近年、注目され始めている従業員の「ウェルビーイング(Well-being)」。あらゆる面で満ち足りた状態を意味するウェルビーイングの実現は、採用促進や離職率の低下、生産性アップなどにつながり、ひいては企業価値の向上に寄与する取り組みとして期待されています。
一方で、ウェルビーイングについて「どうすれば実現できるのかわからない」といった課題を抱える企業も多く、従業員や組織に関するデータをうまく活用できていない現状が見受けられます。
この記事では、企業の人事担当者に実施した「ウェルビーイング経営の取り組み状況」に関するアンケート結果をもとに、ウェルビーイングの実情と課題、企業が取り組みたい推進ポイントをご紹介します。
目次
ウェルビーイングはなぜ必要なのか?
近年、ビジネスの世界でも重要視されているウェルビーイング。
ウェルビーイングとは具体的にどういうものなのか、またなぜ必要とされているのか、以下で詳しく解説します。
ウェルビーイングとは?
ウェルビーイングとは、身体的・精神的・社会的にすべて満たされている状態にあることを指す言葉です。
ビジネス環境におけるウェルビーイングは、健康経営を包含したさらに広い概念として捉えられます。従業員が仕事に取り組むうえでの阻害要因が取り除かれ、個人や組織の生産性向上が期待できます。
ウェルビーイングが必要な理由
企業においてウェルビーイングが重要視される背景には、「多様な人々がいきいきと活躍できる社会の実現」があります。ビジネス環境の変化が激しい現代においては、少子高齢化による労働人口の減少が大きな課題となっています。
このような状況下で自社の従業員に長く働いてもらうには、労働への不安や過剰なストレスがなく、一人ひとりが自分らしく能力を発揮できる職場環境であることが不可欠です。
また、近年は「人的資本の開示」や「健康経営における情報開示」といった人材に関わる情報の可視化の動きが出てきています。これにより、開示の前提となるデータ管理の重要性が増すとともに、より良い内容を開示するためにウェルビーイング経営の重要性が高まっているといえます。
ウェルビーイングを経営戦略に取り入れ、良い指標開示が行えれば、対外的な評価につながり、企業価値が向上するのです。こうしたことから、自社の持続的な成長を目指すうえで、「ウェルビーイング」は欠かせないキーワードとなっているのです。
ウェルビーイングに関するアンケートで見えてきた課題と実情
企業成長のカギともいえるウェルビーイングですが、実際のところ企業ではどのように捉えられているのでしょうか。ここでは、ウェルビーイングに関するアンケート結果から見えてきた課題と実情をご紹介します。
質問1 貴社では、「ウェルビーイング」の考え方を経営戦略や人事施策に取り入れていますか? 選択肢より、貴社の現状に最も当てはまるものをお選びください。(単一回答)
ウェルビーイングを「取り入れている」と答えた企業は24%、「検討している/検討したい」を含めると全体の50%以上となりました。特に従業員数1001名以上の大企業において、ウェルビーイングの取り組みが進んでいることがわかります。
一方で、全体の30%がウェルビーイングを「取り入れていない/予定もない」こと、さらに一定数がウェルビーイングについて「把握していない」ことも明らかとなりました。また、企業規模が小さくなるにつれ関心も小さくなっていることが読み取れます。
質問2 ウェルビーイングを追求することは、従業員および組織にどのような影響があると考えますか? 当てはまるものをすべてお選びください。(複数回答)
企業が考える「ウェルビーイングがもたらす影響」で最も多かったのは「エンゲージメントの向上」でした。一方で、「育児・介護の仕事との両立」や「病気や老後などの不安解消」への影響を感じている企業が少ないこともわかりました。
「ウェルビーイング」向上に取り組むことは従業員の心身の健康に配慮することであり、エンゲージメントの向上や離職率の低下につながるという考えを持っている企業は多いものの、まだ家庭と仕事の両立や病気や老後の不安に対して影響があるとは考えられていないようです。
昨今、働き方改革に伴う新しい少子化対策の柱として「育児・介護休業法」が改正され、一部の内容は2022年4月1日よりすでに施行されています。国の動きも相まって、今後は育児と仕事との両立が重視されていくでしょう。
