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健康経営を実践する上で押さえておきたいGLTD制度

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「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

従業員の不健康が企業にダメージを与える時代になってきているなか、従業員の「健康」に焦点を当てた健康経営が注目されています。国でも健康経営銘柄、ホワイト500などの認定制度を創設し、後押ししています。

今回は健康経営や健康経営銘柄、ホワイト500などの認定制度を中心に解説しつつ、認定時の評価項目として新たに追加された団体保険の1つであるGLTD制度のポイントを紹介します。

従業員の「健康」に焦点を当てた健康経営が重要に

長時間労働の常態化やメンタルヘルス不調者の増加など、従業員の心身に関わるネガティブなキーワードを多く耳にするようになってきています。従業員が不健康な状態であるために、生産性が低下してしまったり、最悪離職してしまったりするケースも少なくありません。

このような状況下において、注目されているのが従業員の「健康」に焦点を当てた健康経営です。

本記事では、健康経営が必要とされている背景を振り返るとともに、健康経営を実施することの効果や国も後押ししている健康経営銘柄などに認定されることのメリット、認定を得るためのポイントについて解説します。

不健康が企業にダメージを与える時代

はじめに、従業員が不健康状態のままでいることの代表的なデメリット・ダメージについて紹介します。

従業員が不健康なままでいるということは、その分だけ、通院する可能性が高まります。これにより国民医療費は増加し続け、健康保険組合等の財政が悪化し、最終的に健康保険料の上昇という形で企業負担の増加を招きかねません

また、国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」からもわかるように、日本国内の人口および労働人口は減少傾向となっており、新たな人材を確保することが、従来よりも難しくなってきています。

採用に成功した人材の健康状態が悪くなってしまい生産性が低下すると、そのまま企業の生産性低下につながります。また、離職率の増加にもつながる恐れがあり、有能な人材の確保にも悪影響を及ぼす可能性も十分に考えられます。

健康経営が注目されている

従来であれば各個人に委ねられていた健康管理を、企業として経営的な視点で捉え、戦略的に実践することで、各従業員が心身共に健康な状態で業務に専念できるようにする「健康経営」という考え方が注目されています。

従業員の健康促進や労働衛生などへの取り組みを「コスト」として捉えるのではなく、「経営的な投資」として考え、実践することで、以下のようなさまざまなメリットを得られるようになります。

・各従業員のエンゲージメント向上
・離職率低下への寄与
・生産性の向上
・医療費負担の軽減
etc

健康経営の実践を通して、このようなメリット・恩恵を受けることにより、組織の活性化がもたらされ、結果的に業績や株価の向上につながると期待されます。

健康経営銘柄、ホワイト500などが設定され国も後押しする健康経営

健康経営は国も後押しする考え方となっており、経済産業省により平成26年度から「健康経営銘柄」の選定を行い、平成28年度には「健康経営優良法人認定制度」が創設されました。

また、健康経営優良法人(大規模法人部門)の中でも上位500法人を「ホワイト500」と呼び、こちらも認定を行なっています。本記事では大規模法人部門を念頭に解説していきます。

このように優良な健康経営に取り組む法人を「見える化」することで、各ステークホルダーから「従業員の健康管理を経営的な視点で捉え、戦略的に取り組んでいる企業」として社会的に評価されやすい環境が構築されてきています。

認定されることによるメリットともたらされる変化

健康経営優良法人やホワイト500に認定されるメリットや認定されたことによる変化とはどのようなものがあるのでしょうか。

令和2年9月に経済産業省から公開された『健康経営の推進について』という資料内で健康経営優良法人2017および2018に連続して認定された法人に対して、認定後の変化や効果を尋ねたアンケートがありますので、主な8項目について、以下に記載します。
*以下回答の多い順に記載

自社内での意識の高まり
・自社の健康経営の取り組みの更なる推進
・従業員の健康に対する意識向上

企業イメージの向上
・他社からの健康経営に関するヒアリング等の依頼
・顧客や取引先に対する企業イメージの向上

労働時間適正化や有給取得率の向上
・時間外労働の減少
・有給休暇取得率の向上

コミュニケーションやモチベーションの向上
 ・社内コミュニケーションの活性化
 ・従業員の仕事満足度・モチベーションの向上

アンケートからは自社内での意識の高まりや、コミュニケーションおよびモチベーションの向上に加え、企業イメージの向上など第三者からの評価を実感している法人が多いことがうかがえます。

制度への参加企業は年々増加

健康経営優良法人の認定数(大規模法人部門)は2016年度(健康経営優良法人2017)235法人だったのに対して、2017年度(同 2018)539法人、2018年度(同 2019)813法人、2019年度(同2020)に至っては1,476法人と年々増加傾向にあります。

これは、健康経営を取り組むことや、健康経営優良法人やホワイト500に認定されることのメリットが広く認知され始めていると考えることができます。

ホワイト500については、500社を超えて認定されていましたが、健康経営優良法人2020より、健康経営優良法人のうち、上位500法人までが認定されるようになりました。

また、先日「健康経営銘柄2021」および、「健康経営優良法人2021」が発表されました。最新情報はこちらをご覧ください。
https://www.meti.go.jp/press/2020/03/20210304005/20210304005.html

取得に向けて押さえておきたい調査票の主な変遷

上位500法人までがホワイト500に認定されることとなり、従来よりもホワイト500の認定のハードルは高くなってくると予想されます。

自社に合った健康経営を実践しつつ、ホワイト500などの認定取得を目指す際には、どのような点が評価されているのかを把握する必要があります。ここで、今までの健康経営度調査票を基に、どのような健康経営が求められるようになってきているか確認していきます。

