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働き方が大きく変わった今こそ必要な『企業のメンタルヘルス対策』のポイントとは

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「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

※本記事は、2021年12月8日に当社が実施したセミナー「働き方が大きく変わった今こそ実践!『企業のメンタルヘルス対策』のポイント」の内容(一部)を編集して配信しています。

「メンタルヘルス対策ができている状態」とは

メンタルヘルス対策における取り組みには、一次予防・二次予防・三次予防があります。わかりやすく風邪に例えてみましょう。一次予防とは、風邪をひかないために対策を行うことです。うがいや手洗いなどが当てはまるでしょう。

最近では、アプリで自分の健康状態を把握する人も増えているのではないでしょうか。健康で元気な状態といって良いでしょう。

続いて二次予防は、悪化させないための行動をとることです。早めに寝るなど、軽い不調を察知したときに、早期に対処します。

そして三次予防は、風邪が悪化してしまった状態から元の状態に回復させることです。

まずは不調を発生させないことが大切ですが、発生を完全に防ぐことは難しいといえるでしょう。発生したときに速やかに適切なフォローを行い、悪化させないためにも、一次予防から三次予防まで、すべてを整えた状態が理想形といえます。

また、メンタルヘルス対策において、厚生労働省は以下の「4つのケア」を推奨しています。
1.セルフケア
2.ラインによるケア
3.事業場内産業保健スタッフ等によるケア
4.事業場外資源によるケア

この4つのケアを念頭において施策を進めると効果的です。

参考記事:メンタルヘルスケアの意義と重要性~4つのケアとは?

企業におけるメンタルヘルス対策の実施状況

厚生労働省の「令和2年 労働安全衛生調査」によると、全体事業所の61.4%が「メンタルヘルス対策に取り組んでいる」と回答しました。500名以上1,000名未満の事業所では98.6%、1,000名以上の事業所では98.2%にのぼります。

2015年にストレスチェックの実施が法制化されたことからも、多くの企業(事業所)がメンタルヘルス対策に取り組んでいることがうかがえます。メンタルヘルス対策に取り組む企業は多いものの、課題も挙がります。特に昨今のコロナ禍において、「在宅勤務が常態化し、コミュニケーションをうまくとれない従業員がメンタル不調を訴えるケースが増えている」といったお声をいただくことが増えています。

働き方が大きく変わった今こそ、メンタルヘルス対策を改めて見直すことが必要なのです。

2021年度上期におけるストレスチェック結果より

アドバンテッジリスクマネジメントが2021年上期において企業に実施したストレスチェック結果(*)によると、多くの企業においてストレス反応が悪化していることがわかりました。
*2021年4月1日~8月23日までにチェックを実施した企業・団体

各因子をひも解くと、主な悪化要因の一つとして、従業員の負担感が増していることがうかがえました。会社として、コロナによる業績停滞の巻き返しはもちろんのこと、事業内容・組織構造等の抜本的改革も求められており、仕事量やその難しさが増したことが負担につながっていたことが推察されます。

加えて、上司の業務配慮への不足感、目標設定の不透明感、評価への不満感なども増していました。外部環境や働き方が急激に変化するなかで、日々の業務の進め方はそれらの変化に即時に対応しきれていない可能性があり、組織のマネジメントに納得感を持ちにくい様子が表れているのではないでしょうか。

そして、長引く自粛生活やリモートワークによる生活習慣の乱れ・運動不足等の課題も考えられます。コロナ禍において家庭環境や経済状況なども変化し、プライベートの問題も悪化している結果が見られました。

一方で、キャリアへの配慮に対する実感や、同僚間での関係性が強化されるなど、良い点も見られました。コロナ禍を契機に新たな人事制度が導入され、働き方の多様化への期待感が高まっている様子、そして環境変化のなかで信頼関係が築かれ、助け合えている実感が増している様子がうかがえます。

コロナ禍におけるカウンセリングの相談傾向

ここで、カウンセリングについても傾向を見てみましょう。2020年の上期は「プライベート」の相談が増加傾向にありました。ちょうど最初の緊急事態宣言が発令され、多くの人が戸惑っていた時期といえるでしょう。自宅で過ごす時間も増えたためか、プライベートに関する相談が増えたと考えられます。