質問3 貴社では、従業員や組織の状態を把握し、活用するための施策に取り組んでいますか?当てはまるものをすべてお選びください。(複数回答)
各種データの管理を実施している企業は半数を超えるものの、その先のデータ分析や課題抽出、施策への反映に至っていない企業が多く、収集したデータや調査結果を活かせていないように見受けられます。ウェルビーイングの実現に向けては、さまざまな取り組みによって得られた情報をどう活用していくかが課題となっているようです。
質問4 従業員や組織に関するデータ管理および活用における課題がありましたらご記入ください。(自由回答)
• それぞれのデータは存在するが、一元管理や状況考察ができていない。
(1001名以上/メーカー/1部上場※)
• さまざまなサーベイを行いその都度分析もするが、せっかくの分析がその後の行動にあまり活かされておらずもったいない。
(1001名以上/情報・通信/1部上場※)
• 今期からパルスサーベイの導入を検討しているが、得られたデータを効果的に活用できるのか自信がない。
(301〜1000名/サービス/株式未公開)
• 経営トップの意識改革・レベルアップが必要。
(300名以下/メーカー/株式未公開)
• 社内アンケート等の導入を提案したいが、予算の兼ね合いで優先度が低く実現に至っていない。
(300名以下/サービス/株式未公開)
※調査時点(2022/3/1〜2022/3/3)での市場区分を掲載
これらのように、従業員や組織に関する情報は持っていても、一元管理ができていないこと、効果的な活用方法がわからないことを課題として挙げる企業が多く見られました。また、ウェルビーイングが経営戦略として捉えられていないために優先度が低く、まずは経営層の意識改革が必要だという声もありました。
ウェルビーイングで組織変革を目指す推進ポイント
先にも述べたように、人的資本の情報開示が本格化する中で、開示の前提となるデータ管理、より良い開示内容とするためのウェルビーイング経営の重要性が増しています。良い情報の開示が行えるようになれば、投資家などのステークホルダーに評価され、企業価値の向上につながります。
企業成長にとって最も重要なのは「人」であることを踏まえ、いち早くウェルビーイングを経営戦略として取り組むことが大切です。
ウェルビーイングで組織変革を目指すには、形だけの取り組みではなく、いかに成果を出せるかが重要なポイントとなります。まずは情報の一元管理と可視化で自社の現状を正確に把握し、その後に課題に応じた施策の実行、効果検証の「PDCAサイクル」を回していくのが効果的です。
従業員のウェルビーイングに繋がる情報を常に把握することで、軌道修正やサポートも容易になるでしょう。
まとめ
ウェルビーイングに関するアンケート調査の結果、5割強がウェルビーイングの考え方を経営戦略や人事戦略に取り入れている、または取り入れる予定があることがわかりました。一方で、収集したデータをうまく活かせていない現状があり、データの分析・活用については課題を抱える企業が多いように見受けられます。
自社の現状と課題を洗い出し、企業価値や生産性の向上、人材確保にもつながるウェルビーイングを実現するためには、専門的知見に基づいた分析・サポートまで対応できる外部サービスの活用がおすすめです。データの一元管理や活用方法に課題を感じている企業は、経営・人事課題を解決に導くサービスの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
【調査概要】
アンケート名称 「ウェルビーイング経営の取り組み状況」に関するアンケート
調査主体 株式会社アドバンテッジリスクマネジメント
調査期間 2022/3/1 ~ 2022/3/3
調査方法 WEBアンケート
調査対象 上場および非上場企業の人事責任者・担当者
有効回答 216件
社数 | 構成比 | メーカー | 非メーカー | |
1001名以上 | 65 | 30% | 37 | 28 |
301~1000名 | 46 | 21% | 15 | 31 |
300名以下 | 105 | 49% | 40 | 65 |
合計 | 216 | 100% | 92 | 124 |
43% | 57% |