コロナ禍において在宅勤務が急速に拡大し、自分の仕事に専念・集中できる環境を確保できるようになった一方で、対面のコミュニケーションが減ってしまったことはデメリットといえるでしょう。これは在宅勤務に限ったことではなく、世の中全体で対面での接点が減り、仲間との繋がりを持つ機会が大幅に失われてしまいました。
周りからのフォローや動機づけも難しくなっているなか、「自分はなんのために働いているのか」「今の仕事は自分にとってどんな意味があるのか」と価値観や目的意識が揺らぎがちないま、エンゲージメント低下や離職を招き生産性低下につながるリスクがあります。
ニューノーマルな働き方においては、従業員自身がこの状況を理解して受け入れ、自ら声を上げてサポートを求め、かつ自分自身で動機づけるといった自律性が求められるといえるでしょう。
以前、Withコロナ時代に求められる「自律型人材」とは?【ストレス耐性編】にて、自分の仕事に専念・集中できる環境を自ら創りだす「自律型人材」を育成するために必要なポイントとして、「ストレス耐性」にフォーカスしてお伝えしました。本記事では、もう一つのポイントである「コミュニケーション能力」についてご紹介します。
※本記事は、7月21日に当社が実施した「Withコロナ時代に求められる「自律型人材」を適性検査から見極めるウェビナー ~コミュニケーション能力編~」の内容(一部)を編集しています。
目次
Withコロナ時代に求められる「自律型人材」を見極めるために
ここで、改めて「自律型人材」の定義について考えてみましょう。Withコロナ、Afterコロナ時代においては、「自ら考え、主体的に仕事を進められる」「自らの役割を理解し、率先して目標達成に取り組む」ことに加え、
・うまく気持ちを切り替えながら高いモチベーションを維持する力
・必要なコミュニケーションを見極めて行動に移す力
が備わっていることが重要といえるのではないでしょうか。
それでは、どのようにその要素が備わる人材を見極めていくべきなのでしょうか。採用時に「コミュニケーション力が高いな」と評価して採用した人物が、周囲が想定していないような対応をする、なんだか打っても響かない…といったギャップを感じたことはありませんか。
それは、そもそも面接というものは“特殊な”コミュニケーションの場だからです。自分の人生を左右する重要な場面であり、多くの候補者が「自分を良く見せたい」という思いで臨むでしょう。普段のコミュニケーションと異なるのは当然のことです。
それに加え、面接官によって“好ましい”と感じるコミュニケーションが異なり、明確な判断基準がないことも課題です。また、性格検査やコンピテンシーだけで判定していないでしょうか?性格検査は自己申告であり、候補者は、その企業が好みそうな性格傾向で回答しているケースも考えられます。環境や相手が変わったときに果たしてその能力を発揮できるのか、判断がつきにくいのです。これらの課題を解決するためには、判断基準を持って定量的に評価すること、コミュニケーションを「能力」としてみていくことが必要といえます。
面接官による判断のバラつきを減らすために
「構造化面接」という手法をご存知でしょうか。構造化面接とは「同じ職務に応募している応募者に同じ面接手法を使って評価する」面接で、同じ質問をし、同じ尺度で回答を採点し、事前に決められた一貫した採用要件に基づいて採用を決定するものです。
大手グローバル企業で取り入れられている手法ですが、まだ広く浸透しているとはいえません。その背景には、質問を作成するのが難しいこと、時代に合わせて質問を絶えず更新する必要があることだけではなく、面接担当者が自信を持っていることも考えられるかもしれません。
ベテラン面接官であれば、長年の経験から感じ取れることもあるでしょう。しかし、ここで気を付けたいポイントがあります。実は、初対面の相手に対してとっさに下す無意識の判断は、自分の中にある無意識の偏見や信念に強く影響される、という調査結果があります。これは心理学用語で「確証バイアス」と呼ばれます。
