人事施策など、効果の測定が難しいとされる施策の改善状況をチェックするために活用されているのが「エンゲージメントサーベイ」です。また、従業員に心身ともに健康な状態で働いてもらう「ウェルビーイング」な職場の実現という観点でも、エンゲージメントサーベイによる現状把握・分析が重要視されています。本記事では、エンゲージメントサーベイの必要性や効果について紹介します。
目次
エンゲージメントサーベイとは
「エンゲージメントサーベイ」とは、従業員のエンゲージメントを測定し、組織の状態を可視化するツールです。「サーベイ」は「調査」を意味します。まずは、企業におけるエンゲージメントの意味を整理し、エンゲージメントサーベイの必要性についてみていきましょう。
エンゲージメントとは
人事領域における「エンゲージメント」には2つの意味があります。
一つは、従業員が仕事に対してポジティブなイメージを持ち、充実した状態で働いている状態を意味する「ワークエンゲージメント」。もう一つは、企業と従業員の間で結ばれた強い信頼関係、あるいは会社に対する愛着心を意味する「従業員エンゲージメント」です。
これら2つのエンゲージメントが高い水準で維持できていると、従業員が心身ともに健康・幸福な状態で働くことができます。また、企業にとっても離職率低下や生産性の向上といったメリットがあります。
エンゲージメントサーベイの種類
エンゲージメントサーベイには、「パルスサーベイ」と「センサス」の2種類の実施方式があります。
パルスサーベイとは、週に一度、月に一度など、脈拍(パルス)のように短期間で調査を繰り返し行う方法です。従業員の負担が少なく済むよう、調査はアンケート形式で行われます。設問数は5~15問程度、内容は数分程度で簡単に回答できるようになっているのが特徴です。定期的に実施をするため、従業員が抱える問題の早期発見・フォローに役立ちます。
一方のセンサスは、ボリュームの大きいアンケートを年に1~2回実施する方法です。設問数は50~150程度が目安とされています。従業員個人の抱える問題はもちろんのこと、組織改革を検討しているときや、組織の就業環境に関する問題を洗い出したいときなど、組織全体の課題把握を行う意味合いもあります。
エンゲージメントサーベイの必要性
エンゲージメントは、目には見えにくいもの。エンゲージメントサーベイを行うことにより、組織の状態が可視化され、客観的な状況把握が可能となります。
また、調査結果をもとに、組織が抱える課題や問題を分析することで、根拠のある改善施策を打つことができます。
エンゲージメントサーベイを行う目的
組織の現状を把握し、従業員エンゲージメント向上に有効な施策を続けていくためには、エンゲージメントサーベイの実施が必要不可欠です。ここでは、エンゲージメントサーベイを行う目的を整理しておきましょう。
組織課題の把握
エンゲージメントサーベイを行う目的の一つは、組織課題の定量的な把握です。組織課題を肌感でつかむのではなく、得られた情報から客観的に分析を行うことで、より適切な人事施策を打つことに繋げられます。
また、サーベイの実施は、現状の課題だけではなく、将来的に生じうる課題の予兆を捉えることも可能にします。サーベイの結果を従業員に共有し、組織全体で意見交換や対話を行うことで、従業員と企業間におけるギャップを埋めることにも活用できます。
人事施策の効果測定
もう一つの目的は、従来から取り組んでいる人事施策の効果測定です。
例えば、働きやすい職場環境のために取り入れた「フリーアドレス制度」はエンゲージメントに好影響を与えているか、といったように、施策の継続・廃止・改善などの意思決定に役立てることができます。
また、調査結果からコミュニケーションやマネジメント不足、従業員の主体性の欠如、モチベーションの低下など、人事上の課題が見つかることで、改善案の策定に繋げることも可能です。
エンゲージメントサーベイの効果
ここでは、人事施策にエンゲージメントサーベイを活用することで期待できる効果について解説します。
従業員のモチベーション向上
エンゲージメントサーベイを実施することで、従業員のコンディションを把握することができます。
例えば、上司や部下・同僚との信頼関係が構築できているかなどを質問することで、従業員が抱える潜在的な不満や課題などをキャッチアップできるでしょう。結果をもとに、必要に応じて1on1や人事面談などの適切なフォローを実施することで、従業員のモチベーションの維持・向上を図ります。パルスサーベイの場合、定期的に調査を行うため、従業員の小さな変化にも気付きやすいでしょう。
また、エンゲージメントサーベイを匿名で行い、組織(部署)ごとの課題(例えば、コミュニケーションが良好でない、業務効率が悪いなど)を抽出するのも一つの方法です。一つ一つ解決していくことで、結果として従業員のモチベーションアップにも繋がるでしょう。
離職率の低下
エンゲージメントサーベイは、離職率の低下や定着率の向上にも役立ちます。定期的なサーベイで従業員のコンディションをキャッチできれば、退職の予兆やサインに気付けることがあります。
また、離職率の高い部署や、定着率が高い部署の傾向も把握できます。サーベイ結果をもとに、離職を防ぐための効果的なフォローや施策を打てれば、優秀な人材の流出を抑えることができるでしょう。
生産性の向上
エンゲージメントサーベイの実施により、生産性の向上が期待できます。サーベイを通じて組織の課題が見えることで、生産性向上のボトルネックになっている要因を見つけることができます。
