VUCAと呼ばれる変化の激しい時代になり、キャリア観は大きく変わってきています。個々に応じたキャリア形成のサポートをすることは、今や企業の課題の一つです。アドバンテッジリスクマネジメントでは「組織内キャリアカウンセリング」をテーマに、自社でも有効にお使いいただけるような情報を前編後編に分けてお伝えしています。
前編では、キャリアカウンセリングの概要や具体的な進め方、その効果、あわせてエンゲージメントについて解説しました。後編ではキャリアカウンセリングの実例を2つご紹介いたします。
※前編はこちら
※この記事は、8月31日に当社が実施した「意外と知らない?『キャリアカウンセリング』」の内容を編集して配信しています。
目次
行動変容を促すキャリアカウンセリングを実施
具体的な事例に入る前に、当社が行っているキャリアカウンセリングを説明いたします。基本的な流れは前編でご紹介した通り、キャリアを考える必要性を自覚し、働き方やなりたい自分をイメージし、その上で、目標を設定し行動計画を立て実践します。当社の場合はこれに認知行動療法の理論を掛け合わせ、最終的には行動変容を起こすことを目指します。
カウンセリングは次の5ステップで行います。
ステップ1「前向きな相談行動を賞賛」
相談者がキャリアを考え、実際に相談をしたこと、その行動を起こせたことを賞賛します。
ステップ2「『~したい』、ありたい姿を必ず扱う」
相談者の「こうしたい」、「こうありたい」想いを確認しながら、なぜそれができないのかにも耳を傾けます。相談者と少しずつ信頼関係を築くことがポイントになります。
ステップ3「強み、働きがいを目標に入れる」
相談者本人が自覚している強みに加え、カウンセラーが客観的に感じ取った強みをフィードバックします。その上で、本人が真に達成したことを明らかにします。
ステップ4「挑戦したことを称える」
目標に向かって行動することはこれまでの習慣を変えることになります。不安や葛藤を抱えながらの挑戦になることも多いので、仮に失敗しても一歩を踏み出しことを称えます。
ステップ5「挑戦&変化の好循環を意識化し称える」
挑戦し自分自身が変化することで、周りも変わり、好循環が生まれます。自分自身だけでなく周りの変化も見つけ、その喜びを共有。好循環が継続するようフォローします。
【事例1】社内情報の収集と自分自身への理解を促し、モチベーションアップにつなげる
■入社2年目/20代後半/男性
■相談内容:転職を考えている。
▼ステップ1 「前向きな相談行動を賞賛」
最初に、なぜ転職を考えているのかを丁寧に聞きました。すると、現在は契約社員として勤務しているが、転職して正社員になり収入をアップさせようとしていることがわかりました。今の会社にいては正社員になれる見込みがないとのこと。カウンセラーは一旦気持ちを受け止め、その上で社内の登用制度について徐々に話題を向けていきました。
▼ステップ2 「『~したい』、ありたい姿を必ず扱う」
相談者は正社員登用制度について存在は知っているものの、具体的な中身はわからないと回答。社内の情報不足は若手の方に多く見られる傾向です。そこで、詳しく調べるよう働きかけました。その結果、正社員への登用ルートがあることが判明。
相談者は正社員になると営業への異動があるかもしれないと不安を抱えていましたが、そうしたこともないとわかりました。ただ、これで完全に不安がなくなるわけではありません。20代半ばから後半は、発達心理学の観点から自我の同一性、つまり、自分自身への理解を深めていく段階にあるとされます。
実際、相談者は自身の進路に一貫性がないことなどに不安を抱えていました。
▼ステップ3 「強み、働きがいを目標に入れる」
自分への理解を深めるため、性格検査、職業興味検査などを実施しました。これは若手の方に向けたカウンセリングの特徴で、中堅やベテランの方にはあまり行いません。社会人になって自分自身の成長などを振り返ることはあまりないため、若手の方はとても喜びます。
ここでカウンセラーは「変化に強い土台作り」を意識します。不安・葛藤の軽減、自己承認、成功するイメージを持ってもらいます。
▼ステップ4 「挑戦したことを称える」
