健康経営銘柄は、経済産業省と東京証券取引所が共同で健康経営に取り組む企業を評価して選定・公表されます。第9回となる健康経営銘柄2023では、31業種から49社が選定されました。今回は、健康経営銘柄2023の選定プロセスや選定基準、特に重視された評価基準についても解説します。あわせて、選定企業の中から健康経営に取り組む企業の事例も紹介します。
目次
健康経営銘柄とは?
健康経営銘柄とは、経済産業省と東京証券取引所が共同で、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる企業を選定し公表するものです。
企業の健康経営の取り組みが、株式市場等において適切に評価される仕組みをつくるべく、2015年より開始した顕彰制度です。本制度は日本再興戦略に位置づけられた「国民の健康寿命の延伸」に関する取り組みの一つとして始まりました。
「健康経営」と「健康経営銘柄」について、詳しくは以下記事で紹介しています。
健康経営銘柄2023の選定について
経産省は2023年3月8日、第9回健康経営銘柄2023として31業種から49社を選定しました。「令和4年度健康経営度調査」の回答結果をもとに、健康経営優良法人(大規模法人部門)申請法人の上位500位以内の上場企業から、1業種1社を基本として選定しています。
健康経営銘柄の概要や取得のメリットは、以下の記事で紹介しています。
健康経営銘柄2023の選定プロセス
健康経営銘柄は以下のようなプロセスを経て選定されました。
プロセス①
「健康経営度調査」の実施
プロセス②
評価基準に基づき、①の回答企業の中から「健康経営」に優れた企業を選出
・結果評価が上位500位以内かつ必須項目をすべて満たしていること
・重大な法令違反等があれば選定対象から除外
プロセス③
財務省指標スクリーニングや加点等を経て健康経営銘柄2023に選定
健康経営銘柄2023の選定基準
健康経営銘柄2023の主な選定基準は以下の通りです。
1.重大な法令違反等がないこと
2.健康経営優良法人(大規模法人部門)申請法人の上位500位以内の上場企業である。
3.ROE(自己資本利益率)の直近3年間平均が0%以上、または直近3年連続で下降していない企業を
対象とし、ROEが高い企業には一定の加点を行う。
4.前年度回答有無、社外への情報開示の状況についても評価し、一定の加点を行う。
健康経営銘柄2023の選定基準および健康経営優良法人2023(大規模法人部門)の認定要件は以下の通りです。
2023年健康経営銘柄で重視された評価基準
健康経営銘柄2023の選定において、特に重視された評価基準は次のようなことが挙げられます。
社内外への情報開示の促進
社内外への浸透に関する取り組みがより詳細に問われました。
・経営会議などでの議題化の具体的な内容を問う形式に変更。 (経営層の関与度合い)
・各種施策対象者、参加者の割合を小数点第1位まで回答。 (従業員への浸透度合い)
・取引先の健康経営の支援の内容を問う形式に変更。 (取引先の巻き込み度合い)
各社のフィードバックシートは、健康経営優良法人認定事務局ポータルサイトにて公開されています。
データ活用の促進
健康経営銘柄の選定については、健康診断データの活用有無も問われました。データを利用することで、課題の改善が促進されます。
・40歳未満を含む従業員の健診情報の共有状況
大規模法人部門では、7割以上の回答法人が40歳未満の従業員の健康診断データを保険者に共有していました。
・パーソナルヘルスデータの活用を通じたヘルスリテラシー向上
大規模法人を中心に、自身の健診情報をアプリやホームページなどで閲覧できる環境整備が進んでいます。
戦略との結びつきを意識した効果検証の促進
業務パフォーマンス指標(プレゼンティーイズム、アプセンティーイズム、ワークエンゲージメント)の測定有無、効果検証の手法が問われました。
・業務パフォーマンス指標の測定・開示状況(評価対象)に、経年変化(評価対象外)も追加。
健康経営の結果を評価・分析しながら積極的に情報開示することが重要です。
健康経営銘柄2023に選ばれた企業
2023年3月に健康経営銘柄に選定された企業は以下のとおりです。今回は31業種49社の企業が選定されました。
出典:経済産業省「健康経営銘柄2023企業一覧」
2023年健康経営銘柄に選定された企業の取り組み事例6選
最後に、2023年の健康経営銘柄に選定された6つの企業の取り組み事例を紹介します。
アサヒグループホールディングス株式会社
アサヒグループホールディングス株式会社では、喫煙・飲酒を含めた生活習慣の改善を重点課題に掲げ、「特定保健指導の強化」と「生活習慣改善キャンペーンの実施」に注力。
