業務を円滑に進めていく上で欠かせないコミュニケーション。しかし、「きちんと伝わっていなかった」「情報が間違って伝わっていた」などによって、コミュニケーションエラーが起きることがあります。コミュニケーションエラーが生じるのは、伝え方の問題だけではなく、職場の環境そのものに原因があるかもしれません。本記事では、職場でコミュニケーションエラーが発生する原因や、伝達ミスを防ぐ対策についてご紹介します。
目次
コミュニケーションエラーとは
コミュニケーションエラーとは、意思疎通や情報共有がうまくできないことで生じるミスやトラブルの総称です。主に伝達不足(情報のズレ)、伝達の欠如、誤情報の伝達の3つに分類されます。まずは、それぞれの定義や内容についてチェックしていきましょう。
伝達不足/認識のズレ(ミスコミュニケーション)
まず挙げられるのは、「コミュニケーション不足」によるエラーです。伝えるべき内容を省略したため情報が不十分だった、伝えた側と受け取った側の間で認識のズレが生じていたなどのケースが当てはまります。正しく伝えたつもりでも、受け取った側が勘違いしていたり、理解していないのにうやむやにしたりすることも該当するでしょう。
また、曖昧な表現で伝えたために、受け取った側が伝える側の意図とは異なる解釈をして齟齬が生じる場合もあります。後から認識のズレが発覚すると、言った言わない論になり、トラブルにもつながりやすいでしょう。
このほか、情報を受け取る必要があるにもかかわらず、聞きに行かなかったことでエラーが生じることもありますので、併せて認識しておきましょう。
伝達の欠如(ディスコミュニケーション)
本来はコミュニケーションをとるべきところであるにも関わらず、そもそもやり取りができていないこともあります。「伝えていない」「相手に情報が届いていない」状態です。ディスコミュニケーションは、職場全体の「心理的安全性」の低さが原因となっている場合もあります。
心理的安全性とは、立場や役職などに関わらず、自分の意見や主張を発言できる状態のことです。適切なコミュニケーションが行えていない状態だと、業務に大きな支障をきたすおそれがあるため、改善が必要です。
誤情報の伝達
根本的に、「伝えた情報自体が誤っていた」ことを原因とするエラーもあります。双方に認識のズレはないものの、誤った情報がそのまま伝わってしまいます。正確な情報のやりとりを徹底することで防げる可能性があります。
コミュニケーションエラーが発生する原因
コミュニケーションエラーが起きる原因は、一つだけではありません。双方の心理状態や、職場の環境・雰囲気なども影響しているとされます。
伝えたはず/伝わっているはずという思い込み
情報を伝える側の「伝えたはず」「理解してくれたはず」という思い込みが、コミュニケーションエラーを招いてしまうことがあります。受け取る側にきちんと伝わっていないにもかかわらず、相手に確認をしていなかったり、相手からレスポンスがないのにそのままにしたりしておくと、エラーが生じるリスクが高まります。
また、思い込みは、相手とのオープンなコミュニケーションを妨げてしまう場合もあるでしょう。どんなに簡単な内容でも、情報の受け取り方には個人差があります。「言わなくてもわかるだろう」「一般的な意味はこうだから相手も同じように解釈しているだろう」のように、「相手が自身と同じ価値観を持っているはず」という無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)が、認識のズレを生じさせる可能性も否定できません。自分では気づきにくい固定観念や思い込みは、コミュニケーションエラーを引き起こすだけでなく、時にハラスメント行為につながることもあります。
情報伝達のための時間が十分にとれない
仕事が多く、コミュニケーションにかけるための時間がない、あるいは気持ちに余裕がない状態だと、伝達不足からさまざまなエラーが発生する可能性があります。忙しいと目の前の仕事が最優先になってしまうため、コミュニケーションそのものを煩わしく感じてしまうこともあるでしょう。しかし、コミュニケーションエラーによるミスが起きた場合には、解決のために時間を割くことになり、さらに伝達のための時間が十分にとれない悪循環に陥ってしまいます。
