ストレスマネジメントとは、身体や心に悪影響を起こすストレスに対し、上手に付き合いながら適切に対処することです。さまざまなストレスにさらされやすい現代において、ストレスとどのように向き合うかは非常に重要です。ストレスマネジメントの重要性から、具体的な実践方法や企業ができる施策などを解説します。
目次
ストレスマネジメントとは
ストレスマネジメントとは、自分のストレスについて、対処しながら上手に付き合っていくことです。仕事や生活など、日常の中でストレスを感じる場面は多いでしょう。そのような時に、自らストレスと向き合いセルフケア・コントロールするのがストレスマネジメントです。
そもそもストレスとは?「ストレッサー」と「ストレス反応」の関係
ストレスマネジメントについて理解を深めるためには、ストレス反応が起こる仕組みについて知る必要があるでしょう。ストレスが原因であるストレッサーの影響により、心身にストレス反応が現れることによって起こります。そこでまずは、ストレッサー・ストレス反応に関して詳しく紹介します。
ストレスを引き起こす「ストレッサー」
ストレッサーとは、ストレスを引き起こす原因のことです。ストレッサーにはいくつかの種類があり、具体的には次の通りです。
<ストレッサーの種類の一部>
- 身体的ストレッサー:睡眠不足、体調不良など
- 心理・社会的ストレッサー:人間関係、多忙さ、仕事のプレッシャー(締め切り・ノルマ等)、家庭問題など
- 物理的ストレッサー:気温、照明、騒音、病気など
- 科学的ストレッサー:タバコ、アルコール、薬物、食品、大気汚染など
- 環境的ストレッサー:天候、災害、ウィルス、花粉など
ストレスによって発生する影響「ストレス反応」
ストレッサーによるストレスが発生すると、ストレス反応として心身にさまざまな影響が出ます。具体的には次のようなものがあります。
<ストレス反応例>
- 身体的反応:倦怠感、疲労、肩こり、めまい、不眠、食欲不振、動悸、頭痛など
- 心理的反応:イライラ、集中力の低下、うつ、不安、落ち込み、物忘れ、ケアレスミスなど
- 行動的反応:過食、生活の乱れ、飲酒量や喫煙量の増加、性欲減退、暴言・暴力、作業能力低下、遅刻や欠勤など
ストレスマネジメントを実践することによって得られる効果
ストレスは心身にさまざまな影響を与えますが、ストレスマネジメントを適切に行うことで、それらによる影響をできるだけ抑えることが可能です。ここからは、ストレスマネジメントによって得られる効果(メリット)について説明します。
自身のストレスの状態に気づく
ストレスマネジメントを行うことで得られる大きな効果の1つは、自分自身のストレスの状態に気づけるようになることです。ストレスのサインであるストレス反応などに気がつかず、ストレスを受け続けていると、うつ病をはじめとするメンタルヘルスの不調に発展する可能性があります。
その結果、最終的に仕事を続けられずに休職につながる恐れもあります。自分のストレス状態を早い段階で把握できれば対策につなげられ、こうしたストレスによるリスクを防げるでしょう。
仕事のパフォーマンスが安定する
ストレスを上手にマネジメントできるようになると、心身の状態が安定します。心身の状態が安定すると、仕事のパフォーマンスにもムラが出にくくなります。このように安定して業務を継続できるので、個人や企業の生産性の維持にもつながるでしょう。
ストレスマネジメントの実践方法
ここからは、ストレスマネジメントの具体的な実践方法を紹介します。ストレスマネジメントは主に「セルフモニタリング」と「ストレスコーピング」から成り立ちます。誰でも実践できるので、実際に試してみましょう。
①自分自身の状態を知る「セルフモニタリング」
セルフモニタリングとは、自分自身の状態を継続的に観察し、その状態を紙に記録して分析することでストレスの原因やストレス反応などを明確にしていくものです。記録の際は、次のようなことを重点的に意識します。
<意識すること>
- 自分の現在の状況
- ストレッサーだと考えられるもの
- ストレスが生じたときの自分の気持ち
- ストレス反応(心理・身体反応・行動)
<具体例>
- 自分の現在の状況:部署異動になり担当業務が変わった。新しい業務は量が多く、スケジュールもタイトである
- ストレッサーだと考えられるもの:業務量の多さ、プレッシャー
- ストレスが生じたときの自分の気持ち:大きく環境が変わったことで不安を覚えている。また、常に仕事に追い立てられているようで焦りも感じる
- ストレス反応(心理・身体反応・行動):落ち込み、不安(心理)疲労、倦怠感、食欲不振(身体反応)生活の乱れ(行動)