目標に沿った行動に落とし込みます。中期的・長期的な目標、ここ1カ月くらいでチャレンジしたい目標を、カウンセラーと一緒に作りました。具体的には、正社員の仕事の手伝い、上司との1on1の実施などです。この時、カウンセラーは挑戦の気持ちを尊重すると共に、相談者の挑戦が失敗した時にその気持ちを受け止める準備をします。
▼ステップ5 「挑戦&変化の好循環を意識化し称える」
新たな気づきを得る段階です。相談者は実際に正社員の仕事を手伝うことで、仕事と会社の関係を把握できるようになり、会社全体が見えてきました。また、他部署との関わりにも知見を得ることができ、自分の仕事の影響範囲が捉えられるようになったようです。仕事が楽しいというポジティブな感情がわき、自発的行動も増えました。
転職を考えている社員に職業興味検査などを行いキャリアカウンセリングすることに抵抗を覚える人がいるかもしれません。しかし、カウンセリングは基本的に社内でのキャリア構築を目指しています。自分自身への理解を深めることで、社内でのキャリア形成の土台作りができます。
入社後、自分がどれだけ成長できたか確認することにもなります。特に迷いを抱えている社員には有効で、エンゲージメントの向上につながることが多いのです。
【事例2】専門職への転換を視野に入れ、キャリアと家庭の両立を支援
■入社10年/30代後半/女性(育児中)
■相談内容:キャリアを諦めるしかないのか。
▼ステップ1 「前向きな相談行動を賞賛」
相談者のこれまでのキャリアビジョンはマネージャータイトルを勝ち取ることでした。ところが、産休・育休を取得後、仕事がうまくいかず、プロジェクトからも外されてしまいました。モチベーションが低下し、諦めの気持ちが先行。キャリアと育児、両方にエネルギーを注ぎ込んでおり、つぶれかかっている状態でした。
▼ステップ2 「『~したい』、ありたい姿を必ず扱う」
キャリアとライフスタイル、両軸での「なりたいイメージ」を確認します。キャリアビジョンは明確にあったものの、家庭や育児については確立されておらず、ライフスタイルの自己イメージの再構築も促しました。
キャリアで目指していたのは年収アップで、そのためにもマネージャータイトルの獲得は欠かせませんでした。一方で、専門職の道があることも知っていましたが、これまでのキャリアから方向転換をすることに抵抗が生じていました。
▼ステップ3 「強み、働きがいを目標に入れる」
キャリアビジョンの再構築を試みます。まずは社内で専門職に就いている方に話を聞くことにしました。専門職の方とはこれまで接点がなかったのですが、同期や同年代、同じような境遇、悩みを抱えていた方が多くいることを知ります。さらに、年収アップと子育てを両立させることができるとわかり、キャリアチャレンジの決定をしました。
▼ステップ4 「挑戦したことを称える」
専門職にキャリアチェンジをした場合の成功のイメージを共有しました。もともと一線で活躍していた方だったこともあり、自発的に社内のママ友とランチの約束をするなど積極的な行動が起きました。こうした行動を起こせたことについて、カウンセラーは相談者を称えます。
▼ステップ5 「挑戦&変化の好循環を意識化し称える」
社内に相談できる味方ができ、他部署との仕事も前向きに取り組めるようになりました。自信も取り戻し、専門職の道を歩み始めました。
まとめ
転職をしようか考えていた若手社員、キャリアを諦めモチベーションが低下した中堅社員、いずれもカウンセリングを通じ、仕事・自社への気持ちを取り戻したキャリアカウンセリングの実例をご紹介しました。組織内キャリアカウンセリングは基本的に自社でのキャリア形成を目指し、生産性の高い人材育成にまでつなげることができます。
そうはいっても、自社内の人材で対応することが難しいといった企業もあるかもしれません。今回紹介したキャリアカウンセリングは、当社のカウンセリングサービス「アドバンテッジ タフネス カウンセリング」に含まれており、追加料金なしでご利用いただけます。
サービスではメンタルカウンセリングはもちろんのこと、コミュニケーションスキル獲得の支援やラインケアに関する相談、人事へのコンサルティング、ハラスメント窓口対応なども行っています。単に話を聞くだけにとどまらず、生産性の高い人材育成にまでつなげるのが大きな強みです。ぜひお気軽にお問い合わせください。