現代社会ではうつ病など心の病で休職する人が多くなっており、企業側にもメンタルヘルスの知識が求められています。本記事では、うつ病に関する知識や休職する従業員への対応、うつ病などのメンタルヘルス不調による休職を防ぐための対策を紹介します。また、事前に加入しておくと企業にも従業員にもメリットのあるGLTD制度も紹介します。
目次
うつ病とは
うつ病はストレスによって引き起こされる精神疾患で、精神面・身体面・行動面でさまざまな症状があらわれます。ここでは、うつ病がどのような病気なのか説明します。
ストレスによって引き起こされる精神疾患
うつ病は身体的・精神的ストレスなどによって脳の機能が十分に働かなくなる精神疾患です。ストレス以外にも、他の病気や飲んでいる薬の影響などによっても引き起こされることがあります。うつ病発症の原因は未だ完全には明らかになっていませんが、脳の中の感情や思考を司る部分に何かしらの異常が起きていると考えられています。
ネガティブな出来事だけでなく、ポジティブな出来事(昇進や結婚など)も場合によってはストレスになる可能性があるため、環境が変わる際は注意が必要です。
うつ病では精神的・身体的にさまざまな症状が現れる
うつ病の症状は精神面だけでなく、身体面や行動面にも現れます。症状が多岐にわたるため個人差が大きいですが、それぞれの側面における主な症状には以下のようなものがあります。
精神面 | ・自分を責める ・自殺念慮 など |
身体面 | ・表情が暗くなる ・涙もろくなる など |
行動面 | ・遅刻や欠勤が増える ・体力や集中力がなくなり、仕事のパフォーマンスが低下する など |
従業員がうつ病で休職する際、企業側がとるべき手続きと対応
従業員がうつ病によって休職する際は、安心して休職でき、適切な支援が受けられるよう、企業担当者は従業員の気持ちに寄り添いながら対応できるようにしておきましょう。対応手順は以下の通りです。
企業の就業規則を確認する
後にトラブルにならないよう、過去の事例有無にかかわらず最新の就業規則と照らし合わせて、しっかりと対応しましょう。
<就業規則で確認しておくべき項目>
・就業開始事由(休業を認める条件のこと)
・休職期間
・休職期間中の給与
・休職中に従業員が負担する社会保険料について
・休職期間中の従業員と企業との連絡などのやり取りについて
・復職する場合の手続きについて
・復職できない場合の手続きについて
従業員から医師の診断書と休職願を提出してもらう
うつ病などの病気による休職申請の際には、医師が発行する診断書が必要となります。診断書には病名や休職する理由、療養に必要な期間などが記載されます。
休職予定の従業員には、休職開始前に診断書を提出する必要がある旨を伝えましょう。また、診断書と併せて休職願も提出してもらうとトラブルになりにくいです。
傷病手当について説明する
従業員が安心して休養・治療に専念できるようにするためにも、傷病手当金などお金に関する制度を紹介しておきましょう。
休職中は給与が出ないため、従業員は経済的な不安を感じます。そのため多少無理をしてでも働こうとして、うつ病が悪化してしまったり、仕事で思わぬミスをしてしまったりと、トラブルにつながってしまうこともあります。
条件を満たせば健康保険から最長1年半の間に傷病手当金が支給されるので、給与がもらえない場合でも安心して療養できることを伝えましょう。
<傷病手当金の対象となる条件>
・健康保険に1年以上加入している
・病気やケガにより療養が必要と医師に判断された
・連続4日以上、仕事を休んでいる など
また、従業員が対象となっているか、どのくらいの金額が受給できるかなどについても伝えると、安心感につながりやすいでしょう。
休職中の社会保険料の徴収について説明する
従業員は、休職中でも社会保険料の自己負担分を支払う義務があります。多くの企業は、傷病手当金の受け取り先を企業に指定し、社会保険料を差し引いた額を従業員に支払う形式にしています。そうすると、もしも休職後に従業員が退職した場合でも、社会保険料が徴収できないという事態が起こりにくいのです。
また、休職期間中の社会保険料は全額企業が立て替えて支払い、復職後に精算するという形式の企業もあります。自社の就業規則に従うようにしましょう。
