産業医の面談を受ける女性

産業医面談は何を話す?人事担当者の対応ポイント紹介【3分解説】

Facebookでシェア ツイート
「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

産業医面談とは、産業医が従業員の心身の状態を把握し健康的に働けるようにサポートする面談のことです。従業員が健康的に働くためにも有意義な産業医面談が重要な役割になります。本記事では、産業医面談の目的や実施内容、企業側が気を付けるべきポイントなどを解説します。従業員の健康と安心のため、産業医面談について理解を深めましょう。 

産業医面談とは

面談をしている風景

産業医面談とは、どのようなことをするのでしょうか。役割や、産業医の義務について解説します。 

従業員に対して専門的な健康指導を行う

産業医面談とは、産業医と従業員が一対一で行う面談のことです。従業員の状態を把握し、心身ともに健康的に働けるようにサポートすることを目的としています。産業医面談は法的に義務付けられているわけではありません。一定の長時間労働が続いていたり、ストレスチェックで高ストレス者が出現したり、体調不良の従業員がいる場合に行われます。

しかしながら、従業員が産業医面談を受けることは義務ではなく、企業は面談を強制できません。産業医面談の通知を受け、本人が希望すれば実施されます。

対面やオンラインで実施が可能

産業医面談の実施方法には対面やオンラインなどがあります。以前は原則対面とされていましたが、2020年11月労働安全衛生法の一部改正により、以下の要件を満たせばオンライン面談も可能となりました。

<要件>
・産業医と従業員が表情や顔色、しぐさ、声をお互い確認できる環境であること
・情報漏洩や不正アクセスを防止するためのセキュリティ対策がされていること
・オンライン面談で使用するパソコンやソフト、ツールを導入するなど、利用者が利用しやすいこと。

オンライン面談を実施する場合は、企業側は事前に産業医へ面談者の業務内容や労働環境について情報を提供しなければなりません。なお、電話での産業医面談は表情やしぐさなどが確認できないため、基本的には行われないものと考えて良いでしょう。

参考:厚生労働省「情報通信機器を用いた労働安全衛生法第66条の8第1項、第66条の8の2第1項、第66条の8の4第1項及び第66条の10第3項の規定に基づく医師による面接指導の実施について」

守秘義務と報告義務がある 

産業医面談をする際、産業医には守秘義務と報告義務が課されています。守秘義務とは、業務上で知り得た情報を他人に漏らしてはならない義務のことです。産業医面談では話した内容のすべてが、人事担当者など企業側に報告されるわけではありません。

報告義務は、産業医面談の中で従業員が働く上で、健康や安全にリスクがあると判断した際に発生します。その際、従業員が健康的に働けるように、中立の立場で企業側へ報告が行われます。とはいえ、報告義務より守秘義務が優先されるため、企業側に報告する際は従業員の同意が必要です。

産業医面談で話す内容

説明をする医師の手元

産業医面談では対象となった従業員の状況に合わせて、悩みを聞いたり、アドバイスや指導をしたりします。産業医面談の主な目的・内容は以下のとおりです。

健康診断の結果について

【対象者:健康診断後の結果で、異常の所見があった従業員】

産業医は健康診断の結果を確認し、該当者と面談します。健康診断の結果に基づき、保健指導を実施し、従業員本人の年齢や性別、生活習慣、就業状況などの情報から改善に向けてアドバイスや指導をします。

企業側は健康診断を実施した後、異常の所見があった従業員について、3ヵ月以内にその者の就業内容に問題がないか医師による意見を受けなければなりません。(労働安全衛生規則第51条の2)産業医は従業員と面談し、チェックした状態に応じて以下のような区分で企業側に意見を提言します。

・通常勤務:このまま通常勤務で良いもの
・就業制限:勤務に制限を加える必要があるもの
・要休業:休業が必要であるもの

医師からの提言を受けた企業側は、状況を改善するために適切な措置を取る必要があります。

参考:健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針

長時間労働について

【対象者:長期労働者(時間外・休日の労働時間が1カ月あたり80時間を超え、それにより疲労の蓄積が認められる従業員)で産業医面談の希望者】

長時間労働は疲労が蓄積するため、脳や心臓疾患等の健康障害を発症するリスクが高いとされています。産業医は対象者の健康状態を把握し、健康障害の発症を予防するためのアドバイスをします。面談後、産業医は就業判定や必要な措置に関する意見書を作成し、企業は医師の意見を踏まえて必要であれば適切な措置を取らなければなりません。

長時間労働者への面接指導についてより詳しく知りたい方は以下のリーフレットをチェック!