その1年後、2021年度の上期は、「メンタルヘルス」や「仕事のストレス」の相談が増加しました。長引くコロナ禍によって、無意識的か意識的かに関わらず、何らかのストレスがかかっていることが特徴として表れています。そのうち、「仕事のストレス」の詳細を見ていくと、「ハラスメント」の相談が増加していることがわかります。

「パワハラ防止法」の施行により、相談窓口の周知を強化するなどの対応が影響している可能性も考えられます。一方、ストレスチェック結果とは傾向が異なり、カウンセリングにおいては「仕事の量や内容について」の相談が減っています。また、対人関係のうち上司に関する相談も減少傾向にありました。

コロナ禍以降初めてカウンセリングを利用した方の初回利用に限定すると、「メンタルヘルス不調」の相談が増加傾向にあり、危機介入も増えています。

アドバンテッジリスクマネジメントでは、カウンセリングを行うことで、タフネス度およびストレス原因の因子の数値が改善されたことが確認できています。カウンセリングによって、物事の捉え方を変え、ストレス耐性を高めていくことは、一次予防の観点だけでなく、ストレスを悪化させない二次予防の観点からも重要といえます。

今こそ実践すべきメンタルヘルス対策のポイント

ここまで、コロナ禍におけるメンタルヘルスの現状についてお伝えしました。では、具体的にどのようなメンタルヘルス対策を行うべきなのでしょうか。冒頭でお伝えした、一次予防から三次予防の観点でポイントを挙げていきます。

一次予防:メンタルヘルス不調の未然防止

そもそも「不調を発生させないこと」が最も重要です。どのルートで従業員全員にケアを届けるかがポイントとなります。従業員に対しては、セルフケアやラインケアに関する教育を行ったり、ストレスチェック結果のフィードバックを行い、状態と打ち手の「見える化」を支援したりすることが考えられます。

また、従業員が相談できる窓口を確保するとともに、発信を強化し、その情報を浸透させていくことも重要です。

メンタルヘルス不調の未然防止する窓口の関係図

二次予防:早期発見と適切な対応

不調を速やかにキャッチし、それらをこぼさず対応できるよう、広く網を張る施策をとりましょう。具体的には、管理職に向けた不調の早期発見・ケアに関する情報提供や、短スパンで行うサーベイやセルフチェックなど、状態の「見える化」の支援が挙げられます。

在宅勤務下では難しさもあることと思いますが、ラインケアは引き続き重要です。勤怠の乱れなどに着目し早期に発見できるとよいでしょう。1on1の仕組みも広がっていますが、仕組み化した上で、スキルの部分としていかに部下の話を聞くか、業務に関わる情報を吸い上げるだけではなくて背景にある気持ちまで寄り添って聞くか、という傾聴力なども今一度見直したい部分です。

また、早めに専門家につなぐことも重要です。ストレスチェック後の医師面接やカウンセリングなどが従業員に使われやすい状況であるか、今一度見直しましょう。

三次予防:職場復帰支援

ここでは「再発させないこと」が要となります。外部リソースも適切に活用しながら、できる部分から着実に行っていきましょう。人事ができる対応として、職場復帰プログラムを整備することが求められます。必要な事業場内産業保健スタッフの確保が難しい場合は、衛生推進者または安全衛生推進者を事業場内メンタルヘルス推進担当に選任するとともに、都道府県産業保健総合支援センターなど、事業場外資源を積極的に活用するのも良いでしょう。

まとめ

働く環境が変わってきた今、改めて「4つのケア」を見直し、それぞれの連携を強化して深めていくことが、より一層重要になっていきます。企業の状況はそれぞれ異なり、それぞれの課題があることでしょう。取り組みを進めていくなかで現状の体制に課題がある場合は、外部資源を活用することも検討してみてはいかがでしょうか。

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【筆者プロフィール】

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部
導入企業数3,140社/利用者数483万人のサービス提供実績と、健康経営銘柄に3年連続で選定されたアドバンテッジリスクマネジメントの知見から、人事領域で関心が高いテーマを取り上げ、押さえるべきポイントやつまずきやすい課題を整理。人事担当者や産業保健スタッフの“欲しい”情報から、心身のヘルスケアや組織開発、自己啓発など従業員向けの情報まで、幅広くラインアップ。「ウェルビーイングに働く」ためのトピックスをお届けします。

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