「仕事のやる気が出ない」「どうしてもモチベーションが上がらない」といった経験は、どなたにでもあるのではないでしょうか。やる気が出ないとミスが続いたり、思うような成果が出せなかったりと、自己肯定感の低下につながってしまう可能性があります。また、心身の不調から「やる気が出ない状態」に陥っている場合もあるでしょう。今回は、仕事のやる気が出ない原因と対処法について解説します。
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仕事にやる気が出ないと悩む人は多くいる?
株式会社キュービックが全国の社会人男女を対象にアンケート調査を行ったところ、全体の約8割が「仕事へのやる気が出ないことがある」と回答。さらに、そのうちの23.6%の人が「やる気が出ない事が原因で業務や日常生活に影響がある」と、深刻な状況を経験しています。「仕事へのやる気が出ないことがある」の回答を年代別でみると、20代が75.0%、30代が77.2%、40代が80.9%、50代が82.0%と、年代があがるにつれてその割合があがる傾向にありました。
「自分だけが仕事のやる気が出ないのではないか」「仕事のやる気が出ないけど他の人は頑張っている」など後ろめたさを感じたり、悩んだりしたりする方もいるかもしれません。しかし、調査からもわかるように仕事にやる気が出ない時があるのは、多くの人が経験していることだといえるため、悲観しすぎることはないでしょう。
【参考】株式会社キュービック「社会人の約8割が自覚!仕事のやる気が出ないのは当たり前?原因や対処方法を1,023人に調査」
仕事のやる気が出ない5つの原因
「仕事のやる気が出ず思うように業務が進まない」というのは、程度や頻度に差はあれど、働く人なら誰しもが経験したことがあるでしょう。やる気に満ち溢れている人と比較して、つらい気持ちになることもあるかもしれませんが、過剰に自分を責める必要はありません。その日の体調や気持ちによって、仕事へのモチベーションが上下するのは自然なことです。まずは、仕事のやる気が出ない原因を探り、状況を改善するヒントを見つけてみましょう。
心身が疲れている
肉体的・精神的な疲れが溜まっていると、やる気を出しづらくなります。残業や休日出勤などで十分な休息がとれていない、睡眠不足が続いているような状態では、思考がまとまりにくくモチベーションも低下してしまいます。
また、ノルマに追われている、仕事上の人間関係に問題があるなどといったプレッシャー・ストレスが睡眠や食事に影響をもたらすこともあります。考えごとをしてしまいなかなか寝付けない、食事ものどを通らない、あるいは口寂しくて食べすぎてしまう、といったことも起こりうるでしょう。
心身の不調がネガティブに影響しあうと、さらに調子が悪化し、消耗していくループに陥る可能性もあります。このような状況が長期間続くと、ある日突然、糸が切れたようにやる気が出なくなってしまうこともあるでしょう。
仕事にやりがいを感じられない
仕事にやりがいを感じられない状態でも、やる気を失いやすくなります。仕事に慣れたことで新鮮さがなくなり飽きてしまった、毎日同じ繰り返しでマンネリ化している、目標が高すぎて自信を持てない、同僚や上司との関係性が良くない、ミスを強く責められたなどの理由で、仕事への意欲が低下することが原因です。このような場合、一時的ではなく、やる気が出ない状態が長期間続く可能性があります。
努力が評価や報酬に反映されない
正当に評価をされていないと感じると、働く意味を見失い、やる気が低下してしまうことがあります。例えば、頑張っているはずなのに評価が低い、成果に対して報酬が見合わない、といったケースです。
会社や上司に認めてもらえないなら頑張る意味がない、いくら頑張っても無駄だと失望したり、あるいは自分はこの会社で役に立っていないと感じて、自信を失ってしまいます。
プライベートで悩みを抱えている
