従業員と面談をしている担当者

パワハラを相談されたらどうする? NG対応&人事がとるべき流れを解説

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「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

従業員がパワハラの被害を相談してきた時、人事担当者は被害者の心理を理解しながら適切に対応する必要があります。また、加害者への指導だけではなく、企業全体で再発防止に努め、継続的に行うことが重要です。そこで本記事では、社内でパワハラの相談をされた際の、人事がとるべき手順やNG対応などについて詳しく解説します。

職場におけるパワハラの定義と、企業への影響

厳しく女性を叱責する男性

企業内でパワハラが発覚した際、企業側は適切な措置を取らなければなりません。まずは、職場におけるパワハラの概要や対応の義務について確認していきます。

職場におけるパワハラとは

職場におけるパワーハラスメントの定義は次の通りです。

職場において行われる、
① 優越的な関係を背景とした言動であって、
② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
③ 労働者の就業環境が害されるもの
であり、①から③までの3つの要素をすべて満たすものをいいます。

参照:厚生労働省 職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!

パワハラの具体的な言動例は以下の通りです。

身体的な攻撃相手を殴ったり、蹴ったりする
精神的な攻撃人格を否定したり、プライドをわざと気付けたりするような言動をする
人間関係からの切り離し相手を孤立させるような態度をとる
過大な要求明らかに能力以上の業務や異常な業務量を押し付ける
過小な要求業務を故意に与えない など

パワハラ問題が企業に与える影響

職場でパワハラが起こると、被害を受けている従業員の仕事に対しての意欲や生産性の低下を招くだけでなく、休職・退職などの人材不足にもつながります。場合によっては、企業の法的責任や損害賠償に発展することもあり、社会的信頼性を失う可能性もあるでしょう。

また、パワハラは被害者本人だけでなく、パワハラされているのを身近に見たり、感じたりしている周囲の従業員の士気も下げることになり得ます。さらに、不快な気持ちにさせられるといった間接的なハラスメントを与えてしまうかもしれません。このように、パワハラは個人にとっても企業全体にとっても、大きな影響を与える可能性がある重要な問題です。

パワハラ対策は企業の義務

労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)において、事業主は従業員からパワハラの相談があった場合、適切な体制整備や必要な措置をとることが義務付けられています。加えて、パワハラの相談を行った従業員などに対し、不当な扱いを行うことも禁止されています。従業員からパワハラの相談があった際には、適切な手順で対応し、速やかに対策を進めなければいけません。

パワハラを相談された時の流れ

パワハラを相談された時には、被害者の心情を理解しながら対応することが求められます。一方、再発を防ぐためにも、加害者には処分だけでなく、フォローも必要です。そこで、パワハラを相談された時の人事担当者がとるべき手順について、解説します。

<パワハラを相談された時の人事担当者の対応>

  • 被害者からの相談を受ける
  • 事実確認
  • パワハラ有無の判断、処分の検討
  • 被害者・加害者へのフォロー
  • 再発防止のための対策

1.被害者からの相談

落ち込み顔をおおいながら相談する女性

従業員にパワハラ被害を相談されたら、相談窓口の担当者は寄り添いながら、まずはじっくりとヒアリングを行います。相談を受ける際には、相談内容などの秘密が守られること、相談をした従業員が不当な処分を受けないことなどをしっかり説明しておきましょう。

また、窓口担当者は、相談内容に関して詰問したり、勝手に判断を加えたりする聞き方をしないように気を付けなくてはいけません。

ワンポイント
被害者の話を遮らずに、落ち着いて話を聞くのがポイントです。一通り話を聞いた後、ハラスメント行為に至る経緯や内容、日時などを詳細に書き出してもらいます。なお、相談時間は50分程度が好ましいですが、1回で終わらない場合は別で相談日を設けましょう。

2.事実確認

3人で話している風景

パワハラの相談をされた場合は、その内容が事実なのか確認を行います。パワハラを示すメールや録音など証拠の有無の確認や、被害者の許可を取った上でパワハラを行ったとされる加害者に事実確認をします。

