月に実施したアンケートによると、コロナ禍の在宅勤務による悪影響が良影響を上回ると回答した企業の割合は、身体的影響、精神的影響ともに25%と、4分の1にも上る結果となりました。

身体的悪影響の内容としては、外出機会の減少による運動不足、就労環境が自宅になることによる腰痛など、体重増加や生活習慣病の悪化等が危惧されており、一方の精神的悪影響の内容としては、コミュニケーション量の低下による不安の増大など、従業員の孤立やメンタル問題等が危惧されています。

コロナ禍におけるストレスの整理

次に当社メンタルヘルス相談センターがコロナ禍での具体的な心身へのストレス反応への影響をまとめました。

在宅勤務では生活リズムの変化から睡眠、食事、運動への悪影響が見られたり、お子様のケアなどから業務に集中できず、イライラしてしまったり、あるいは遠隔ツールの利用が要因となってコミュニケーション不足が起こったり、不安や孤独を感じてしまうケースがあります。

また出社勤務と在宅勤務が混在するケースでは、出社への不安や勤務形態への不公平感等からストレスが蓄積してしまうというケースも見られました。

コロナ禍によって環境が大きく変化したことによるストレス反応は「コロナ疲れ」「コロナうつ」と呼ばれ、仕事だけでなく私生活にもとても幅広く支障をきたす可能性があるのです。

従業員の健康管理における課題

こうした現状を把握したうえで、コロナ禍において従業員の健康管理にどのような課題があるのか、当社がおこなったアンケートから、主に4つの課題が見つかりました。これらの課題に対して、どのように対応していけばよいのかをみていきましょう。

①会社としての介入範囲

会社側は安全配慮義務のもと、特に健康リスクがある従業員への介入が求められています。一方で、従業員側は自己保健義務のもと、自身の安全健康を確保するとともに、企業が実施する措置(労災防止対策や健康管理施策など)に協力しなければなりません。

従業員の健康管理は会社側の努力だけで達成するのは難しいため、従業員の協力を得ることは不可欠ですし、法律上でも従業員側が協力することと定められています。

そういう意味では、会社側が行う健康管理の目的や自己保健義務について、従業員の皆様に対してきちんと周知したうえであれば、例えばリモート下での私生活の過ごし方について会社側が情報提供などをしても、何ら違和感のないアプローチといえるでしょう。

むしろリモート下では仕事と私生活の境界が曖昧になっていますので、健康増進活動を積極的に行っていくということであれば、その範囲についても情報提供することは素晴らしい取り組みなのではないでしょうか。

②健康状態の把握やリスク検知ができない

リモートワーク下においては、従業員の健康状態が把握しづらく、不調者への対応が遅くなってしまうという懸念があるため、希薄化しがちなコミュニケーションの機会は意識的に作る必要があります。具体的な対策は主に3つです。

まず1つ目は、コミュニケーションの意識化です。メンバー同士の交流の場をあらかじめ設定し、時間は短くともコミュニケーションの頻度を増やすことで、新しいコミュニケーションスタイルに上司部下とも慣れていきます。必要に応じてカウンセリングなどの外部機関も活用するとよいでしょう。

2つ目は、リスクの早期検知や状況把握のためのツール活用です。健診やストレスチェックなど法制化されているものも活用しつつも、リモートの健康管理が可能なアプリやツールを導入し、リモートモニタリングを実施することが重要でしょう。

そして3つ目は、産業医・保健師(産業保健スタッフ)との協力です。普段から健康管理の観点で従業員に接しており、ハイリスク者等の把握もしているため、人事と情報共有を密にすることで、全体の健康状況の把握がよりスムーズになります。

また産業保健スタッフの活動を十分周知することで、気軽に相談できる専門家窓口として活用できるでしょう。

③生活習慣の乱れが懸念される/ ④健康維持・増進活動ができない

続いて3つ目と4つ目の課題である「生活習慣の乱れが懸念される」、「健康維持・増進活動ができない」についてお話ししましょう。

実際こうしたコロナ禍においては、より積極的に健康増進活動を展開したいという企業のニーズが増えてきています。集合型のセミナーやイベントを開催するのは難しいため、オンラインセミナーやアプリ、eラーニングなどを活用したリモート施策に切り替えていくことがポイントになるでしょう。

リモートワークでは個々の就業環境も異なり、対面で従業員同士が健康状態を確認し合えないこともあります。もう一つのポイントとしては、会社としても個人の健康状態を把握することや、個人に向けた健康増進活動を実施していくことがとても重要といえます。

では実際にどのようなアプローチが効果的なのでしょうか。健康増進活動実施に向けて、まず一番注意していただきたいのは、ハイリスク者をきちんと把握し、特別にケアすることです。そこを押さえたうえで個人もしくは全体に対する健康増進活動を展開していくことが大切になります。

ここで言う「ハイリスク者」とは、従来では脳梗塞や心筋梗塞などの術後の方、メンタル不調から復帰された方、障がい者雇用の方などを指しますが、リモートワーク下では、慢性疾患の既往がある方、再雇用のシニアの方、急激に体重が増加した方(いわゆるコロナ太りした方)なども対象になります。

こうしたハイリスク者を踏まえたうえで、個人に対するアプローチとしては、健康診断・ストレスチェックの活用、出退勤のルール設計(チャットでの出社報告など)、健康管理アプリの導入と健康状態のモニタリングなどを、さらに集団に対するアプローチとしては、オンラインセミナーや e ラーニングによる健康情報の提供、相談窓口の設置と周知、健康管理アプリの導入とそれに付随するイベント等を実施するのがよいでしょう。

まとめ

「コロナ禍における働き方の変化と従業員の健康状態への影響・対策状況」をテーマに、課題解決に向けたヒントをお伝えしました。コロナ禍によって環境が大きく変化したことで、従業員側の心身の健康管理問題や、それに伴い会社が行うべき対応も変化が求められています。

今回のような急な環境変化に対応が追い付かないケースも多いかもしれません。そのようなときは、必要に応じて外部リソースや、ツールを活用するのも検討してみてはいかがでしょうか。

株式会社アドバンテッジリスクマネジメント
産業保健推進部 保健師

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【筆者プロフィール】

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部
導入企業数3,140社/利用者数483万人のサービス提供実績と、健康経営銘柄に3年連続で選定されたアドバンテッジリスクマネジメントの知見から、人事領域で関心が高いテーマを取り上げ、押さえるべきポイントやつまずきやすい課題を整理。人事担当者や産業保健スタッフの“欲しい”情報から、心身のヘルスケアや組織開発、自己啓発など従業員向けの情報まで、幅広くラインアップ。「ウェルビーイングに働く」ためのトピックスをお届けします。

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