プライベートが充実している、安定した暮らしができていると、それを維持するために仕事も頑張ろうと思えるでしょう。しかし、家族・恋人・友人との関係、自分の健康問題など、プライベートに悩みがあると、やる気が下がってしまいます。モチベーションが高い人でも、思いがけないトラブルなどによって急にやる気を失う場合もあります。
職場の人間関係が良くない
職場の人間関係が良くない場合も、仕事へのモチベーションを下げる原因になります。例えば、上司のことが尊敬できない、部下とコミュニケーションが取りにくい、同僚と壁を感じるなどが挙げられます。このような状態では、周囲とスムーズに連携を取れなくなり、仕事に対して悪影響が出てしまう可能性があります。
職場の人間関係が良くないと、職場のメンバーと成功しようといった前向きな気持ちも低下し、その結果メンタルが後ろ向きになったり、ストレスやつまらないといった気持ちを抱え込んだりと、仕事へのやる気を失ってしまうでしょう。
仕事のやる気が出ない時におすすめの8つの対処法
仕事のやる気が出ないと、仕事が停滞したりミスが続いたりして精神的に消耗し、悪循環に陥ってしまいます。さまざまな対処法の中から、自分に合ったものを試していきましょう。やる気が出ない原因を踏まえて、なるべく早めに対処することが大切です。
生活習慣を見直す
まずは生活習慣を見直しましょう。生活が乱れていると、思考力も低下しがちです。忙しいからと食事を抜いたり、同じものばかりを食べたりせず、栄養バランスを意識した食事を心がけます。
また、夜更かしでストレスを解消するのではなく、きちんと睡眠をとることも大切です。運動も、すっきりと前向きな気持ちになる、適度な疲労で心地よく眠れるなどの効果が期待できます。
周囲の人に相談する
ひとりで抱え込まず、周囲の信頼できる人に相談してみると、解決への道筋が見えてくることもあります。家族や友人へ、悩みや不安を正直に伝えるだけでも、気持ちが楽になったり、解決策を提示してもらえたりするかもしれません。
仕事のサポートが必要な場合や、評価に納得がいかない時は、思い切って上司に相談しましょう。誰に相談したらいいかわからない場合や、原因が身近な人にあって相談できないといった場合は、外部のカウンセリングサービスを利用するのがおすすめです。勤務先が従業員ケアの一環としてカウンセリングサービスを契約しているケースもあります。匿名で相談でき、プライバシーが守られるので、安心して利用できます。
セルフモニタリングで自分の状態を正しく知る
セルフモニタリングとは、自分の心身の状態を継続的かつ注意深く観察し、客観的に分析して、ストレスの原因やストレス反応を明確にするものです。やる気が出ない原因を俯瞰的に捉えることで、気持ちの整理にもつながります。
具体的な「セルフモニタリング」の実践方法は以下の記事で紹介しています。
原因を書き出し「ストレス」への対処をする
ストレスへの対処法の一つに「ストレスコーピング」があります。ストレスコーピングとは、自身のストレスを理解した上で、上手に対処しようとするセルフケアのことです。主なアプローチ方法は5種類あり、ストレスの内容に応じて実践する必要があります。
ストレスコーピングを行うときは、ストレッサーとして考えられるものをリストなどに書き出します。
(※ストレッサー=ストレス反応を起こす外部環境からの刺激です。物理的ストレッサー(騒音等)や心理的社会的ストレッサー(葛藤等)など、大きく4つに分類されます。)
そして、主体的に解決しようという意識、または対処しているという自覚を得ながら、自分に合ったコーピングを選び取ることが大切です。
具体的なストレスコーピングの方法は、以下の記事で紹介しています。
小さいことでも何かやってみる
仕事にやる気が出ない時は、とにかく小さなことでも何かやってみることが大切です。布団から出て身支度をする、朝食を食べる、音楽を聴く、ストレッチをするなど普段と変わらないことでも構いません。
いつものルーティーンを黙々と行うことで脳が働き、自然の心身が動くようになります。「今日もちゃんとできた」「今日はこれをした」という達成感を得られ、負の感情から抜け出せるようになります。