面接に置き換えると、面接官が感じた応募者の第一印象が正しいと確認できる証拠探しに意識が切り替わってしまい、「こういう返答をするはず」と良い方向に寄せていってしまうのです。「構造化面接」は、面接官から確証バイアスを取り除く、つまり人によるばらつきをなくし、応募者のパフォーマンスを予測できる面接手法の一つといえます。
構造化面接を実施するうえでのポイント
それでは、構造化面接を実施するために意識すべきポイントをお伝えします。
ポイント1:「想定質問」と「誘導質問」を避ける
「想定質問」とは、候補者が事前に準備できる質問のことです。志望理由や、入社後にやりたいことなどは事前に回答を準備できてしまうため、面接での言動は取り繕ったものになりがちです。よって、真の姿を評価することは難しいといえます。
「誘導質問」とは、企業側が期待している答えが伝わる質問のことです。「苦手な人とも会話をするタイプですか」や「嫌なことがあったら引きずってしまう方ですか」といった内容です。こうした質問は、企業側の評価軸が暗に伝わり、受かりたい気持ちがある候補者は本音とは異なる回答をしがちであるため、本音が見えず見極めが困難です。
想定質問も誘導質問も意図があって行う分には問題はありませんが、逆に明確な意図がなければ注意が必要です。細かなルールを設けず面接官が自由に面接を行う場合は、想定質問や誘導質問をしてしまいがちなため、構造化面接で公平に候補者を見極めることが望ましいでしょう。
ポイント2:「行動」にフォーカスした質問をする
行動は、その人の資質や性格から生まれるもので、行動を分析すれば、その背後に隠れている真の能力や志向性、誠実さを測ることができます。候補者の過去の行動を掘り下げる質問を投げかけていく面接を「行動面接」、面接官側で設定した架空の状況に対して、どのように考え、行動するのかを答えてもらう面接を「状況面接」といいます。
これらの面接を行うにあたり、見極めるステップがあります。
・当時の状況(Situation)
・そのとき抱えていた課題(Task)
・どのような行動(Action)をとり
・どのような成果(Result)が出たのか
これらの頭文字を取って「STAR」面接と呼ばれることがあります。
STAR面接のポイント
例を挙げて見てみましょう。
以下は、コミュニケーション全般を測る質問例です。
「新しい人間関係を作ったエピソードを教えてください」
S:状況
・相手はどのような人ですか
・最初はどのような関係性でしたか
・関係性ができたと感じたのはどのような状況でしたか
【チェックポイント】関係性を一方的に捉えていないか
T:課題
・なぜその人と関係を築く必要があったのですか
・関係構築のためには何が必要だと考えましたか
【チェックポイント】要因を分析できているか
A:行動
・あなたはどのようなことを行いましたか
【チェックポイント】主体的に行動しているか
R:成果
・関係構築において何が決め手になったと思いますか
・その人とは今どのような関係ですか
【チェックポイント】関係構築の方法にクセや偏りはないか、継続性のある関係になっているか
以下は、気持ちの切り替え&行動への発揮を測る質問例です。
「苦手だな/やりたくないな」と感じることに挑戦した経験について教えてください。
S:状況
・苦手/やりたくないと感じるのはどんなことでしたか
・その時のあなたはどんな状況でしたか
【チェックポイント】自分にとって苦手なシチュエーションを理解しているか
T:課題
・なぜ苦手/やりたくないと感じたのですか
【チェックポイント】要因を分析し捉えられているか
A:行動
・その状況であなたはどのようなことを行いましたか
【チェックポイント】要因解消につながる妥当な行動か、前向きに行動できているか
R:成果
・やってみた結果はどうでしたか
・苦手なことに挑戦できたのはなぜだと思いますか
・苦手なことについて今はどう感じていますか
【チェックポイント】今後も苦手なことについて前向きに挑戦できそうか
ポイント3:構造化面接だけでなく、いくつかの手法を組み合わせる
構造化面接は候補者の能力を客観的に見極める手法の一つであって、絶対的なものではありません。実際の選考は他の方法も織り交ぜて多角的に行うほうが望ましいでしょう。また、採用面接の目的は、候補者の能力を見極めるだけではありません。
