4月になり、新卒社員が入社した会社も多いことでしょう。厚生労働省の調査によると、大卒新入社員の就職後3年以内の離職率は3割以上といわれています。採用・教育にかかるコストがかさむだけでなく、他の社員のモチベーションにも影響するため、人材の定着率向上は企業にとって非常に重要なテーマです。
そこで今回は新入社員の“定着”と“活躍”に焦点を当て、効果的な対策をご紹介します。キーワードとなるのは『自律型人材』です。
※本記事は、2022年1月13日に当社が実施したセミナー「適性検査とパルスサーベイを活用した『自律型人材』育成の仕掛けづくり」の内容(一部)を編集して配信しています。
目次
若者はなぜ3年以内に退職してしまうのか
内閣府「平成30年版子供・若者白書」における「特集:就労等に関する若者の意識」(*)によると、以下のように若者の離職理由が挙げられています。
1位「仕事が自分に合わなかったため」43.4%
2位「人間関係がよくなかったため」23.7%
3位「労働時間、休日、休暇の条件がよくなかったため」23.4%
*回答者:インターネット調査会社に登録してあるリサーチモニターである全国の16歳から29歳までの男女(有効回答数10,000)
新卒社員を迎えた企業は、まさに今、研修やOJTを進めていることでしょう。採用時は優秀だと評価していた人材に対し、「あれ、なんだか思っていたタイプと違うな」と感じることはないでしょうか。
また、入社からある程度の期間が経ち、うまく立ち振る舞っているように見えていた新卒社員が突然退職に至ってしまうケースはありませんか。
なぜ、このような事態が起こってしまうのでしょうか。
それは、採用時点での見極め不足と、入社後のフォロー不足です。
また、本人のストレスの受け止め方にも左右されるといえるでしょう。
今の時代に必要な「自律型人材」
「自社に必要な自律型人材とは、どのような人材か」を聞いたアンケートがあります。上位には、「常に自ら考え、主体的に仕事を進めていく人」、「組織の戦略や方針から、自らの役割や課題を考え、率先して目標達成に取り組む人」が挙げられています。
また、「自社の自律型人材に求められる重要な能力・スキル」については、「変化対応力」や「柔軟な思考・柔軟性」、「コミュニケーション力」が上位となっています。ニューノーマルな働き方へとシフトする今、これらはますます重要な能力・スキルとして位置づけられていくでしょう。
コロナ禍、多くの企業において在宅勤務の導入が進みました。在宅勤務のメリットとして多くの人が挙げているのは「自分の仕事に専念・集中できること」です。仕事の効率が上がり、生産性が向上するとともに、ストレス低減にもつながっていることが推測されます。
逆にデメリットとしてはオン・オフの切り替えや気分転換が難しいことではないでしょうか。企業の方からは、「集中しすぎるあまり、際限なく仕事をしてしまう」「場所が変わらないので気分転換が難しい」といったことや、逆に「リラックスしてしまい仕事に取り組む気分になれない」といったお悩みを多く聞きます。
在宅勤務においては、いかに気持ちを切り替えて、モチベーションを維持していくかが課題といえます。そして、こうした状況をうまく対処するためにはメンタル面のマネジメントがカギとなってきます。
当社のデータから、ある企業において、メンタル面に課題が見られる人ほど、在宅勤務によって生産性が低下する傾向にあることがわかりました。メンタル面の課題を解消するには周囲のサポートも重要な緩衝要因となりますが、在宅勤務ではいつも通りにいかない難しさがあるといえるでしょう。
これまでのように出社が当たり前の環境であれば、上司など周囲の人が気づいて声掛けをしたり、即座にケアをできたりしていたものが、そうではなくなっているのです。つまり、従業員自身が主体的にストレスに対処することがより一層求められているのです。
新卒社員の動機づけへの課題
コロナ禍によりテレワークが常態化した結果、仲間とのつながりを持つ機会が大幅に失われてしまった、と感じる人も多いのではないでしょうか。
これは周囲からのメンタルヘルスケアが難しくなっただけではなく、「自分は何のために働いているのか」、「今の仕事は自分にとってどんな意味があるのか」といった価値観や目的意識が揺らぎがちな環境でもあるともいえます。経験不足な新卒社員においてはなおさら、強く感じるのではないでしょうか。
上司や会社など周囲が気づいて即座にフォローすることが難しい環境であるからこそ、従業員自身もこの状況を理解し、自ら声を上げてサポートを求めたり、自分自身で動機づけたりしていくといった自律性がより一層求められているのです。
