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アンコンシャス・バイアスの事例とは?~ハラスメント行為者のカウンセリング現場から~

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「アドバンテッジJOURNAL」編集部

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2020年6月に「パワハラ防止法」が施行されました。法施行という社会的な動きがあったことで、パワハラへの意識が高まっている様子がうかがえます。2022年4月には中小企業にも対象が拡大し、ますます関心が高まることでしょう。

しかしながら、パワハラ防止教育を実施していても、「パワハラが改善につながっている実感がない」「行為者にパワハラをしている自覚がない」などと悩まれる企業のご担当者のお声も多く挙がります。行為者となり得る管理職に自覚を持ってもらうためには、どのようなアプローチが必要なのでしょうか。

※本記事は、2021年9月27日に当社が実施したセミナー「パワハラの”根本的原因”を解決する管理職教育とは?」の内容(一部)を編集して配信しています。

前編はこちら

無自覚の偏見「アンコンシャス・バイアス」とは?

アンコンシャス・バイアスとは、先入観や思い込みによって偏った見方をしてしまうことを指します。自分自身では気づかない無意識の偏見であり、特に女性や若者、マイノリティー(少数派)に対して現れやすい現象ですが、身近な場面でもよく見られるものです。

例えば、あなたは「管理職」と聞いたとき、どのようなイメージを抱きますか?性別や見た目、年代はいかがでしょうか。なんとなく、あなたが抱く管理職のイメージが浮かんでくるのではないでしょうか。これこそが、アンコンシャス・バイアスなのです。

この「アンコンシャス・バイアス」という言葉は、ハラスメント問題を説明する際にもよく扱われるため、ネガティブなイメージを持つ方がいらっしゃるかもしれません。しかし、アンコンシャス・バイアス自体が悪いということではありません。

私たちは日々、膨大な量の情報を処理しながら、行動を選択しています。しかし、脳のメモリには限度があります。Aの次はB、Bの次はC、といったように、ある程度の法則を見いだし、パターン化することによって、先を見通すことができ、スピーディーな判断ができるようになるのです。自身の過去の経験や知識、価値観、信念によって形成されるアンコンシャス・バイアスは、物事を大枠で理解することにも役立っています。

そうはいっても、多くの人は、自身のアンコンシャス・バイアスを意識して生活しているわけではありません。まさに「無自覚」であるために、気づかぬうちに相手の尊厳を傷つけてしまう恐れがあります。

自身が持つ偏見を目の前にいる個人にあてはめないことが大切です。まずは、自身を含め、誰もがそれぞれのアンコンシャス・バイアスを持っていることに気づきましょう。

ハラスメント行為者のカウンセリング現場から

アンコンシャス・バイアスが必ずしも悪いものではないとお伝えしましたが、ハラスメントにつながるアンコンシャス・バイアスとはどのようなものなのでしょうか。ハラスメント行為者となった方のカウンセリングを行うと、「べき論」を強く主張する人がいます。

例えば、部下は上司よりも早く出社する必要がある、普通はこうあるべきだ、といったような考えです。「~べきだ」「普通は~」「常識的には~」「当然~」という言葉を聞くことがありますが、本当にそうなのでしょうか。それらは、その人のアンコンシャス・バイアスなのかもしれません。

また、性別に関するアンコンシャス・バイアスもよく見られます。とある管理職の方が、女性社員に対しては仕事の量を抑え、あまり責任を負うことのないよう調整し、男性社員にはチャレンジングな仕事を振っていました。その管理職自身は、うまくバランスをとっていたつもりのようですが、実際には、女性社員は「自分には仕事が任されない、男性だけが経験を積めて、キャリアアップできる」と感じ、男性社員は「自分にばかり重い仕事が振られている」と感じていたようで、それぞれの不満が募っていきました。

この管理職は、「女性はか弱く、男性はタフである」という考えに基づきマネジメントをしていましたが、実はそうではなかったというケースです。これこそがまさにアンコンシャス・バイアスの問題といえるでしょう。自分の考えが誰にも当てはまるものだと思わず、一人ひとりにしっかりと向き合い、個人に合ったマネジメントをすることが求められます。

他のケースも紹介しましょう。ある管理職の方は、部下に対して暴言を吐いていることがハラスメントであると問題になりました。しかし、他のチームの後輩社員にはその素振りもなく、むしろ感じが良い、良識のある行動を取る人だと見えていたようです。

それは、なぜなのでしょうか。その管理職の方には、「他のチームは、自分たちの指示を受けてくれる協力関係にある」「お願いを受け入れてくれる存在である」という考えがありました。逆に身内となる直属の部下には、「上司は部下よりも上の立場だから言うことを聞いて当然だ」「同じチームなのだから、多少厳しくしても良いだろう」という考えがあったのです。

ハラスメント行為者の多くは、相手を苦しめてやろうと思ってやっているわけではなく、当人にハラスメントをしている自覚がないことがハラスメント問題の課題となっています。それにはアンコンシャス・バイアスが絡んでいるといえるでしょう。

すでにお伝えしたように、アンコンシャス・バイアスは誰にもあるものです。しかし、それが時として、感情のコントロールが効かずにハラスメントになっているケースも多くあるのです。ハラスメント行為の背景にある偏った価値観に気づき、理解することがハラスメント防止に向けた第一歩といえるでしょう。

表面の行動だけでなく、その行動を引き起こす感情に注目していくことが大切です。

重要なのは「相手に立場に立ったコミュニケーション」

さて、これまで管理職にフォーカスしてお伝えしてきましたが、ハラスメント問題においては、管理職だけでなく、部下も同様に「相手の立場に立ったコミュニケーション」をすることが重要です。

管理職
・部下に合わせたコミュニケーションを日頃から行う
・部下の感情的なNGラインを知っておく
(相手の立場からNGな事は何か?等を考える)
・相手に合わせて自分の気持ちをコントロールする


部下
・関係性が悪化する前に、早期に相談行動をとる
・自分で抱え込みすぎず解決のための行動をする
・個人攻撃ではなく必要な指導と前向きにとらえてみる
(相手の発言の違う側面を考える)

図 上司と部下のコミュニケーションの注意点

ハラスメント防止教育にはさまざまなものがありますが、研修をしたから終わり、ではなく定期的、かつ継続的にやっていくことが大切です。ハラスメントの基礎知識を得ることも重要ですが、ハラスメント防止につながらなければ意味がありません。

考えや行動を振り返り、行動変容につながる気づきが得られる、体験を重視した研修などの教育機会を検討してはいかがでしょうか。

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【筆者プロフィール】

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部
導入企業数3,140社/利用者数483万人のサービス提供実績と、健康経営銘柄に3年連続で選定されたアドバンテッジリスクマネジメントの知見から、人事領域で関心が高いテーマを取り上げ、押さえるべきポイントやつまずきやすい課題を整理。人事担当者や産業保健スタッフの“欲しい”情報から、心身のヘルスケアや組織開発、自己啓発など従業員向けの情報まで、幅広くラインアップ。「ウェルビーイングに働く」ためのトピックスをお届けします。

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