これまでにお届けした筑波大学・相川充先生のインタビューでは、第1弾でコロナ禍におけるEQの重要性、第2弾でEQを高めるための4つのステップ、第3弾で従業員エンゲージメントとEQの関係性についてお話を伺いました。
そして今回は番外編として、コロナ禍における新入社員とのコミュニケーションについてお話しいただきます。
【第1弾~第3弾のインタビュー記事はこちら】
・第1弾:「リモートワーク におけるEQの重要性とは? 」
https://www.armg.jp/journal/173-2/
・第2弾:「感情の能力=EQを高めるための4つのステップ 」
https://www.armg.jp/journal/174-2/
・第3弾:「従業員エンゲージメントにEQが欠かせない理由 」
https://www.armg.jp/journal/175-2/
HR総研(ProFuture株式会社)が実施した「人材育成に関するアンケート調査」によると、新入社員研修をオンラインで実施した企業にデメリットや課題を聞いたところ、「モチベーションの低下や会社への帰属意識醸成の遅れが見られた」、「細かい意思疎通が難しい」、「同期とリアルに繋がる機会が得られない」、「人間関係の構築が難しかった」などの声が寄せられ、またこうした課題に対し、「有効な対応策を講じることができなかった」という意見もありました。
コロナ禍でリモートワークが拡大するなか、新入社員の不安を取り除くためには、果たしてどのようなコミュニケーションが効果的なのでしょうか。
――昨今お客様から、今年はコロナ禍で新入社員が出社できず、リモートでの研修や教育、配属が行われているため、本人はもちろん受け入れ側も不安が非常に大きくなっているというご相談が増えています。こうした状況下で、新入社員といかにコミュニケーションを取ればよいのか、人事や管理職の方々にアドバイスをいただけないでしょうか?
相川 私たち人間は、自分の体を使って、実際にある場所に足を運び、少しずつ慣れて、それを繰り返すことで、自分がその場所に属しているということを実感します。
「組織」という言葉は抽象的で目には見えませんが、例えば建物があり、机があり、人がいて、その場所に何度も通うことで、私たちはその組織の一部であるということを感じられるようになるわけです。
ところがリモートには、そういう「場所」がありません。例えば今年の新入社員の方からは、「1回しか自分の職場に行ったことがない」といった声を耳にします。そうなればなるほど所属意識も薄くなってしまいますが、このリモートという状況は簡単には変わらないでしょう。
では、実際にどのように対処したらよいのか。その答えとしては、「とにかくコミュニケーションを取る頻度を増やす」しかありません。仕事の用事がなくても、「お元気ですか?」と小まめに声をかけたり、連絡を取り合ったりするなど、1回の時間は短くてかまいません。
毎日そういう時間を設定すれば、所属意識は少しずつ高まっていくでしょう。そういうことを繰り返すうちに、実際に対面したときに、「これまで話していたあの人が目の前にいる!」と気持ちも高まりますし、「よし、この会社のために頑張るぞ!」という意識も湧きやすくなります。
また単に頻度を増やすだけでなく、電話で声を聞いたり、テレビ会議で顔を合わせたり、メールで文字のやり取りをするなど、コミュニケーションが単純化しないように、いろいろなメディアを活用するのも効果的です。
――最近は「1on1」を取り入れる企業なども増えていますが、新入社員の心理的安全性を高めるために工夫すべき点や注意すべき点はありますか?
相川 新入社員一人ひとりの声をきちんと受け止めることが重要です。上司や管理者は、どうしても指示を出すというスタンスに立ちやすいのですが、例えば仕事の話であっても、まずは新入社員なり部下なりの話を「受け止める」という大前提に立つ必要があります。
仮にその話が間違っていたとしても、それをすぐに否定するのではなく、「この人はこういう風に考えているんだな」と受け止め、そして「あなたの考えはよくわかりました」と受け止めたことを相手にきちんと伝えることも大事です。そうすることで相手の不安を取り除くことができるでしょう。
YouTubeで本インタビュー動画を公開しています。