新年度を迎え、早くも2カ月が過ぎました。
この春新たに管理職になり、部下とのコミュニケーションに悩んでいる方もいらっしゃるかもしれません。
管理職に限らず、ビジネスパーソンに求められるスキルの一つが「傾聴力」です。
「傾聴力が高い人」とはどのような人でしょうか?
例えば、話をさえぎらず、最後まで聞いてくれる人、沈黙の時間に耐えることができる人、相手の気持ちに共感してくれる人、話を引き出してくれる人…皆さんはどのような人をイメージされますか。
本記事では、今求められる「傾聴力」について実践のポイントの一部をご紹介します。
※本記事は、4月14日に当社が実施した「テレワークでも実践できる!「傾聴力」を高めるHOW TOセミナー」の内容(一部)を編集して配信しています。
目次
傾聴力とは
管理職としての重要なミッションは、部下が抱える業務の進捗を把握し、組織をマネジメントすることです。
「あの業務はどこまで進んだ?」「いつまでにできそう?」「どんなことにつまずいているの?」・・・など、確認する機会も多いでしょう。
こうした事実や出来事など、起きている事象を的確に聴取する力を「ヒアリング力」としましょう。
スムーズに物事を進めるために、正確に進捗を確認し、課題の早期対処を行うことは、管理職に求められる必要な能力です。
それでは、「傾聴力」とはどのような力なのでしょうか。
「傾聴力」とは、本人が持つ感情、そこからくる欲求や要望を聴取するスキルを指します。
深いレベルで相手の状態を理解する、つまり、本音(=本人が持つ感情や周辺情報)が聞き出しやすくなるスキルのことをいいます。
なぜ今「傾聴力」が求められているのか
新型コロナウイルス感染症防止対策として、在宅勤務(テレワーク)を取り入れている企業も多いのではないでしょうか。
コロナウイルス禍、オンライン前提のコミュニケーションが増え、人との接触が大幅に少なくなりました。この1年、上司部下間であっても対面する機会がほとんどなかった、という人も多いかもしれません。
出社してお互い顔を合わせていれば、相手の様子もわかり、ちょっとした合間に声掛けができます。ちょっとした表情や行動で、「今日はいつもと様子が違うな」と感じることもできるでしょう。しかし、オンライン上では相手の様子、変化に気づきにくいものです。
よって、これまで以上に面談の重要性が高まっているといえますが、そうはいっても面談にばかり時間を割くわけにはいきません。限られた時間のなかで、部下の本質を理解するために重要になるのが、相手の様々な状態を理解し、対話を実現させるためのスキル、つまり「傾聴力」なのです。
「傾聴力」に必要なもの
「傾聴力」とは元々心理学の世界で使われてきた用語です。
心理学の父とも称されるカール・ロジャーズ氏は、カウンセラーの態度として必要なものを、以下3点挙げています。
・自己一致
カウンセラーが自分の内面に起こっている考えや感情に気づいて、場合によっては表現することができる状態。あるがままの自分でいられること
・無条件の肯定的関心
相談者がどんな状況であっても、肯定的で受容的な態度を持つこと
・共感的理解
相談者が持つ感情と出来事についての個人的な意味付けを感得して、その理解を相談者に伝えること。
(出典:https://kokoro.mhlw.go.jp/listen_001/)
これらを体現することで、相談者がたくさん語りやすくなり、気づきを得やすくなる状況が生まれるのです。
しかし、管理職の方々がカウンセラーのレベルを目指す必要はありません。
今回は、この3つのポイントについて、どのように意識すべきかかみ砕いてお伝えします。
まずは、「無条件の肯定的関心」についてお伝えします。
「無条件の肯定的関心」とは善悪の評価を入れずに聴くこと、「なぜ相手はそのように考えるようになったのか?」と、肯定的に関心を持つことをいいます。
具体的には、以下3つの「態度」を持つことを意識しましょう。
1.「相手の話を最後まで聞くぞ!」という覚悟を持つ、話をさえぎらない
2.「なぜ相手は今そのような状態なのか?」という興味を持つ
3.「相手の話を、いい/悪いでジャッジしない」という心意気を持つ
これらの態度で接することが、相手の安心感を生み、話しやすい雰囲気づくりに役立ちます。
「自分をさらけ出しても良いかも」と思わせる、相手との信頼関係を築くことを、心理学用語で「ラポール形成」といいます。
続いて、「共感的理解」についてお伝えします。
「共感的理解」とは、相手の気持ちに共感しながら理解しようとすることをいいます。
具体的には、以下3つの「想像力スキル」を持つことを意識しましょう。
1.「自分が相手の状況だったらどう考え、どのような気持ち(感情)を持つのか?」を考える
2.加えて、「相手はどんな感情を持っているのか?」と想像してみる
3.自分が予測した相手の感情を相手に伝えてみる
これらの想像スキルを発揮することによって、相手に「わかってもらえている」という意識を醸成し、さらに「伝えたい」気持ちを持たせやすくなります。「自分の想像が実際と違っていたらどうしよう」と思う人もいるかもしれません。しかし、きちんと自分の考えを伝えることで、「一生懸命考えて、伝えてくれた」と相手は感じるでしょう。
また想像と違ったとしても、「いえ、そうではなく・・・」といったように、会話を深めるきっかけになるのです。ぜひ自分で想像した相手の気持ちを、臆せずに相手に伝えてみましょう。
続いて、「自己一致」についてお伝えします。
「自己一致」とは、相手に対しても、自分に対しても真摯な態度で、真意を確認することをいいます。わからないことをそのままにしておかないことが重要です。
具体的には、「聞き返すスキル」を持つことを意識しましょう。
1.「いまのところがわからなかったから、私の理解のためにもう少し教えてください」
2.「●●さんの状況をしっかりわかっておきたい」
*「どういうこと?」「説明して」「全然わからない」といった言葉には注意しましょう。(十分に関係が築けている場合は問題ないこともあります)
3.「沈黙」も一つの情報と捉える。「黙りたい状況になることがあるのかな」と思う
わかろうとしている気持ちが相手に伝わることで、相手が安心し、真剣に話すことができます。かつ、自分自身も相手側を理解することに繋がるので、良い循環が生まれていきます。
まとめ
いかがでしたか?
上記でご紹介した3つのスキルが相互作用を起こすことで、「傾聴力」の向上が期待できます。
どれか1つではなく3つのスキルを利用するイメージを持ちましょう。ただ、いきなりすべてを実践することは難しいかもしれません。そのようなときは「無条件の肯定的関心」から始めるのが良いでしょう。
そうはいっても「傾聴力」はすぐに会得できるものではありません。また、相手との関係性構築にも時間がかかります。「傾聴力」を利用しながら、相手との関係構築に時間を使う見通しを持つことも大切です。
そしてぜひお伝えしたい重要なことは、管理職が抱え過ぎないことです。
関係構築が進むにつれて、相手もさまざまな悩みを打ち明けるようになるかもしれません。しかし、管理職がすべてを解決する必要はありません。困難なケースと判断した場合は、専門家につなぐことを思い出していただきたいと思います。