もし被害者と加害者の意見が食い違う場合には、被害者に許可を取った上で、職場の同僚など第三者にも状況を確認しましょう。また、相談を受けた担当者に最終判断をする権限がない場合は、上司や社長などに報告を行います。

ワンポイント
実際に事実確認を進めていくにあたっては、的確な調査が行えるように調査体制を整えましょう。被害者や加害者の今後の人事配置や処遇についても関係してくるため、人事部門や法務部門と連携をとることが望ましいです。なお、被害者の心理状態の安全を確保するために、調査期間中は被害者と加害者が顔を合わせないよう配慮することも大切です。

3.パワハラ有無の判断、処分の検討

調査で得られた内容をもとに、パワハラの有無を総合的に判断します。社内での判断が難しいなら、弁護士などを交えた調査委員会を設置し、相談しましょう。

パワハラがあったと判断される場合は、加害者への処分の検討も必要です。処分する際には、被害者が受けた被害の大きさや企業の就業規則、過去のパワハラの裁判例などをもとに検討します。具体的には、謝罪、人事異動、戒告、減給、降格などの処分が考えられます。

4.被害者・加害者へのフォロー

相談をしているビジネスマンの手元

調査結果が出たら、パワハラの被害者と加害者に通知を行うと同時に、企業としてこの調査にどのように取り組んだかを両者に説明します。パワハラがあった場合、加害者には処分を行う必要がありますが、処分をして終わりではなくフォローも欠かせません。また、被害者が安心して働き続けられるようなフォローももちろん重要です。

一方、パワハラが認められなかった場合、被害者は調査結果や企業の判断に納得しないこともあり得ます。被害者が個人的に弁護士を立てて訴訟を起こすなどのケースも考えられるため、事前に弁護士へ相談しておくといった対応策を用意しておくのが望ましいでしょう。

ワンポイント
今後のためにも、調査結果は調査報告書にまとめておくと良いでしょう。調査の実施期間や調査内容、調査方法、ヒアリング内容および調査によって判明した事実関係、結論などを記載しておけば、同様のケースの処分や予防策の参考にもなります。

5.再発防止のための対策

パワハラ問題が解決したら、パワハラが発生した背景などを踏まえながら再発しないよう対策を検討しましょう。対策を検討し、パワハラ防止策などが決まったら、継続的に実施していくことが大切です。

また、防止策を実施していく中でも、定期的にその内容を検証したり見直したりすることで、より効果的にパワハラ防止策に活かせます。

パワハラの相談をされた時のNG対応

パワハラの相談に乗る窓口担当者

ここでは、パワハラの相談をされた時にやってはいけないNG対応を紹介します。対応によっては、大きなトラブルに発展する可能性もあるため、次のような言動に気を付けて慎重に対応しましょう。

被害者を否定・叱責する

パワハラを相談する行為は、被害者にとって大きな勇気がいることです。そのため、相談してきた被害者を否定・叱責するような対応をしてはいけません。

また、パワハラはとてもデリケートな問題でもあります。被害者を励ますつもりの発言が、被害者の心をさらに傷つけてしまうこともあるため、安易な慰め・励ましはしないよう慎重に対応しましょう。

<NG言動例>

  • 「あなたの態度にも問題があったのでは?」(否定)
  • 「その程度のことで悩むなんて心が弱い」(叱責) など

パワハラを重要視しない

パワハラを重要視せず「そんなもんだよ」と流すことも、避けなければいけない対応です。パワハラ相談を受ける際には、被害者の話に耳を傾けつつも、フラットな状態でヒアリングする意識を持っておきましょう。また、事実確認が済むまでは、一方的に加害者を叱責する必要もありません。