コミュニケーションが不十分
積極的なコミュニケーションが行われていない、部署間の交流機会が少ないなど、コミュニケーション習慣に乏しい職場環境が原因になっているケースがあります。やりとりは最低限で、とにかく仕事ができればいいという環境では、コミュニケーションは減ってしまいます。情報が正しく伝わったかどうかの確認を丁寧にしないため、結果としてコミュニケーションエラーが起きやすい状況が生まれてしまいます。「誰かが伝えてくれたはず」と、人任せになってしまう可能性もあるでしょう。
心理的安全性が低い
職場の心理的安全性が低いことが原因になっているケースもみられます。心理的安全性が低いと、「仕事ができない人だと思われてしまうのでは」「こんなことも知らないのかと思われそう」「反論されそうで嫌だな」など、相手からのネガティブな反応を恐れて情報伝達がスムーズにできないばかりか、そもそも伝達自体が行われないこともあるでしょう。
コミュニケーションエラーが引き起こす職場への影響
コミュニケーションエラーが起きると、業務の進捗や作業の質に大きな影響を与える可能性があります。続いては、コミュニケーションエラーがもたらす業務、職場への影響について解説します。
ミスが頻発しトラブルが起きやすくなる
コミュニケーションエラーが発生し正確な情報伝達がなされないと、人為的なミスを招く可能性が高まります。数分、数時間でリカバーできるような小さなミスはそれほど大きな問題にはならないかもしれませんが、生産性や収益の低下、場合によっては安全や人命にかかわるような取り返しのつかないミスを誘発してしまうおそれもあり、注意が必要です。さらには、責任問題や損害賠償などの訴訟につながるリスクもはらみます。大きなトラブルは企業にとっても大きな損害となり、企業のイメージダウンにつながる可能性もあるでしょう。
コミュニケーションがとりづらくなる
コミュニケーションエラーによってトラブルが発生すると、人間関係の悪化やチームワークの乱れにつながるおそれがあります。同じようなミスを恐れ、発言や発信を躊躇してしまうことでコミュニケーションが消極的になってしまうかもしれません。コミュニケーションが取りづらくなり、重大なエラーが起きる、さらにコミュニケーションがとれなくなる、という負の連鎖を招く可能性もあります。
従業員エンゲージメントの低下
コミュニケーションエラーが頻発しているような職場は、ストレスや不満を生みやすく、従業員のエンゲージメントを低下させる要因の一つになりかねません。従業員エンゲージメントが低下すると、従業員の積極性やモチベーションに影響し、業務の生産性や人材の定着率の悪化にもつながってしまいます。
コミュニケーションエラーを防ぐ対策
では、職場におけるコミュニケーションエラーを防ぐにはどのような対策が求められるのでしょうか。
5W1Hを交え、明確かつ具体的な説明を心がける
情報を伝えるときや指示を出すとき、つい「こんな感じでよろしく」「なるべく早く修正して」などの表現を使ってしまうかもしれません。しかし、このような曖昧な表現はコミュニケーションエラーを招きやすいため注意が必要です。コミュニケーションの際は、Clear(明確な)、Correct(正確な)、Complete(完結した)、Concise(簡潔な)の4Cを意識しましょう。
また、説明するときは指示語を避け、5W1Hを交え具体的に伝えます。専門用語を使用する場面や、独自の用語、本来の意味とは異なる使い方をしているワードなど、社内・部署のローカルルールに基づいた言葉があると、関係者外・別部署の人との間でエラーが発生しやすいため、言い換えや注釈などを入れるとよいかもしれません。メールやチャットなどにおけるコミュニケーションの場合は、冗長にならない説明を心がけましょう。似たような内容を繰り返し書いていないか確認する、必要に応じて図表を使うなどしてわかりやすく伝えることが大切です。
情報伝達のルールを設ける
情報が正しく伝わったかどうかをチェックするルールを用意することも、コミュニケーションエラーの防止に効果的です。例えば、情報を伝達された側が復唱する、複数人でのチェックを行うなどの方法があります。