現在の状況をセルフモニタリングすることで、これまであまり経験のない業務において目標が達成できそうかという心配より、タイトなスケジュールの中で予定通り進行できるかというプレッシャーを感じていることがわかります。
このように気持ちを書き出すことで、何に対するプレッシャーなのかを整理できるようになるでしょう。
②ストレスに対して具体的に対処する「ストレスコーピング」
ストレスコーピングとは、ストレスへの対処法です。次のような種類があります。
- 情動焦点型コーピング:ストレッサーに対する気持ちを発信する(例:友達に仕事の愚痴を話すなど)
- 認知的再評価型コーピング:ストレッサーに対する自分の考え方を変える(例:苦手な人の良いところを探すなど)
- 問題焦点型コーピング:ストレッサーそのものに焦点を当て、解決を目指す(例:業務の割り振り・量の見直しを求めるなど)
- 社会的支援探索型コーピング:ストレッサーを解決するため他者に支援を求める(例:業務を同僚に手伝ってもらうなど)
- ストレス解消型(気晴らし型)コーピング:自分の好きなことを行い、心身のリフレッシュをする(例:休息をとる、趣味に打ち込むなど)
ストレスコーピングを行うときは、ストレッサーとして考えられるものをリストなどに書き出します。そして主体的に解決しようという意識、または対処しているという自覚を得ながら、自分に合ったコーピングを選び取ることが大切です。
企業でのストレスマネジメント方法
最後に、企業で行えるストレスマネジメント方法を紹介します。従業員が自分のストレスと上手く向き合っていくためには、企業のサポートが不可欠です。
ストレスマネジメント教育を行う
ストレスマネジメントについてよく知らない人も多くいるため、企業が従業員に対してストレスマネジメント教育を行うと良いでしょう。どのような言動がハラスメントに該当するのかが理解できると、パワハラといったハラスメントの予防や、職場全体のストレス耐性が上がり、メンタルヘルス不調の予防につながります。社内研修を開き、ストレスの仕組みやストレスマネジメントの実践方法などを従業員に学んでもらうのもおすすめです。
また従業員のEQを向上させてストレス耐性を鍛えたり、ストレスへの意識を調整しながらより最適な行動へと変容させていったりすることも大切です。EQとはEmotional Intelligence Quotientの略で、「感情をうまく管理し、利用できる能力」という意味を持ち、ビジネスシーンにおいて必要となる対人コミュニケーションの基礎能力です。EQを意識的に用いることで、困難な状況でも前向きな感情を作り出し、組織の中で適切な行動を取れるようになると考えられています。
アドバンテッジリスクマネジメントでは、感情の認識や調整能力(EQ)を高めることでコミュニケーションに起因する課題の根本改善を目指す「EQ向上研修」などを提供しています。
1on1ミーティングを行う
上司と部下で定期的にコミュニケーションの場を設ける1on1ミーティングも、部下のストレスマネジメントの機会として有効です。例えば、コミュニケーションの中で部下が日々ストレスを感じている場面がないか尋ねる、ストレスがある場合は一緒に分析し対処方法を考える、などが挙げられます。1on1ミーティングを行うことで、上司は部下が重いストレスを抱える前に対処でき、部下は上司に相談しながらストレスマネジメントを実践できます。
産業保健スタッフや外部窓口によるサポート体制を整える
従業員が大きなストレスを抱えてしまった場合の対策を行っておく必要もあります。例えば、産業医など専門家によるサポート体制を整え、従業員に高ストレス状態が認められたりメンタルヘルスに不調をきたしていたりした場合に、すぐにケアできるようにすると良いでしょう。
また従業員が上司や同僚など人間関係に悩みを抱えている場合、社内で相談できる人がいない可能性もあります。そのため、誰でも利用できる外部の相談窓口を設置し、活用を促すのもおすすめです。その際、匿名で相談でき、秘密も守られるため、安心して利用できる旨を周知することも重要です。
アドバンテッジリスクマネジメントでは、従業員のデータの集約・一元管理・見える化などとともに、データの質向上も目指せる「アドバンテッジウェルビーイングDXP」などを提供しています。
ストレスマネジメントを実践し、ウェルビーイングの向上へ
ストレスマネジメントは、従業員が心身ともに健やかな状態で、意欲的に仕事に向かえるウェルビーイングの実現ためにも重要です。さまざまなストレッサーが身近にあり、ストレスを感じやすい現代だからこそ、ストレスの仕組みを理解する必要があります。上手にストレスと向き合い、対処する方法を一人ひとりが身に付けておくと良いでしょう。