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【カウンセリング後に○○が良化!?】認知行動療法を用いたカウンセリングの効果と今度の課題

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「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

ストレスチェックの制度化が浸透し、メンタルヘルスに関わるサービスの必要性や取り組みにおける認識は徐々に変わりつつありますが、カウンセリングと聞くと『メンタル不調者が利用するもの』というイメージが今も根強くあるようです。
また、カウンセリングとは話を聞いてくれるだけ、話をしただけではその人が抱えている問題の解決には至らない、と考える方もいらっしゃるようです。
それは、カウンセリングを受けた効果は「安心した」、「すっきりした」、「落ち着いた」など、その人の気持ちや感情によるものが大きく、個人の受け止め方によって差があり、具体的な効果が分かりにくいからでしょう。

弊社カウンセリングサービス部門であるアドバンテッジ相談センターにおいては、認知行動療法に基づき、短期問題解決を目指したカウンセリングサービス提供を実践しております。
おかげさまで、顧客満足度調査では、利用者の皆様から高評価をいただいております。
しかし、今後メンタルヘルスの問題だけではなく、幅広くカウンセリングサービスを利用いただくためには、満足度やお気持ちの面だけではなく、カウンセリングの効果について検証を行い、説明していく必要性があると考え、カウンセリングを受けた方を対象としてデータの取得をし、「日本キャリア・カウンセリング学会」にて、結果を発表致しました。
今回は、アドバンテッジ相談センターにて学会発表したカウンセリングの効果についてご紹介させていただきます。

効果検証のためのデータ取得・支援方法

今回、データ取得対象となったのは、カウンセリングサービスを利用している弊社契約企業の従業員様とご家族様の計14名、2021年6月21日~2021年10月31日に実施された予約カウンセリングサービスにおいて、アンケートを取得しました。
14名のうち4名に精神疾患診断があり、男女比率は7名:7名(選択なし:0名)でした。

カウンセリング開始の初回にpreデータ、カウンセリング終了の終結回(または5回目)にpostデータを取得。取得する質問項目は弊社ストレスチェックでも使用しているストレス原因とメンタルタフネス度の項目を抜粋し使用、カウンセリング利用の前後においてストレス原因とタフネス度に変化があったかを検証しました。

ストレス原因とは「仕事やプライベートにおいてストレスと感じる要因」のことで、出来事や状況などの環境要因を意味します。

認知行動療法を用いたカウンセリングの効果と今度の課題_ストレス原因

また、メンタルタフネス度とは「ストレスに対する強さ・耐性」のことで、ストレス原因の影響を強めたり、弱めたりする個人要因を意味しています。
認知とは、物事の捉え方や考え方としてイメージしていただけると分かりやすいと思います。同じストレス原因を抱えていたとしても、人によってストレス反応が異なるのは、この個人要因が関係しています。

認知行動療法を用いたカウンセリングの効果と今度の課題_メンタルタフネス度

ストレス原因とメンタルタフネス度、そして周囲からのサポートの3つの要素が「ストレス反応」に影響を及ぼすと言われています。

認知行動療法を用いたカウンセリングの効果と今度の課題_アドバンテッジタフネス概念図

アンケートデータの結果

カウンセリング初回と終結回に取得したアンケートデータを比較すると、ストレス原因指標メンタルタフネス度指標、ともに全体傾向として偏差値が増加していることが確認できました。質問結果の得点は平均値に換算され、値が高いほど良好な状態を意味します。

ストレス原因指標41.9→45.2(3.3上昇)    
メンタルタフネス度指標40.5→47.1(6.6上昇)

認知行動療法を用いたカウンセリングの効果と今度の課題_アンケートデータ

また、ストレス原因メンタルタフネス度のそれぞれの下位因子の結果を見てみると、ストレス原因指標においては、「仕事の難しさ」「職場の安全性」の因子で良化、

仕事の難しさ  39.8→46.5(6.7上昇)
職場の安全性  43.3→52.0(8.7上昇)

メンタルタフネス度指標においては、「対処できる思考」「物事を重く受け止める傾向」「相談行動」の因子で良化していたことが確認できました。

対処できる思考      38.0→44.5(6.5上昇)
物事を重く受け止める傾向 36.8→41.7(4.9上昇)
相談行動         54.2→59.9(5.7上昇)

