データ化された社員の健康データ

健康経営銘柄に選定された企業の取り組みとは~明電舎の事例~【後編】

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「アドバンテッジJOURNAL」編集部

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ここ数年で「健康経営」という言葉が浸透し、従来の従業員の健康管理から経営の枠組みの中で積極的に取り組みを進める企業が急速に増えています。その取り組みの外部評価制度の一つとして、「健康経営銘柄」があります。健康経営銘柄に選定された企業はどのような取り組みを行っているのでしょうか。

本記事では、「健康経営銘柄2021」に選定された株式会社明電舎様が登壇された当社のセミナー(7月27日開催)内容を編集し、同社のお取り組み事例についてご紹介します。
(株式会社明電舎 生産統括本部 安全衛生管理部 安全衛生統括課 酒井様にご登壇いただきました)

前編では、明電舎の健康経営に取り組む背景や目的、体制づくりについてお伝えしました。後編では、その後の施策検討、具体的なお取り組み内容についてご紹介します。

現状とあるべき姿のギャップの把握・分析

体制整備のあとは、経済産業省が開示している健康経営度調査のデータと、自社の現状とのギャップをチェックし、実施できていない部分を確認していきました。その際、全体の充足度を把握しながら、やるべきことに集中できるよう、優先順位付けを行いました。

全体傾向から実施する内容を決めた後は、個別の健康課題の把握です。健康保険組合から提供されたデータから、明電舎では、他健保と比較し男性社員の全年代で肥満傾向が高いことが課題であることがわかりました。特定保健指導対象者率割合が高いだけでなく、増加の一途を辿っている状況だったため、早急に対策が必要だと判断したのです。

計画の策定と実行

こうして把握できた課題から、どのような手段で対策をすべきか検討していきました。検討段階である最初は、とにかく色々な案を出すよう意識しました。そのうえで、コストや実現性を吟味しながら絞っていきます。最終的なアウトカム目標と照らし合わせながら、何が具体的な手段として適切か、いったりきたりして悩みながら検討を続けていきます。

施策の導入に際し、効果検証がされているか、論文が発表されているかなど確認し、エビデンスがあるものを取り入れていくこともポイントです。また、課題と施策の全体像を整理する上で、経済産業省が発行する「健康投資管理会計ガイドライン」に示される “戦略マップ” を活用しました。(参考:健康投資管理会計ガイドライン「実践ハンドブック」

健康投資における各指標が、最終的に解決したい経営課題に結び付くことをストーリーとして示しています。

ここで、明電舎が実施した具体的な施策を少しご紹介します。
まずは社員教育です。

健康手帳の発行手順とポスター画像

なるべく多くの社員の目につくよう啓発ポスターを掲示したり、小さく折りたたんで携帯できる健康手帳を作成し配布したりしました。また、保健師により、運動や食事、睡眠などに関する情報発信も行いました。ここで意識したのは、言葉の認識合わせです。

「プレゼンティーイズム」や「アブセンティーイズム」など、担当者がなにげなく使っている用語も、一般の社員にとっては聞きなれないものです。急にプレゼンティーイズム調査の案内を出しても理解が追い付きません。専門用語などなじみのない言葉や考え方などを解説する資料を作成し、eラーニングを実施しました。

社内におけるものさしを揃えることを意識して、丁寧な解説を心がけています。また、スマホアプリのチャットを活用した管理栄養士による特定保健指導も実施しています。頻度の高いコミュニケーションを行い、無理なく体重減少を目指していくもので、参加しやすいプログラムとなるように工夫をしています。

個別の健康課題/全体の評価・改善

工夫の結果、オンライン健康指導の途中脱落者は少なく、継続率は90%を超えました。また体重減少や腹囲減少などきちんと結果に表れているだけでなく、「体重が減っていくことが楽しい」という気持ちが生まれ、食生活の意識変化や行動変容に繋がっていることが、その後のアンケートからわかっています。

さらには、アウトカム指標として定めるプレゼンティーイズム改善の効果にも繋がりました。その他の施策についても、アウトカム・アウトプット指標を並べて経年で比較を行います。

人間は機械とは異なり、思うようにはいかないものです。良かった施策は維持向上、そうでなければ改善のための対策を考えるなど、試行錯誤を重ねることが大切です。同社ではワークエンゲージメント、アブセンティーイズム、プレゼンティーイズムなどの指標を経年でトレースしていますが、評価・改善を行っていくためには定量的に把握できる指標が必要といえます。

同社が「健康経営」の発信を始めてから、ポジティブ・ネガティブ面も含めて反応が返ってくるようになりました。これまで反応すらなかったことを踏まえると、関心が高まっていることであり、努力の積み重ねといえるでしょう。また、「自分だけでなく、周りにも発信していこう」という変化も見られています。

健康経営の目指す姿でもある「社会全体を健康に」の動きにつながる良い傾向といえます。

今後の展望

健康経営は単なる健康管理の強化、という意味合いにはとどまりません。業績にインパクトを与えるような戦略的なものとして求められ、ますます可能性が広がっていくものと同社は考えています。最初は投資に対するリターンが間接的にしか示せないことも多く、もったいないと感じることもあるでしょう。

今後は、健康経営のサービスを提供する会社も、そしてサービスを導入する会社も、投資に対するリターンを示せるよう、考えていくべきです。ご担当の酒井様は、「経営の何に繋がっていくのか、その相関を意識しながら進めていくことで、担当者としてのやりがいも一層見いだせる」と、これからについて語られていました。

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【筆者プロフィール】

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部
導入企業数3,140社/利用者数483万人のサービス提供実績と、健康経営銘柄に3年連続で選定されたアドバンテッジリスクマネジメントの知見から、人事領域で関心が高いテーマを取り上げ、押さえるべきポイントやつまずきやすい課題を整理。人事担当者や産業保健スタッフの“欲しい”情報から、心身のヘルスケアや組織開発、自己啓発など従業員向けの情報まで、幅広くラインアップ。「ウェルビーイングに働く」ためのトピックスをお届けします。

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