特定保健指導においては、アクティビティや食事、運動、睡眠、体重を管理できるウェアラブル活動量計を導入し、対象者が取り組みたいプログラムを自主的に選択できるようにしています。このプログラムやフィードバック、健康保険組合との連携強化などにより、特定保健指導実施率は前年比で約1.7倍と大きく改善が見られました。
オムロン株式会社
オムロン株式会社では、健康経営の取り組みを加速させるため、産業医を始め看護職、カウンセラーなどの産業保健スタッフの配置について、法令を超えた独自基準を設置し、きめ細やかな健康管理を行っています。
2021年からはメンタルヘルスに注力し、社内の看護職によるオンラインイベントを開催。従来からの社内ウォーキングイベントに加え、ラジオ体操動画の配信、ヨガ・筋トレ等のセミナーもオンラインで開催されました。その結果、社員のセルフケア実践度の向上や、目標指標の達成などプラスに作用しています。
日本航空株式会社
JALグループは企業理念「全社員の物心両面の幸福を追求」の実現を目指し、社員・会社・健康保険組合が一丸となって取り組む健康づくり、「JAL Wellness宣言」を掲げています。JAL Wellnessでは生活習慣病、がん、メンタルヘルス、たばこ対策、女性の健康の5つを重点項目とし、全国の事業所に健康推進役であるWellnessリーダーを配置して、従業員とその家族の心身の健康づくりに取り組んでいます。
また男性に多いとされる受動喫煙問題や、乳がん・子宮がんなどの婦人科疾患、PMS・更年期障害など、男性と女性で分けた上での目標も設定。
さらに会社が保有する健康データと、健康保険組合が保有しているデータを調査・分析することにより、会社と健康保険組合が一丸となって従業員とその家族の健康状態や病気への予防に取り組んでいます。
豊田通商株式会社
2021年4月より、8つの健康習慣(適正体重、運動、飲酒、禁煙、朝食摂取、間食、睡眠、ストレス)の改善に取り組む「健康チャレンジ8」を実施しています。自身の「健康宣言」を行い、改善に取り組むことで経営課題の達成を目指しているのです。
実際に、「健康チャレンジ8」の実践個数が多いほど、生活習慣病の数値異常者や高ストレス者は少ない傾向にある結果が得られています。またヘルスリテラシー、ワークエンゲージメントは高く、プレゼンティーズムの損失割合は低い傾向にあることがわかっています。
株式会社丸井グループ
創業当初から、人の成長の基盤として「健康」を位置づけ重要視している丸井グループ。「丸井健康保険組合」を設立し自前の健診施設で人間ドックなどを行う他、ウェルビーイング推進部、人事部、そして各事業所が連携しながらさまざまな健康づくりに取り組んでいます。
従業員が活力高く活動するために、組織層への影響力が高い役員・部長・課長層を対象に、1年間のレジリエンスプログラムを実施しています。2022年3月段階で累計150名が受講して、受講後には受講者の職場のストレス度が改善、「仕事の意義・働きがい」や「個人の尊重」などのワークエンゲージメントの指数が上昇、仕事に対する意識や姿勢に変化が出ているといった結果が得られました。
株式会社アドバンテッジリスクマネジメント
当社アドバンテッジリスクマネジメントは、健康経営銘柄に2年連続、健康経営優良法人(ホワイト500)にも6年連続で選定されています。自社のDXプラットフォームを活用し、人事情報の統合、重要指標のダッシュボード化、課題に応じた施策の実行、効果検証までのPDCAサイクルを実践しています。
ウォーキングイベントは、2022年9月以降、合計歩数が寄付につながる形式に変更し、運動と社会貢献を両立できるイベントとして生まれ変わりました。
またスマホアプリによる食事や睡眠の改善、禁煙カウンセリングの実施、女性従業員を対象とした健康関連課題への支援も行っています。
当社で行っている取り組みなど、詳細についてはこちらで紹介しています。
まとめ
従業員の健康管理や業務のパフォーマンスの向上、 エンゲージメントの向上を目的とする「健康経営」。その行いを評価する健康経営銘柄に選定されることは、企業価値の向上につながります。2023年の評価基準を踏まえて、2024年の取得に向け戦略を立てていきましょう。
当社アドバンテッジリスクマネジメントは、健康経営銘柄に2年連続で選定されました。同時に、他社の健康経営度調査票の作成にあたりカギとなる「推進計画」の土台づくりもサポートしています。
健康経営優良法人(ホワイト500含む)および健康経営銘柄取得率は97%以上(※2022年度支援実績)。詳しくはこちらから。