〈前編〉のコラムでは、メンタルヘルス不調による休業に関する課題感についてご紹介しました。
〈後編〉の本コラムでは、復職支援カウンセリングの主な支援内容をご紹介します。
支援の流れは、休職から復職後の安定就業に至るまで、大きく分けて3つのステップを踏んでいきます。
目次
体調の回復をめざす「療養専念期」
1つ目のステップが、休職開始直後の「療養専念期」です。従業員が休職に入ることが決まったら、まずは仕事から離れてゆっくり休養し、体調の回復を目指すことが最優先です。症状の回復のためには医療機関の受診が必要不可欠であるため、通院を継続し、服薬が必要な場合は処方に従い服薬し、主治医の指示のもと過ごします。
せっかく休職に入っても、仕事のことが気になり、「早く回復しなければ」「どのように休めば良いか分からない」という焦りや不安から、早いうちから復職支援カウンセリングの開始を希望される方がいらっしゃいますが、療養専念期にいらっしゃる場合には、カウンセリングの開始時期を遅らせるご提案をしています。
カウンセリングルームに来談して他者に自分のことを話すには、相当のエネルギーを遣います。時には、話しづらいことに向き合う作業も行うため、カウンセリングに耐えうる体力・精神力が回復するまで、まずは十分な休養をおすすめします。
この時期、企業のご担当者様が対応で気を付けるべきポイントとしては、休職に関わるルールや必要な手続きについて、事前に説明をしておくことです。どれくらいの期間休めるのか、休職満了日の具体的な日付や、休職期間中に受けられる手当、そして、休んでいる間に会社の誰とどれくらいの頻度で連絡を取る必要があるのかなど、「決まり」や「ルール」の認識を合わせておくことで、安心して休める環境が整います。
本人との連絡頻度については、特に療養専念期間中は会社との連絡が負担となり十分に休めなくなる恐れがあるため、あまり頻回になり過ぎないよう留意が必要です。
再発予防策の検討を必要とする「復職準備期」
2つ目のステップは、「復職準備期」です。十分な休養によって体調が回復してきたら、復職に向けて準備を開始します。復職準備を開始して良いかどうかは、休職者本人が決めるのではなく、主治医が判断します。主治医の判断を確認後、復職支援カウンセリングを開始します。カウンセリングでは、体調確認、生活リズムの改善、不調に至った経緯の振り返り、メンタルヘルスについての正しい知識や情報の理解促進、再発防止策の検討をテーマに継続していきます。
中でも、再発防止策の検討は最も重要なテーマです。同じ職場に戻っても再び体調悪化に陥らないためには、再発防止の策を十分に検討し、ストレスへの対処法を増やした上で復帰することが大切です。復職支援カウンセリングでは、公認心理師や臨床心理士などのメンタルヘルスの専門家であるカウンセラーが対応しており、この再発防止策検討のお手伝いをしています。
休職前、どのようなことがストレスとなり不調に至ったのか、どうすれば再発を防止できるか・・・ご本人と丁寧に振り返りながら検討していきます。この再発防止策を検討する中で、私たちカウンセラーが大切にしていることは「個人変容」です。
不調に至った原因は、環境によるものだけでなく、個人の要因も大いに挙げられます。自分自身のどのような特性・癖・思考パターンが不調に繋がりやすいのか、カウンセリングでの対話を通して、カウンセラーと一緒に探っていきます。
その後、ご本人の特性に合わせて課題を設定し、認知行動療法の理論をベースに、認知再構成法(新しい視点、考え方・捉え方の習得)、行動療法(習慣的行動を変えてみる)、アサーショントレーニング、アンガーマネジメントなどを行っていきます。すでに習慣づいている自身の行動パターンを短期間で変えるのは、容易なことではありません。複数回カウンセリングを重ね、一定期間はカウンセラーが伴走しながらご本人の「行動変容」を支えていきます。一人で取り組むよりも、専門家と一緒に行っていくことがより効果的なのです。
この時期、企業のご担当者様が対応で気を付けるべきポイントとしては、復職者を迎える体制を整えておくことです。諸手続きのために、ご本人との連携はもちろん、産業医等の産業保健スタッフとの連携、必要に応じて職場と調整を行い、復帰後の相談先を決めておいたり、復帰後数週間~数か月の本人へ依頼する業務のスケジュールの見通しを立てたり、スムーズな復職のための体制を整えておくことをおすすめいたします。
復職後の安定就業を支援する「復職後フォロー期」
3つ目のステップは、「復職後フォロー期」です。正式に職場復帰されたご本人が、復帰後の不安やストレスに対処したり、再発防止策を取れているか、フォローアップのためのカウンセリングをこの時期に行います。休職から復帰する時、誰しもが大きな不安で一杯になります。この関門をクリアするところも、カウンセラーが一緒に伴走していきます。また、復帰後の体調はまだ万全な状態とは言えないため、最初から無理をし過ぎないよう、スモールステップで目標を設定し職場適応を目指します。そして、復帰後3~6か月を目安に、安定就業できていることを確認したのち、復職支援カウンセリングは終結となります。
この時期、企業のご担当者様が対応で気を付けるべきポイントとしては、最初から無理をさせないこと、定期的に面談の場を設け、本人に気になる変化や心配な様子が見られた場合は、すぐに産業保健スタッフや主治医に繋げることなどが挙げられます。 以上、復職支援カウンセリングの流れをご紹介いたしました。カウンセリングの内容は、定期的に企業のご担当者様へ書面でご報告をしております。復職への意欲、睡眠・食欲などの体調面、体力面、通院状況などをご報告していますので、会社内での復職判断の参考材料にしていただくことができます。
まとめ~一人一人に合わせた復職支援カウンセリングを~
上記のような経過を辿りながら復職へ至ることが一般的と言われていますが、なかなか体調が安定せずに休職期間の延長が続いているケースや、復職後に調子を崩して再休職となるケースも中には見受けられます。
例えば、職場でハラスメントが起きていたなど、調子を崩した原因が職場環境にある場合、休職中はストレッサーから離れられているため休養によって体調は比較的安定していきますが、復職時、休職前と同じ環境での復帰となる場合は、ストレッサーに直面し再び不安定になりやすくなる傾向があります。また、ご本人が根深い課題を抱えている場合、再発防止策の検討だけでは十分でないこともあります。
このような場合は、お一人お一人の回復過程に合わせてEAPでご支援できることを模索し、企業のご担当者様と連携していきます。スムーズな復職のために、EAPのカウンセリングをご活用ください。
復職支援カウンセリングについての詳細は、こちらまでお気軽にお問合せください。
株式会社アドバンテッジリスクマネジメント
「人」ソリューション1部 カウンセラー