「自律型人材」とは、自ら考え行動できる人材、自らの役割を判断して行動できる人材、と定義できるかもしれません。それに加えて、「自分の仕事に専念・集中できる環境を“自ら創りだせる”人材」であることが必要だといえます。
「自律型人材」を見極めるために―もっと活用できる!適性検査の選び方
多くの企業で導入されている適性検査。企業ではその役割をどのように捉えていらっしゃるでしょうか。
適性検査の役割は、事前に適性検査で特徴をつかんで効果的な質問をする材料とするだけでなく、誰がみても同じ基準で評価できる軸をもてるものであることが必要です。
例えば、ストレス耐性がありそうだと見極めて採用した人材が、実は自発的に相談できないタイプだった、といったことはありませんか?つまり、面接時と入社後のギャップが生じてしまうパターンです。
また面接官自身の経験に基づいた判断がなされ、評価がバラバラになってしまう懸念があります。ストレス耐性は表面化しにくいだけでなく、明確な判断基準がないことで、入社後の大きなギャップにつながってしまうのです。
一般的な適性検査は、人間の行動のベースである「基本的な資質」について「学力」と「性格」の2領域を測定するものが多くありますが、加えてストレス耐性を見極めることができる適性検査が望ましいでしょう。その際、将来的なリスクだけでなく、現在の状態についても測れることがポイントです。
変化がめまぐるしい社会に対応しながら成果にむかう行動を発揮できる人材を見極めることはもちろん必要ですが、入社後の育成も忘れてはいけません。
実は、ストレス耐性はトレーニングすることで伸ばすことができるのです。入社後、適性検査の結果を本人にフィードバックすることで、自身のストレス耐性・特徴を把握し、自分自身にあった対処方法を身に付けていく動機づけもできます。
新卒社員の定着率向上のために
新卒社員を自律型人材へ育成するためには、適性検査で得た情報をその後のフォローアップにつなげたり、変化しやすい入社後の状態を適切なタイミングで可視化し必要なサポートを行ったりすることが肝心です。
2021年度や2022年度の新卒社員は、コロナ禍の影響を受け、不本意ながら「とりあえず」就職した層もいるでしょう。その就職した会社でも、在宅勤務が中心となり、帰属意識が高まる状況とは言いにくく、ちょっとしたことがきっかけで転職を選ぶことはごく自然なことかもしれません。
業種によっては、来年度に新卒採用を強化する企業もあり、第二新卒をOKとするところもあるようです。それに伴い、就活サイトなどの登録が昨年に比べ大幅に増えているという傾向があります。
人事担当者や管理職が「リモート環境において新卒社員の個性がつかみづらい」、「接点が減り、様子を把握しづらい」と嘆くばかりでは状況は変わりません。帰属意識も高まりにくく、採用環境が改善しているいま、新卒社員の離職リスクが高まっていることを認識しなければいけません。
不調や離職のサインを早期にキャッチする「パルスサーベイ」
昨今、「パルスサーベイ」という言葉を聞く機会も増えてきました。「パルスサーベイ」とは、簡易的な調査を短期間に繰り返し実施する調査手法のことです。
新卒社員は、入社してから短期間にさまざまな環境変化が訪れます。そのそれぞれの変化において新卒社員自身がどのように受け止めているかを調査できるのが「パルスサーベイ」です。短期間で実施することで、その結果に至ったきっかけとなる出来事を推察しやすく、推移を追うことで早期フォローが可能となるのです。
例えば、
• 目標と役割の指示 が適切に行われているか?
• 仕事に対するフィードバック が適切に行われているか?
• 上司・同僚への信頼感 があるかどうか?
• 仕事仲間に ともに働く姿勢 があるかどうか?
• 心理的安全性 があるかどうか?
といった項目を見ていくのが良いでしょう。
このように、新卒社員の不調をいち早くキャッチするために、パルスサーベイの活用が期待できます。せっかく採用した人材を活躍させるためには、状況を定点観測し、何か課題が見られるときにすぐに対策を講じ、フォローする必要があるでしょう。
まとめ
上司や会社など周囲が気づいて即座にフォローすることが難しい環境であるからこそ、
・採用時点でメンタル不調リスクを見極めること
・入社後の状態を追うこと
・若手社員自身のストレス対処スキルを伸ばすこと
が求められます。
お互いのミスマッチを防ぐためにも、採用検査やパルスサーベイを活用してみてはいかがでしょうか。