参考:長時間労働者への医師による面接指導制度について(厚生労働省)

ストレスチェックの結果について

【対象者:ストレスチェックの結果で高ストレスと判定された者のうち希望者】

高ストレス者との面談では、従業員本人の健康状態や就業状況などを把握し、メンタルヘルス不調のリスクを評価するとともに、アドバイスや指導をします。

労働者が50人以上いる事業場では、年1回の全労働者を対象とするストレスチェックの実施が労働安全衛生法により義務付けられており、産業医は高ストレス者との面談で聴取した内容のうち緊急性があると判断した場合、適切な措置を実施するため必要な情報に限り、従業員の同意を得た上で企業に提供します。その際、産業医から企業側へ労働環境改善のアドバイスがされるのです。

参考:ストレスチェック制度 簡単! 導入マニュアル(厚生労働省)

メンタルヘルス不調について

【対象者:メンタルヘルス不調者】

メンタルヘルス不調者の悩みを聞き、アドバイスをします。メンタルヘルス不調の原因は、長時間労働だけではなく、職場内の人間関係などさまざまです。必要に応じて、医療機関の受診をすすめたり、企業へ就業判定や講じるべき措置について意見を提出したりする場合があります。また人事担当者は、対象者が相談しやすいような環境づくりを心がけることが重要です。

休職または復職について

【対象者:休職または復職希望者】

休職者面談では対象者の心身の状態をチェックするとともに、休職の原因や主治医の診断書を基に意見書を作成し、企業へ提出します。休職者が復職を希望する際も、同様です。

復職者面談では、復職の意思や休職中の過ごし方、通院状況などを聴取し、従業員が就業可能な健康状態まで回復しているかをチェックします。その後、復職するために必要な措置について意見書を作成し、企業へ提出します。

産業医面談における人事担当者の対応ポイント 

従業員に研修をしている様子

人事担当者は従業員が産業医面談を受けやすいように、対応に配慮する必要があります。従業員の不安を取り除き、安心して産業医面談を受けられるように人事担当者が気を付けるべき対応のポイントを解説します。

産業医面談の意義や役割を従業員に共有する

産業医面談を受けると「企業側に内容が報告される」「不当な人事評価につながるのでは」と不安を抱いている従業員がいることも考えられます。そのため、産業医の存在や産業医面談の目的・役割を発信し、その意義を理解してもらわなければいけません。

また、聴取された内容は本人が同意しない限り企業側へ共有されないなど、従業員誰もが安心して面談を受けられることを周知する必要があります。

従業員への面談通知方法に配慮する

メンタルヘルス不調者や高ストレス者など、従業員が周囲に知られたくない場合もあります。そのため、産業医面談の対象者に通知する際は、封書やメールを活用したり、個人面談を設けたりといった配慮が必要です。

業務内容の見直しなど適切な措置を検討する

面談をして終わりではなく、従業員の経過を見守るとともに産業医の意見を聞き、場合によっては本人の労働時間短縮や業務内容の見直しなど適切な措置を検討しましょう。過重労働の場合は、衛生委員会などで内容の調査や審議が必要になることもあります。

産業医と連携し職場改善に取り組む

従業員の心身の健康管理をサポートする産業医と日頃からコミュニケーションを取り、企業としてどのような組織を目指しているか等を共有し、同じベクトルを持っておくことが重要です。産業医としっかり連携して職場改善フレームなどを構築しましょう。

社外相談窓口の設置を検討する

さまざまな事情を抱え「社内の人には誰にも知られたくない」と感じる従業員もおり、産業医面談を周知しても受けない場合があります。そういったケースも考慮し、社外窓口の設置を検討しましょう。

産業医面談を活用し、ウェルビーイングの実現につなげよう

笑顔の女性

企業にとって、従業員が健康でいきいきと働けることはとても重要です。産業医面談について理解し適切に活用することで、従業員の病気やメンタルヘルスの不調予防や早期発見につながり、ウェルビーイングの向上も期待できます。人事担当者は、産業医面談の内容やその後のフォローについて理解を深めるとともに、従業員が安心して面談を受けてもらえるよう、適切な情報発信を図っていきましょう。

(Visited 29,726 times, 6 visits today)

【筆者プロフィール】

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部
導入企業数3,140社/利用者数483万人のサービス提供実績と、健康経営銘柄に3年連続で選定されたアドバンテッジリスクマネジメントの知見から、人事領域で関心が高いテーマを取り上げ、押さえるべきポイントやつまずきやすい課題を整理。人事担当者や産業保健スタッフの“欲しい”情報から、心身のヘルスケアや組織開発、自己啓発など従業員向けの情報まで、幅広くラインアップ。「ウェルビーイングに働く」ためのトピックスをお届けします。

この著者の記事一覧

Facebookでシェア ツイート

関連記事RELATED POSTSすべて見る>>