面接ですぐに相手が優秀だとわかった場合は、見極めのための質問を早々に切り上げて、自社で働く動機づけを行う方が有益な時間となります。面接はあくまでも、「候補者一人一人に寄り添って柔軟に行うこと」が前提です。
コロナ禍がもたらした適性検査の重要性の変化
こうした面接手法はありながら、昨今増えているオンライン面接では、候補者と目を合わせにくく、基本的に胸から上の姿しか見えないため、表情の変化や反応や画面外での仕草など、ノンバーバルコミュニケーションから感じ取れていた部分が見えづらくなっています。こうした環境から、適性検査の重要性にも変化が生じています。
例えば、面接回数が減少したことにより、優秀な学生を面接前に適性検査でスクリーニングする必要が出てきたり、オンラインで見極めることの難しい人物像を把握するために適性検査の結果を重視するようになったり、環境変化に耐えうるストレス耐性があるか見極める必要が出てきたり・・・これまでの適性検査が本当に適切なのか、見直す必要性を感じているケースが増えてきているのではないでしょうか。
ここまで構造化面接の手法をご紹介してきました。その面接によって捉えた候補者のコミュニケーション力を客観的指標から定量的に評価できることが望ましいといえますが、コミュニケーション力を正確に評価するためには、性格検査ではなく“能力”として見極められる検査を用いることが効果的です。
「EQ」能力を見るべき理由とは
皆さんは感情マネジメント力「EQ」についてご存知でしょうか。EQは、知能指数のIQと対比して、「こころの知能指数」ともいわれます。
ここで、あるシーンをイメージしていただきましょう。あなたはやる気満々の営業商談中です。そんなとき、お客様が腕時計をチラッと見ました。それを見て、何を感じ取りますか?きっと「時間がないのかな?忙しいのかな?」と感じるのではないでしょうか。
そして相手に「お時間は大丈夫でしょうか?」と尋ねて、様子を伺うでしょう。お客様の気持ちやその場の状況を感じ取り、言動や行動を調整していること、これがEQを瞬時に発揮した行動です。
お客様が時間を気にするという行動の背景には、「次のアポイントや会議など、何かが気になる」、あるいは「商談、提案内容に興味がない」など色々考えられるでしょう。しかしEQが低い人は、それらを感じ取ることが難しく、相手の状況は考えずに「営業したい!」という自分の気持ちを優先して、しゃべり続けてしまうのです。
結果、お客様に「気持ちのわからない人だな…」と思われてしまい、信頼関係も築けず商談もうまくいかない・・・といった残念な結果になりかねません。このように、EQは普段私たちが無意識に使っているものであり、社会生活で良好な人間関係を築くうえで不可欠なコミュニケーション能力であることがわかると思います。
実は、IQが高い人が仕事における成果を出す人とは限らず、むしろEQが高い人こそ仕事で成果を出せる人であることがわかっています。
EQが高い人は自分の気持ちもコントロールできる
EQの高い人は、感情に揺さぶられることなく、成果につながるための最適な感情を生み出すとともに、相手の気持ちを理解し、その場にふさわしい行動を取ることができます。相手の気持ちや周囲の状況を読み取るだけでなく、自分の気持ちをコントロールしながら、知識、スキルを活用することができるのです。
つまり、他者とのコミュニケーションに加え、自分自身の気持ちを切り替えながら高いモチベーションを維持するスキルが高い人材とも言い換えられます。Withコロナ時代に求められる自律型人材を見極めるためには、EQがカギといえるのではないでしょうか。
まとめ
EQは、“能力”として測ることができます。また誰でも備わっているものであり、磨き高めることが可能です。候補者のEQを客観的指標から定量的に評価できる適性検査であれば、採用面接の質も向上し、さらにはその結果を活かし入社後に活躍できる可能性を引き上げることもできるでしょう。
Withコロナ時代に求められる自律型人材を見極めるために、コミュニケーション“能力”を測ることができる適性検査を検討してみてはいかがでしょうか。