考察

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結果として、短期解決型カウンセリングの介入を通して、相談者の認知・行動の両方において変化が見られました。
ストレスを感じた場面において、「何とか乗り切れるだろう」「やれるはずだ!」と自信をもって考えるようになった(対処できる思考)、目の前の問題に対して必要以上に深刻に受け止める(物事を重く受け止める傾向)ことなく、考えられるようになったという可能性があります。
また、困っているという場面においては、自らサポートを求めていく(相談行動)ことが増えた、ということにもなります。

カウンセリングの介入によって、物事の捉え方が変わることや、行動量が増えることはある程度予測できたものでしたが、ストレス原因が良化したことは予想外の結果でした。
ストレスの原因というのはクライアントが置かれている状況やクライアントに起きている出来事といった環境要因ですので、カウンセラーが直接的に介入することが難しいものです。どのような理由でこういった変化が生じたのか、その機序ははっきりしていませんが、

「物事を重く受け止める傾向」の値が改善していることにより、目の前の問題を過大に評価してストレスを蓄積するという認知傾向が変化した
「相談行動」が良化したことで「職場の安全性」をよく感じるという形で認知傾向が変化した

こういった仮説を立てることが出来るかもしれません。

つまり、相談者自身が自分の置かれた環境に対してリフレーミングこれまで認知していた枠組みを変えて、異なる枠組みで捉えなおすこと)が起きたと考えられます。
今までの枠組みを変えて目の前のことや状況を見てみると、ストレスの原因と思っていたことは、そこまで深刻な問題ではないかもしれない、と。
例えばですが、カウンセリングを受ける前は、「仕事は対処が難しい、周囲にも相談できない、目の前の仕事をこなすことの出来ない自分には価値などないのではないか…」と感じていた相談者が、カウンセリングを通じて「相談してみてもよいかもしれない、やってみれば案外仕事も何とかなるかもしれない、職場では自分の意見を言ってもよいかもしれない」と変化したと考えられるわけです。

そして、初回と終結回でデータを取得して終わりではなく、取得したデータは相談者に共有し、「これだけ結果を変えることが出来た」「問題解決に向けて前進している」と、これまでの取り組みについてフィードバックしていくことも大切です。
こういった振り返りから自身の変化を知ることが出来れば、自己肯定感を上げて行くことにもつながり、更にカウンセリングの効果を高めていく可能性もあります。

今後の課題

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今回の検証において、認知と行動に変化が見られたものの、今後取り組むべき課題も残りました。
まずは対象人数が14名であり、データに偏りが出る可能性もあったため、十分な対象者数とは言えないことです。信頼性を上げて行くためにも対象人数を増やして効果検証を行う必要があります。
また、認知面と行動面の変化が見られたことまでは確認できたのですが、なぜこういった変化につながったのか、そこまで明確にすることが必要です。そのモデルが分かれば、より一層カウンセラーからのアプローチも効果的に行うことが出来ます。
こういった課題に取り組むため、またサービスのクオリティを上げて行くためにも継続的な検証が必要となります。引き続き効果検証を行い、結果についてご報告できるよう進めてまいります。

当社では認知行動療法に基づくカウンセリングサービス「アドバンテッジ タフネス カウンセリング」をご提供しております。1分でわかるサービス概要動画もございますので、ご興味のある方はこちらからご確認の上、お気軽にお問い合わせください。

株式会社アドバンテッジリスクマネジメント
「人」ソリューション部 カウンセラー

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【筆者プロフィール】

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部
導入企業数3,140社/利用者数483万人のサービス提供実績と、健康経営銘柄に3年連続で選定されたアドバンテッジリスクマネジメントの知見から、人事領域で関心が高いテーマを取り上げ、押さえるべきポイントやつまずきやすい課題を整理。人事担当者や産業保健スタッフの“欲しい”情報から、心身のヘルスケアや組織開発、自己啓発など従業員向けの情報まで、幅広くラインアップ。「ウェルビーイングに働く」ためのトピックスをお届けします。

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