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本質的な健康経営を推進するために本当に必要な取り組みとは?(後編)

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「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

ここ数年で「健康経営」という言葉が浸透し、従来の従業員の健康管理から経営の枠組みの中で積極的に取り組みを進める企業が急速に増えています。その取り組みの外部評価制度として、「健康経営銘柄」や「健康経営優良法人」などがあり、多くの企業は、その評価取得を一つの目標に掲げているのではないでしょうか。

本記事は、5月27日に当社が実施した「健康経営優良法人2022 対策セミナー 本質的な健康経営の推進へ」の内容(一部)を編集してお届けします。

前編はこちら 本質的な健康経営を推進するために本当に必要な取り組みとは?(前編)

後編となる今回は、健康経営を推進していくうえでのポイントをお伝えします。
施策を実行していくうえでよく挙げられる課題、そしてその解決策についてご紹介します。

フレームワークに基づいた健康経営推進のステップ


健康経営を推進するにあたり、以下のステップが一例となります。

Step1
経営陣が健康経営の重要性を認識する
Step2
社内外に健康経営推進方針を発信する
Step3
推進チームを設置し、組織体制を整える
Step4
現状把握をもとに目標・計画を策定する
Step5
施策を実施する
Step6
施策を振り返り、今後に向けて軌道修正を行う
(以降、Step1に戻りPDCAサイクルを回していく)

健康経営推進ステップ例に関するフローチャート

このようなステップを踏み、PDCAサイクルを回していくことが理想ですが、現実はすべてがスムーズに進むとは限りません。なかでも企業のご担当者から良く聞かれる課題は「従業員の意識醸成」、「効果検証サイクルの構築」です。

健康経営を推進するにあたり、従業員にどのように周知を行うべきか、協力を得るためにはどのようにしたら良いのか。また、どのように効果検証のサイクルを構築すべきか。
多くの企業が抱えやすいこのような悩みについて、対策すべきポイントを解説します。

意識醸成のポイントとは

①推進しやすい組織体制をつくる
健康経営を推進するためには、多くの協力者が必要です。

健康経営推進体制の例に関するイメージ図

さまざまな組織と連携するなかで、誰が、どのタイミングで関与することが成果を出すために重要なのかを踏まえて検討することが重要です。まず組織体制を構築するうえでは、経営トップの発信が欠かせません。経営トップが理解を示し、旗振りをすれば、その後の連携もスムーズになることが期待できます。

さらに、従業員から意見を吸い上げる場・機会も設けておくことも重要です。図のように、複数のチャネルからメッセージを送ることが健康経営の意識醸成を行うためには重要と考えます。勿論、一方的に発信を受けるだけでは従業員の意識を高めることは難しいので、双方向的なやり取りを通じて、参加意識を醸成することが大切です。

②粘り強く施策を実施する
いざ施策を実施しても従業員の参加率が伸びない、なかなか定着しないと頭を抱えるご担当者もいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし最初からうまくいくものではない、という前提に立ち、粘り強く施策を行っていくことが重要です。毎月何かしらの施策を行うなど、何度も行うことで徐々に定着していく側面もあります。そうはいっても、従業員に参加を押し付けることは良いとはいえません。

例えばいくつかのテーマを提示して関心のあるテーマに参加してもらう、といったことから始めても良いでしょう。食事や運動など、従業員個人の関心のテーマに合わせてイベントに参加できる仕組みづくりは意識醸成のためにも重要な観点です。

社内風土に健康経営の考えが根付くまでは、頻度を高く施策を実施するとともに、情報発信をこまめに行うことが重要です。

③社内で浸透している仕組みと連動させて推進する
すでに社内でPDCAサイクルが確立している取り組みはないでしょうか。うまくいっている既存のマネジメントシステムに健康経営施策を組み込んで展開していくアプローチも検討してみてください。

既存システムの年間計画に健康経営施策も組み込むことで、実行意識が高まったり、施策に取り組むきっかけが作れたりすることが期待できます。また最近ではSDGsの取り組みを推進する企業も増えています。SDGsには健康経営と関連の深い目標もあるため、取り組みの連動を図ることも一つの方法です。

