休業者とのコミュニケーションのポイントを、休業者視点に立って紹介します。本記事では休業の種類の中でも「産休・育休」を中心に、どのような課題があるのかを明らかにするとともに、誰もが安心して産休・育休を取得でき、心理的負担なく復職できる職場づくりのポイントを紹介します。
人事・労務担当者の業務の中には「休業者対応」が含まれます。メンタルヘルス不調をはじめとした私傷病や産休・育休、介護など、さまざまな理由で休業されている従業員の方とのやりとりにはデリケートな対応が求められます。
弊社の実施した「休業者管理の課題に関するアンケート」によると、実に半数近くに上る48.9%の担当者が「休業者とのコミュニケーションの円滑化・記録化が必要」と回答していることからも、コミュニケーションへの課題感は大きいことがうかがえます。
コミュニケーションをとる上では相手への理解が必要になりますので、本記事では人事・労務担当者側ではなく、休業者側から見る、休業時の課題や不安について紹介します。
目次
産休・育休の取得に不安を感じる人は多い
先述したように休業する要因は人それぞれです。その中で今回は「産休・育休」を主なテーマとして紹介していきます。
スリール株式会社が発表した「両立不安白書」によると、仕事と子育ての両立への不安が原因で転職・退職を考えた経験があると回答した人は50.4%に上ります。
また、同様の理由から妊娠や出産時期を遅らせることを考えた経験があると回答した人も約半数の46.6%存在します。人材の流出を防ぐ観点から、また、従業員に適切なワークライフバランスを保ってもらう意味でも、「仕事と子育ての両立」は重要なテーマです。
産休・育休取得者とのコミュニケーションは、大きく以下の3段階に分けて考えることができます。
1.休みに入る前
2.休みの最中
3.復職を控えた時期
「1.休みに入る前」における具体的なコミュニケーションの内容としては、産休・育休に関する社内規程、公的手当金・社会保険の手続方法の連絡や、休業期間の過ごし方のアドバイスなどが中心となります。
「3.復職を控えた時期」については、短時間勤務制度などの利用有無をはじめとした復職後の働き方に関する確認が中心となっています。
1と3については、比較的定型化された内容であることもあり、対応できている企業が多い一方で、「2.休みの最中」については、連絡の内容や頻度について人事・労務担当者や休業者の上司に委ねられているケースは少なくありません。
「2.休みの最中」におけるコミュニケーションが適切に行われていないことで、休業者に不安を与えてしまったり、復職後のモチベーションに影響を与えてしまったりしていることもあります。
次章からは、実際に休業者が休みの最中に困ったことや感じた不安を紹介し、それらに対して企業側にはどのような対応が求められるのか、という点について、詳しく解説していきます。
産休・育休取得者が休業中に困ったこと・不安だったこと
社会からの疎外感
産休・育休が始まることで、休業者の環境は大きく変わります。仕事をしているときであれば、同僚や上司、部下、取引先など多くの人と接する機会がありますが、産休・育休により、その機会は少なくなります。
このような環境の変化が、社会からの疎外感・断絶感につながり、より深刻化すると、復職へのモチベーションにも悪影響を及ぼします。
仕事の情報が得られなくなる
産休・育休中は、社内イントラネットへのアクセスを制限する企業も多くあります。会社内部の情報を知る機会が減ることで、仕事や職場との間に距離を感じてしまうこともあります。
休業期間中に上司や同僚が転勤・異動するなどして、職場環境が変わってしまっていた場合、以前と同じように仕事をすることができるか、復職後のキャリア形成について不安を感じてしまう休業者も少なくありません。
問い合わせに対するレスポンスが悪くなる
「保活」は就労証明書をはじめとした書類の準備や情報収集など、タイムリーに事を運ぶ必要があります。仮に育休満了日までに保育園が決まらなかった場合、復職時期などの調整も必要になるため、人事担当者とスムーズに連絡を取りたいと考える休業者は多いでしょう。
しかし、産休・育休を取得している他の休業者も同じようなスケジュールで動いていることが多く、人事・労務担当者には同時期に問い合わせが集中します。このため、コミュニケーションが滞ってしまうケースは少なくありません。
復職後の働き方
復職が近づくと、復職後に仕事と子育てを両立できるか不安になる休業者は多いものです。
2019年にベビーシッターサービス「キッズライン」が、育児休業等を終えて仕事復帰・復職した経験がある人、または今後復職予定の人の内、「復職にあたり不安がある」と答えた149人を対象に、「復職にあたりどのようなことが不安か」を尋ねたところ、6割以上の方が「保育園の送迎や病児の対応ができるか」、「体力が持つか」といった、仕事と子育ての両立に関する不安を抱えていることがわかりました。
男性の育休取得に関する動向
近年、メディアでは子育てに積極的に取り組む男性のことを「イクメン」と称し、取り上げられることも多くなりました。