例えば、ある部署で、業務過多によるモチベーション低下が見られたら、部署内の各人への業務量を再調整したり、他部署とのコミュニケーションに課題を感じているようであれば、部署間コミュニケーションがスムーズに行えるような施策・イベントを行うなど、問題を一つずつ解決することで生産性向上を図ります。
エンゲージメントサーベイの実施方法と注意点
エンゲージメントサーベイを行うにあたり、実施方法と注意点を整理しておきましょう。
エンゲージメントサーベイは、自社で実施することもできますが、集計や分析には手間がかかります。エンゲージメントサーベイの専門サービスを利用すると、分析をスムーズに行え、人事担当者の負担を軽減することができます。
また、エンゲージメントサーベイは分析後に、どのような施策を行っていくかが重要です。そのため、結果改善までサポート可能な専門会社をパートナー企業として選ぶと良いでしょう。
調査実施の目的やゴールを定める
エンゲージメントサーベイは、組織の課題を可視化するための調査方法であり、実施したからといって、自動的にエンゲージメントが高まるわけではありません。サーベイはあくまで手段であることを理解した上で、自社が目指すべき姿や最終ゴール、サーベイ実施の目的を初めに整理しておきましょう。
<サーベイ実施の目的例>
- チームの生産性が上がらない理由を探りたい
- 新卒社員の定着率を上げたい
- 組織の体制変更によるエンゲージメントの変化を把握したい
- 従業員の価値観や志向性を把握したい
- キャリアデザインをサポートする人事制度を構築したい
実施タイミングを決める
エンゲージメントサーベイの目的に合わせて、実施タイミングを決定します。
例えば、組織の体制変更が予定されていて、その前後におけるエンゲージメントの変化を測りたいのであれば、変更が行われる前と変更後(数カ月後)にセンサスを行います。
来期の人事施策を練るに当たり、組織課題を明らかにしておきたいのであれば、来期の戦略策定の前に実施し、対応策を検討します。
パルスサーベイの場合は、定期的にサーベイを行うことになるので、何ヶ月ごとに実施するのかを決めておきます。
質問項目の設計
続いて、質問項目を設計します。ポイントは、何のためにエンゲージメントサーベイを実施するのか、その目的に沿った設問を設計することです。
【質問設計例 ①】
全社的な組織体制変更時の従業員エンゲージメントの状況を知りたい。
→企業理念や事業計画への共感、会社の方針と自身のキャリアとの適合感を見るための設問
【質問設計例 ②】
管理職変更後のその組織における従業員エンゲージメントの状況を知りたい。
→上司との信頼感や関係性、業務遂行における上司との連携の不都合の有無、評価やフィードバックへの納得感、自身の強みを発揮できているか、などを見るための設問
設問設計を間違えると、得られる情報の精度が低くなったり、見当違いの分析を行ってしまったりすることもあります。また、解釈が人によって分かれないよう、明確な質問文を設計することも大切です。
分析のために「あれも聞きたい」「これも聞きたい」と大量の設問を用意すると、サーベイが従業員の負担になってしまいます。設問数に配慮する、選択式の質問項目を厚めに設計し、記述部分を少なくするなどの対応が求められます。
調査実施を周知して実行
調査を実施する前に、社内周知も忘れずに行いましょう。メールや社内報で「サーベイを実施します」という実施予告をするだけではなく、調査の内容や目的、従業員側のメリットなどについても丁寧に伝えましょう。
中には、サーベイの結果が自身に不利益になることを恐れて、正しく回答してもらえないケースもあります。回答結果や個人情報の取り扱いに関しては、しっかりと事前説明を行います。
また、サーベイの回答期間には余裕を持たせましょう。センサスのように、設問数が多く、回答に時間がかかる場合には、一ヶ月ほど設けると良いでしょう。従業員による回答忘れがないよう、必要に応じてリマインドも行います。
結果を分析し改善に繋げる
サーベイの結果が出たら、結果をもとに組織の状態を読み解いていきます。数値・結果の良し悪しのみならず、変化の量や変動の理由を見極め、適切に結果を分析しましょう。
大切なのは、結果を見て終わりではなく、分析により明らかになった課題ときちんと向き合い、解決していくことです。課題解決のための施策は単発で終わらせず、PDCAをまわしながら定期的に続けていきましょう。
また、従業員への結果のフィードバックも忘れずに行います。センサスの結果を共有することで、今後の人事施策への共感を得やすくなる可能性もあります。
パルスサーベイの結果は、従業員自身が結果を把握することで、自身のモチベーションの低さがどこに起因しているのかなどが分かるため、セルフケアにも役立ちます。
エンゲージメントサーベイで組織課題を解決
エンゲージメントサーベイは、エンゲージメント向上に欠かせない手段の一つですが、サーベイを実施するだけでは不十分です。エンゲージメントサーベイの目的を明確にし、結果をもとに施策に取り組むことで、理想とする組織の実現に繋がるでしょう。人事施策をより意味のあるものにするためにも、エンゲージメントサーベイを取り入れてみてはいかがでしょうか。
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