効果検証のポイントとは

続いて、効果検証についてお伝えします。
健康経営の認定制度においては、効果検証に対する評価のウエイトが高くなっています。つまり、実行した施策の多さよりも、実行した施策の効果の振り返りに重点が置かれているのです。

健康経営の効果検証を進めるうえでは、部署をまたがったデータ連携が求められるケースも発生します。例えば、健保が所有する健康診断に関するデータとの連携等が考えられます。まずは自社において、どのような健康課題があるか、メンタルヘルスやフィジカルヘルスのデータを幅広く収集して把握することが必要です。

そして、集計した結果から、どのように施策を行うべきか検討していきます。その際のアプローチ方法は大きく分けて、以下の二つの方向性があります。

・ポピュレーションアプローチ:全従業員に対して一律に実施するもの
・ハイリスクアプローチ:リスクが高い特定の層に対して個別の施策を実施するもの

例えば、集計結果から若手の食生活が課題であることがわかった場合は、具体的な食生活改善の施策を実行することができます。逆に、年齢に限らず一律の健康課題がうかがえる場合は全社主導のポピュレーションアプローチが求められます。このように、統合的にデータを集計し分析することで、より適切なアプローチが可能となるのです。

調査票の設問を活用して課題整理

健康経営度調査票には、自由記述にて施策の効果検証結果を問う設問[健康経営施策に関する効果検証]があります。この設問では、以下の項目において自由記述による説明が求められています。

・「課題とその根拠」:どのような健康課題があるか、その課題にはどのような背景があるのか
・「対応する施策の実施結果」:その課題に対して実施した施策の結果はどうだったのか
・「効果検証結果」:具体的な効果検証の結果

この設問に回答することによって、健康課題の認識から施策の実施、そして効果検証に至るまでの一連のプロセスを整理することができるため、健康課題の整理を進めるうえで大いに役立ちます。回答する際は、課題の強い対象層や施策効果を出したい対象層を明確にイメージしながら整理するのが良いでしょう。

外部開示を見据えてアウトカム指標を集計

各種健康施策に参加する従業員のなかには、施策を実施した後どのような結果になったのか、と気になる人も多いのではないでしょうか。従業員の意識醸成、参加率を維持・向上させるうえでも、効果検証の内容を広く開示していくことが重要です。

経済産業省の調査によると、「対外的に結果を開示できていない」という回答がまだ多いのが現状です。プレゼンティーイズムの調査やエンゲージメント調査など、効果検証にあたり従業員向けの調査が増えてしまったり重複してしまったりするという懸念が挙がる場合は、ストレスチェック等に組み込み、一括で実施する方法をおすすめします。

同時期に行うことでデータ連携や集計・開示もしやすくなります。

戦略マップを作成

今年の3月、経済産業省から「健康投資管理会計実践ハンドブック」が公開されました。
「企業等における健康経営の取組をさらに促進することを目的」に作られたものです。

これをもとに、健康経営戦略をストーリーとして経営者や従業員、外部のステークホルダーに対して語るために整理するのもおすすめです。戦略マップとして「見える化」することで、今はどの段階にいるのか、何を目指して施策を行っているのかを確認できるだけでなく、対外的にも説明しやすくなることがメリットです。

まとめ

以上、従業員の意識醸成と、効果検証に関するポイントをお伝えしました。社内風土に健康経営の考えが根付くまでには時間がかかるものです。最初は各施策の認知度、参加率が悪くとも、頻度を高く施策を実施し、情報発信することが重要です。

従業員への健康経営の理解を高めていくためにも、定量的な指標で外部への成果開示を行うことも求められていくでしょう。

株式会社アドバンテッジリスクマネジメント
組織ソリューション部 コンサルタント

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【筆者プロフィール】

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部
導入企業数3,140社/利用者数483万人のサービス提供実績と、健康経営銘柄に3年連続で選定されたアドバンテッジリスクマネジメントの知見から、人事領域で関心が高いテーマを取り上げ、押さえるべきポイントやつまずきやすい課題を整理。人事担当者や産業保健スタッフの“欲しい”情報から、心身のヘルスケアや組織開発、自己啓発など従業員向けの情報まで、幅広くラインアップ。「ウェルビーイングに働く」ためのトピックスをお届けします。

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