健康経営優良法人のこれまでの主な変更点

まずは、健康経営優良法人2018から健康経営優良法人2020までの主な変更点について見ていきます。

大きな流れとしては、健康経営を実践する上で重要な「従業員の健康状態の改善」については、多くの企業が状況把握に努め始めていたことから、個人だけではなく、組織の活性化の度合いを確認するようになりました

さらに、現状の施策による従業員個人や組織への影響を評価・分析し、改善につなげられているかなども、調査票で測られるようになりました。

このような変化の他にも、「健康経営に関する社内外への発信度合い」や「トップランナーとして普及への取り組み状況」、「禁煙対策の実施度合い」、「高齢者への健康対策」など時勢に合わせた項目が追加されました。

健康経営優良法人2021の変更点:コロナによる影響と設問の整理

次に健康経営優良法人2021における主な変更点を紹介します。

新型コロナウイルス感染症の流行により保険者が特定健診などを実施できていない状況であることの影響により、健康経営優良法人2021(大規模法人部門)では連名申請する保険者が、後期高齢者支援金の加算対象(2019年度の特定健診・特定保健指導実施率で判断)であるかが考慮されなくなりました。

また、目標の設定や効果検証に関する設問についても整理がされています。

従来の設問では目標設定についてのみで、効果検証の取り組みについては聞かれないものもありましたが、健康経営優良法人2021(大規模法人部門)から「健康課題に基づいた具体的目標の設定」を必須要件化するにあたり、実施後の効果検証の設問と現在の目標設定とを分ける形で設問が整理されています。

加えて、団体としての保険加入の有無を尋ねる設問が追加されています。

今、注目すべきはGLTD制度

前章の最後に触れた「団体としての保険加入」について、具体的には「団体として保険に加入し、治療費や休業補償を補助(健康保険組合からの一時金は除く)」という設問が、「メンタルヘルス不調者への就業と治療の両立支援に関する取り組み」と「私病等を持つ従業員への就業と治療の両立支援に関する取り組み」の中に追加されています。

この要件を満たす施策の代表例が「GLTD制度」です。GLTD制度は「病気やケガで休職した時に所得の一部を補償する」保険のしくみです。従業員の就業不能に対する不安を払拭し、安心して働ける環境を平等・公平に提供することができます。

過去10年で導入が2倍になっており、特に1,000名以上の企業におけるGLTD制度の導入割合は、2018年の時点で既に18%に上っています(労務行政刊『労政時報』第3957号-18.9.14)。

GLTD制度を導入することにより、従業員の就業不能時における所得減少に関する不安を軽減することができますが、その他にも期待できる効果が多くあります。以下に代表的な効果について解説します。

GLTD制度の効果1 エンゲージメントの向上

GLTD制度の導入はエンゲージメントの向上にもつながります。基本的にGLTD制度は福利厚生施策の一つとして導入されます。福利厚生制度の恩恵を受ける従業員の割合が高いほど、従業員の満足度(エンゲージメント)は上がるとされています。

その点、GLTD制度は企業・団体が保険料を負担して、対象となる全従業員を被保険者とすることができる全員加入型の制度ですので、皆が等しく恩恵を受けることができます。

それに加え、個人で補償を上乗せできる任意加入制度もあり、導入しているさまざまな企業の従業員のうち、平均40%の従業員が任意加入を希望していることからも、従業員に高い満足度を与えられていることがうかがえます。

GLTD制度の効果2 リクルーティングの強化

GLTD制度を導入し福利厚生を充実させることで、リクルーティングの強化にもつながります。経済産業省の資料によれば、就活生が企業選びを行う際に重視しているポイントとして、「従業員の健康や働き方に配慮しているか」や「福利厚生が充実しているか」が高いことがわかりました。

調査は就活生や就活生の両親に対するアンケートでしたが、中途採用においてもこれらの点が重視されている可能性は高く、GLTD制度を導入し福利厚生を充実させることは、新卒・中途採用において良い影響を与える可能性が高いこと言えるでしょう。

ホワイト500などの認定確度を高めるためにGLTD制度の検討を

今回は健康経営や健康経営に関する認定制度を中心に解説してきました。直近では、健康経営優良法人やホワイト500に選出されるためのポイントとして、GLTD制度を代表とする団体での保険加入の重要度も高まってきています。

先述したように、ホワイト500は認定企業数が厳密になったため、新規だけでなく、継続して認定されるためにも十分な対策が必要となってきています。

既存の設問やポイントに対する取り組みを十分に実践した上で、新たに追加された「団体保険に関する項目」に関連して話題となっているGLTD制度についても、この機会に導入を検討してみてはいかがでしょうか?

株式会社アドバンテッジリスクマネジメント
LTD・リスクファイナンス部門 コンサルタント

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【筆者プロフィール】

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部
導入企業数3,140社/利用者数483万人のサービス提供実績と、健康経営銘柄に3年連続で選定されたアドバンテッジリスクマネジメントの知見から、人事領域で関心が高いテーマを取り上げ、押さえるべきポイントやつまずきやすい課題を整理。人事担当者や産業保健スタッフの“欲しい”情報から、心身のヘルスケアや組織開発、自己啓発など従業員向けの情報まで、幅広くラインアップ。「ウェルビーイングに働く」ためのトピックスをお届けします。

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