特に重要度の高い情報を伝える場合は、こうしたルールの適用が有効でしょう。口頭のみでの伝達によって、ミスやトラブルが多発しているのであれば、伝達方法を見直すのも一つの方法です。メールや書面など、文章に書き起こすことで、伝える側は情報整理ができ、受け取る側もその当時の解釈や記憶に頼ることがなくなります。
エラー事例・対策の共有
似たようなコミュニケーションエラーが頻繁に起きる場合は、過去の失敗例を組織・部署全体で共有し、改善に役立てることも大切です。単に共有して終わりではなく、なぜエラーが発生したのか、その時どのような対応をすべきだったかなどをチームで話し合い、再発を防ぐための具体的なルールを導き出し、今後のエラー防止につなげます。そのうえで、メンバー全員で継続的に確認し共有することが重要です。
コミュニケーションツールの活用
コミュニケーションを円滑にしてくれるようなツールの活用も有効な手段です。チャットツールや社内SNS、Web会議システムなどの導入を検討してみましょう。職場環境や目的に合わせてツールを使い分ける方法もあります。
円滑なコミュニケーションができる環境づくり
円滑にコミュニケーションが行える環境づくりも大切です。生産性を重要視するような職場であっても、コミュニケーションや確認にかける時間をきちんと確保する、コミュニケーションを最優先するなど、職場やチーム内にコミュニケーションをとる習慣を定着させましょう。職場の心理的安全性を高め、誰もが臆することなく自分の気づきや考えを発言できる状況が作られると、他のメンバーが気づき得なかったエラーの原因を発見できるかもしれません。
気軽にコミュニケーションを図ることのできる環境づくりの方法としては、フリーアドレス制の導入、ランチ会をはじめとした社内イベントの開催などが挙げられます。
また、コミュニケーションエラーを誘発しやすい特定の業務がある場合は、名称を統一する、作業をマニュアル化するなどして、エラーが起こりにくい体制を整えましょう。
コミュニケーションエラー改善に役立つサービスのご紹介
最後に、コミュニケーションエラーの改善にお役立ていただける、当社の各サービスをご紹介いたします。
EQ(感情マネジメント)向上研修
アドバンテッジリスクマネジメントでは、ビジネスシーンにおいて必要となる対人コミュニケーションの基礎能力とされる「EQ(感情マネジメント力)向上研修」を提供しています。個々のEQを向上させることで、組織内コミュニケーションの質が高まり、コミュニケーションエラーの未然防止が期待できます。管理職を対象に研修を行うことで、組織全体のマネジメントの円滑化や、組織の生産性向上にもつながります。
研修では、EQ行動特性検査(EQI)で自身の行動傾向を可視化し、多数のワークから課題解決に向けた行動変容のヒントを習得、具体的な行動目標を策定・実行します。
メンタルタフネス度向上研修/無自覚ハラスメント防止トレーニング研修
また、全従業員向けの研修を実施することも有効です。「メンタルタフネス度向上研修」では、自分の「考え方のクセ」を振り返り、コミュニケーションの場面で困難に直面した時にも前向きに対処できるスキルの習得を目指します。 (メンタルタフネス:困難に直面しても、悪い感情に振り回されずに前向きに対処できる能力)
「無自覚ハラスメント防止トレーニング研修」は、無自覚の偏見(アンコンシャス・バイアス)についての理解を深める研修です。誰もが持っている偏見や固定観念が、気づかぬうちにハラスメント行為に繋がっている可能性を理解します。無自覚の偏見に気づきやすくするコツや、共感力を高める方法を体感的に学び、コミュニケーションエラーの防止に役立てます。
アドバンテッジpdCa(ピディカ)
「アドバンテッジ pdCa(ピディカ)」は、組織課題を見える化し改善を促進するパルスサーベイです。短期的かつ高精度な現状把握により、コミュニケーションエラーの要因となりうる課題の発見が可能です。
心理的安全性を高めエラーが起こりにくい職場へ
コミュニケーションエラーは、情報の伝え手と受け取り手の思い込みや、コミュニケーション自体が不十分であるために起きてしまいます。伝達時のルールを設ける、具体的な説明をするなど、個々の伝達シーンでエラー防止を図ることも重要ですが、組織全体のコミュニケーションに問題がないか、チームの環境に目を向けることも大切です。