<NG言動例>

  • 「昔はよくあったことだよ」
  • 「相手もそんなつもりはなかったんでしょう」 など

パワハラの相談を放置する

パワハラ問題をそのまま放置すると、被害者が心身に不調をきたし、休職・退職に追い込まれてしまう可能性もあります。また、相談してきた従業員以外のパワハラ被害者が発生したり、職場の風通しが悪くなり、業務や人間関係に悪影響が出たりする可能性もあるでしょう。そのためパワハラの相談をされたら、事実確認や調査、改善策の検討など、速やかに行動することが大切です。

被害者を勝手に異動させる

人事担当者は、パワハラを相談してきた被害者が不当な処遇を受けるような対応を取ってはいけません。例えば、被害者本人の希望や了承もなく勝手に別の部署に異動させる、被害者に退職を薦める・解雇するなどが該当します。被害者を加害者から遠ざけるだけでは、パワハラ問題の根本的な解決にはならないため、対応には気を付けましょう。

パワハラの再発防止策

社員を集めて会議室で研修を行う上司

パワハラの再発防止は、パワハラを未然に防ぐことにもつながるため、継続的に行っていく必要があります。それでは最後に、企業で取り組めるパワハラの防止策を紹介します。

社内規程を整備する

パワハラに関する社内規程を作成し、企業がパワハラに対しどのような姿勢をとるのかを明確化しておきましょう。また、それを従業員に周知し、啓発を促すことで、再発防止につなげられます。

従業員の知識・意識を深める

先述したように、パワハラに対する従業員の知識や意識を深めることも防止策の1つです。従業員の知識・意識を深める具体的な方法として、社内でパワハラをテーマとした研修を開くなどが考えられます。

また、人によってパワハラの線引きが異なっていたり、自分がパワハラをしている認識がなかったりします。このような無意識な偏見や思い込みなど、個人のアンコンシャス・バイアスがパワハラにつながるケースもあるため、研修では自身の考え方や行動について振り返りながら、行動変容へとつなげていけるような内容を扱うことが重要です。

トップによるメッセージ発信

企業のトップが、「ハラスメントは無くすべきものである」というメッセージを明確に提示することも大切です。これは、企業がパワハラを重要な課題として捉えている認識につながります。その理由や、具体策についても明示できるとより良いでしょう。

「明るい職場応援団」ではメッセージの参考ひな形を紹介しています。

サーベイなどによる実態把握

パワハラが発覚した職場では、それが氷山の一角である可能性も視野に入れなくてはいけません。他にもパワハラ被害にあっている人がいないか、またパワハラが起きそうな職場環境ではないかをチェックするためにも、サーベイを実施し、組織や個人の状態を定期観察します。従業員のエンゲージメントにマイナスの変化を確認したら、1on1を行うなど実態の把握を進めましょう。

パワハラの相談をされたら誠実かつ適切な対応を

手を握る授業員とカウンセリングの人

パワハラは従業員個人の問題ではなく、企業全体で対応しなければならない重要な問題です。パワハラの相談をされた場合は事実関係の調査や、適切な措置を行う必要があるため、一連の流れを確実に実施できるよう社内規程を整備しておく必要があります。また、パワハラを再発させないためにも研修の充実化を図り、従業員の知識や意識を深めることも重要です。従業員が快適に安心して働けるウェルビーイングの実現に向けた取り組みを行い、パワハラの生まれない企業を目指しましょう。

社員研修プログラム

アドバンテッジリスクマネジメントでは、パワハラを含むハラスメント防止の社員研修プログラムを提供しています。
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【筆者プロフィール】

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部
導入企業数3,140社/利用者数483万人のサービス提供実績と、健康経営銘柄に3年連続で選定されたアドバンテッジリスクマネジメントの知見から、人事領域で関心が高いテーマを取り上げ、押さえるべきポイントやつまずきやすい課題を整理。人事担当者や産業保健スタッフの“欲しい”情報から、心身のヘルスケアや組織開発、自己啓発など従業員向けの情報まで、幅広くラインアップ。「ウェルビーイングに働く」ためのトピックスをお届けします。

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