厚生労働省の「令和元年度 雇用均等基本調査」において、男性の育休取得率は7.48%となっており、調査が開始された平成8年度の0.12%という結果と比べると飛躍的に増加しています。しかし一方で、政府が目標としてきた「20年に13%」という数値には程遠い情勢となっています。
取得が進まない背景として、令和元年7月の「男性の育児休業の取得状況と取得促進のための取組について*」(厚生労働省)の資料によると、男性が育児休業を取得しなかった理由として最も多かったのが「職場が育児休業を取得しづらい雰囲気だった」で37.0%、次いで多かったのが「会社で育児休業制度が整備されていなかった」で30.0%となり、制度と社内の雰囲気が大きな要因となっていることがうかがえます。
(*育児休業を利用しなかった男性1,648名に対するアンケート)
2020年5月に閣議決定された「少子化社会対策大綱」では男性の育児休業取得率を2025年までに30%にすると目標設定しており、男性が育休を取得しやすい環境づくりや、具体的な制度の検討を進める方針を示しています。
従業員が安心して産休・育休を取得できる会社になるために
必要な人に適切な情報配信
産休・育休期間に入ると、職場の人とのつながりが薄れたり、社内の情報が得られなくなったりすることで、孤立感や不安を感じてしまう休業者は多いということがわかりました。
そのため、社内の状況を知らせる社内報を定期的に配信したり、休業者が閲覧できるような掲示板(社内ポータル)を用意したりすることが重要となります。
社内報の配信だけではタイミングが悪く見逃してしまうこともありますが、掲示板のように休業者のタイミングで情報を収集できる形式の場合、休業者のライフスタイルに合わせて社内情報を把握することが可能になります。
スケジュールを関係者と共有する
産休・育休による休業は、ある程度の予定や、実施すべき内容が決まっていますので、それらを休業者、人事・労務担当者をはじめとした関係者全員で共有しておくことも重要です。
ステップが見えることで、休業者としても復職までのイメージを持ちやすくなりますし、職場(所属部署)としても、いつ頃復職できそうかを把握し、受け入れ準備をすることができます。結果として、必要なコミュニケーションの抜け漏れを防ぐことができます。
コミュニケーションの円滑化および記録化
休業者とのコミュニケーション手段についても配慮が必要です。休業者とのタイミングが合わずコミュニケーションが取れないといったリスクを回避する意味では、電話を中心とするより、チャットのようなコミュニケーション手段が望ましいです。
実際に、人事・労務担当者からは、「電話ではなかなか連絡がつかないし、メールではちゃんと見てくれているか心配。」との声がある一方、休業者からは、「日中は子供の世話で忙しく、メールも見られない。子供が寝静まって、ようやくスマホを見られる状況。」との声もあります。
チャットの場合は、隙間時間にモバイル端末から確認することができますし、メールなどと違い、比較的気軽にやりとりをすることができます。
チャットの良い点としては、各休業者とのコミュニケーション履歴を蓄積することによって過去の状況などを把握しやすくなり、たとえメインの人事・労務担当者が不在の時でも、チャットを確認することで、各休業者に合わせたコミュニケーションが行いやすくなる事が挙げられるでしょう。
仕事と子育ての両立への理解がある職場風土の醸成
復職後も育児は続くため、遅刻や早退、欠勤をしなければならない状況になることは少なくありません。復職された方としては「職場に迷惑がかかるのではないか」などの不安を感じてしまいます。
このような不安な気持ちを感じさせないためにも、社内全体として、復職後の仕事と子育ての両立に対して理解を深めるような取り組みが重要です。このような風土づくりを行うことで、産休・育休を取りやすくなることに加えて、休業中も復職後のキャリアなどについて過度に不安を感じさせないことにもつながります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は休業者側の視点から見た、好ましい産休・育休中のコミュニケーションのあり方を解説しました。
産休・育休を理解した上での制度整備も重要ですが、休業中のコミュニケーションも非常に重要です。今回紹介したようなポイントを押さえて休業者と接することで、モチベーションの高い状態で復職に導くことができ、復職後も十分な活躍が期待できますので、ぜひ実践してみてください。
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また、メッセージ機能では、チャットのような手軽さで、休業者とコミュニケーションをとることができ、休業者の既読・未読の判別も可能です。
スケジュール機能を用いることで、各休業者の復職までのプロセスや、時期に応じた必要な書類などを確認することができ、年度の切り替わりのような問い合わせが集中してしまう時期においても、滞りなく、書類のやりとりやコミュニケーションを行うことができます。
男性の育休取得が拡大していく中、産休・育休取得者の適切かつ効率的な管理と、復職後を見据えたあたたかいサポートを行っていきたい企業様に是非おすすめです!
株式会社アドバンテッジリスクマネジメント
両立支援事業部 コンサルタント