ポジティブな言葉を使う
仕事にやる気が出ない時こそ、あえてポジティブな言葉を使うようにするのがおすすめです。どうしても仕事にやる気が出ないと、「疲れた」「つまらない」「帰りたい」「辞めたい」などネガティブな言葉を使ってしまい、より気持ちが落ち込んでしまいます。
実際はネガティブな気持ちであったとしても「今日はうまくいく」「あと少しで終わるから頑張ろう」など前向きな言葉を口にすれば、実際にそう思えるようになり、モチベーションが復活するでしょう。
プライベートを充実させる
やる気が出ないことを気にして休日も仕事をしたり、仕事のことを考えていたりすると、心身ともに休まりません。仕事とプライベートを切り分け、心身のコンディションを整えられるようなことをやってみましょう。「プライベートを楽しむために、仕事も頑張ろう」と思うことで、仕事に対してポジティブな気持ちで向き合えます。
<例>
- ゆっくり寝て体力を回復する
- マッサージや温泉に行ってリラックスする
- 趣味に打ち込む
- 買い物や旅行に行く
- スポーツやサウナ、ヨガなどをして汗をかく
- 髪型やファッションを変えてみる
上司や人事に配属の相談をする
「ここにいても自分は成長できない」「やりたい仕事ができない」などの悩みがある場合は、思い切って上司や人事との面談の場を設けてもらいましょう。理想とするキャリア設計や労働環境について希望を伝え、それに沿った部署へ異動の意向を伝えるのも手です。
自分のやる気をなくしている原因が何なのか、その原因はすぐに取り除けるのか、それとも段階を踏む必要があるのかなど、多面的に他者と話し合うことで、自分では気付かなかった新たな可能性が見つかることもあります。
仕事にやる気が出ない従業員に企業側が気付く/対応する方法
仕事へのやる気が出ない従業員のアラートにいち早く気付き対応するために、人事としてできる施策を紹介します。
■管理職による1on1を促し、従業員の変化を注視する
1on1とは、上司と部下が1対1で行う個人面談です。従来の面談と異なるのは、上司が一方的に指導するのではなく、現在の悩みや課題、目指したいキャリア像などを、部下が主体となって話す点です。1on1で従業員の不満や不安を傾聴し、業務状況や心身状態を管理職に把握させましょう。組織に重要な「心理的安全性」を高めるためのコミュニケーションを取ることも大切です。
■各種サーベイの実施
組織や従業員の状態を把握するために、ストレスチェックやエンゲージメントサーベイ、パルスサーベイなどを実施するのも一つの方法です。面談では本音を聞き出しづらいかもしれませんが、各種サーベイは従業員が自分自身と向き合う機会となります。
年1回、ストレスチェックを義務として実施している企業は多いかもしれませんが、その後の変化を追うためには定期的にサーベイを行い、よりタイムリーに状態を把握することが重要です。
メンタルの不調が隠れている場合も
「ただ一時的にやる気がないだけだ」「よくあることだ」と放置していると、気づかぬうちに症状が悪化してしまう場合もあり、注意が必要です。さまざまな対処法を試してもやる気が持ち直さず、仕事や生活に影響が出る場合は、メンタル面の不調が隠れている可能性がありますので、無理をせず医療機関を受診しましょう。
「仕事のやる気が出ない」を解決するにはセルフケアと企業側のサポートも重要
仕事のやる気が出なくなってしまうことは、誰にでも起こりうるものですが、ストレスに適切に対処し、セルフケアを行うことで、やる気が持ち直す可能性があります。自分の状態を正しく知るために、セルフモニタリングを行ってみるのもよいでしょう。
また、企業側・マネジメント側からのアプローチとして、各種サーベイや1on1の実施なども有効です。従業員が自分自身の不調に気づくきっかけになるだけでなく、不調のサインを出す従業員への早期支援にも役立つでしょう。従業員が心身ともに健やかに働くためには、従業員・企業側双方によるメンタルヘルスケア対策が重要です。