従業員がメンタルヘルスの不調を訴えたときの対応法をもっと知りたい人は、こちらも参考にしてください。
従業員が安心できるような声掛けをする
うつ病で休職する従業員は、今後に対する不安や周囲への罪悪感など、様々な思いを抱えています。そんな時に「頑張れ」と無理に励ましたり、「すぐ治るよ」などの急かすような声掛けをしたりすることは、本人をさらに追い込んでしまう可能性があります。
従業員が安心して心身をゆっくりと休められるように、声をかける際は従業員の気持ちに寄り添って行いましょう。
うつ病で休職中~復職後の従業員への対応
続いて、休職期間から復職までの対応を紹介していきます。うつ病は不安や焦りが強くなるほど治りにくくなってしまいます。企業側は従業員が安心して療養できるように配慮してあげましょう。
休職中は休養・治療に専念してもらう
休職中はとにかく休養・治療に専念してもらうことが第一です。コミュニケーションを取ることも大切ですが、なるべく負担がかからないように心がけましょう。言葉を慎重に選ぶとともに、連絡するタイミングをあらかじめ決めておき、定期的に連絡を取るようにすると良いです。
また、休職中は人との付き合いが減るため孤独を感じる従業員もいます。そのため、連絡を取ることで安心させてあげることもできます。
ただし「必ず連絡を取らないといけない」と感じさせてしまうと、従業員の心身が休まらなくなってしまうこともあるので、あくまでも従業員のペースを優先しましょう。コミュニケーションがしっかりと取れるようになったら、今後のことを話しあってみてください。
復職後はできることから慎重に業務を進めてもらう
復職後はうつ病が再発しないよう、慎重に業務を進めていくことが大切です。うつ病は再発率が高い病気です。復職し生活環境が大きく変わると、そのこと自体が大きなストレスになることもあります。また、体力や集中力も落ちているため、いきなりフルタイムで休職前と同じ業務をしてもらうのは困難です。そのため様子を見ながら、できることから少しずつ慣れてもらうようにしましょう。
うつ病による休職からの復職について、もっと知りたい人はこちらの記事も読んでみてください。
従業員が安心して休職できるGLTD制度
うつ病をはじめ、もしも従業員に何かがあった時に安心して休職でき、企業側が従業員の生活を支えられるようGLTD制度に加入しておくこともおすすめです。
GLTD制度は団体長期障害所得補償保険の略で、病気やケガなどで長期間働けなくなった従業員に対して、有給制度や健康保険だけでは足りない分をカバーする制度です。具体的な補償の内容などは保険会社によって異なりますが、最長で定年まで保証されるサービスもあります。
GLTD制度のメリット
GLTD制度に加入すると、従業員にも企業にもメリットがあります。ここではそのメリットについて紹介します。
収入が見込めることで従業員が安心して療養できる
GLTD制度に加入しておくことで、病気やケガなどで休業している期間も安定した収入が見込めるため、従業員が安心して療養に専念できます。また、この安心感は、従業員が精神的・肉体的・社会的にも満たされた状態である「ウェルビーイング」の実現につながります。
企業の健康経営に役立つ
GLTD制度へ加入すると、健康経営に役立つというメリットもあります。従業員が安心して働けるので、業務における生産性がアップし企業の価値もアップします。従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する健康経営を行うことで、企業価値と株価の向上にもつながるでしょう。
うつ病による休職。万全のフォローで従業員を支えよう
うつ病は仕事や日常生活が困難になる病気です。最近、集中力が低下していたり業務中のミスが目立ったりするような従業員は、うつ病を患っている可能性があります。
企業側は従業員がいつでも相談できる窓口や体制を整えるなどして、メンタルヘルスケア対策に努めましょう。また、もしも従業員が休職した場合でも、従業員が安心して心身の回復に集中できるよう、GLTD制度の導入も検討してみてはいかがでしょうか。
アドバンテッジリスクマネジメントでは、メンタルヘルスケア対策支援、GLTDの導入支援などを行っております。