SNSなどでは、メンタルブレイク(メンブレ)という言葉をしばしば目にすることがあります。メンタルの不調や精神的なストレスを抱えている人は増加傾向にあるといわれていますが、メンタルブレイクを引き起こしてしまう原因はさまざまです。今回は、メンタルブレイクの意味や原因、症状などについて詳しく解説します。
目次
メンタルブレイクとは?
まずは、メンタルブレイクの意味についてチェックしていきましょう。
メンタルブレイクの意味
メンタルブレイクとは、「精神」を意味する「メンタル(mental)」と、「破損、崩壊」を意味する「ブレイク(break)」を組み合わせた造語で、医学的な専門用語ではありません。精神的に追い込まれた状態や、心が壊れてしまうほど強いストレスを抱えているような状況を表します。SNSなどで若者を中心に使われている言葉で、「メンブレ」と略されることもあります。その場合、カジュアルな意図で使われることも多いです。(例:「彼氏からの返信が来なくてメンブレ中」「仕事でミスってメンブレすぎる」)
メンタル不調を感じる人は増加傾向に
メンタルの不調を感じながら働く人は増加傾向にあります。厚生労働省による「令和4年労働安全衛生調査(実態調査)」では、「仕事について強い不安や悩み、ストレスを感じていることがある」と回答した人は82.2%にのぼりました。前年の同調査では53.3%であったことから、ストレスを抱える人は顕著に増加しているといえます。
メンタルブレイクの要因となる「ストレス」
メンタルブレイクしてしまう主な要因は、ストレスです。ただし、ある1つのストレスがメンタルブレイクを引き起こすことは少なく、いくつものストレスが積み重なってしまうことで心や体に悪影響を及ぼすといわれています。また、どのようなことをストレスに感じやすいのか、どの程度のストレスを感じるのかは、人それぞれ、あるいはその人の状態によっても大きく異なります。ここでは、メンタルブレイクにつながりやすい心理的・社会的ストレスについてみていきましょう。
人間関係のストレス
心理的ストレス要因のうちで最も多いとされているのが人間関係です。例えば、上司や同僚など、会社やチームの人間関係、あるいは顧客や取引先との関係などが挙げられます。また、私生活なら、家族間やパートナー・友人などとの関係に悩みを持つこともあるでしょう。人に合わせようとするために自分の言いたいことが言えない、思い通りにならない、相手に期待しすぎてしまう、人と比べてしまうなどで、ストレスを感じることがあります。
仕事のストレス
仕事や業務そのものにストレスを感じて、メンタルブレイクが起きることも少なくありません。先述した「令和4年労働安全衛生調査(実態調査)」において、「仕事に関するストレスの内容」として多かった回答が「仕事の量」、次いで「仕事の失敗、責任の発生等」、さらに「仕事の質」と続きました。例えば、仕事の量が多いために残業が多い、有給休暇が取りにくい、責任が重くプレッシャーを感じるなどが考えられます。
一方で、自分の仕事にやりがいが持てずやる気が出ない、将来のキャリアに不安がある、解雇や倒産が心配、職場でハラスメントがある、といったこともストレスとなりやすいでしょう。一般的には喜ばしいことである「昇進」や、新しい環境に身を置くことになる「異動」や「転職」も、時に強いストレスとなり得るのです。
プライベートでのストレス
プライベートにおけるさまざまなできごとも、メンタルブレイクを引き起こすストレスとなり得ます。しばしば挙げられるのは、自分や家族の病気、身近な人の死、収入の減少、離婚などです。しかし、ネガティブなできごとだけではなく、結婚や出産、子どもの進学、引越しといった、ポジティブなライフイベントが強いストレスとなることもあります。その人の状況や周りの環境が変化すると、新たな状況に適応するために、これまでの習慣やライフスタイルを変化させなければなりません。新しい環境になじむために多くのエネルギーを費やすことになるほか、「早く慣れなければ」という焦りや緊張がストレスを生むこともあるでしょう。
ストレスの原因については以下の記事でも詳しく説明しています。
ストレスを感じやすい人の特徴
メンタルブレイクしやすい人は、ストレスを感じやすい、溜め込みやすい性格の人が多いとされています。「こうあるべきだ」「〇〇でなければならない」という思い込みが強いと、少しの失敗で落ち込んだり、理想と現状のギャップを目の当たりにしたりして、メンタルブレイクしてしまうこともあります。
【ストレスを感じやすい人の性格】
- 競争心が強い
- 融通が利かず、思い通りにならないことがあるとイライラしやすい
- 他人をコントロールしようとする
- まじめで几帳面
- 責任感が強く、完璧主義
- 心配性で、周りの人に気を遣いすぎる
また、生活リズムが不規則になっているときもメンタルブレイクしやすいでしょう。生活習慣が乱れ、自律神経のバランスが崩れると、精神の安定やストレス耐性を高める作用がある神経伝達物質「セロトニン」の分泌が減少します。すると、さらにストレスを感じやすくなり、メンタル不調の悪循環に陥ってしまうのです。
メンタルブレイクしそうな人の兆候
メンタルブレイク、すなわち精神的に追い込まれ、深刻な状態に陥ってしまうと、通院や治療が必要となることもあります。メンタルブレイクの兆候は、自分の体調や考え方など、さまざまな形で表れます。これらのサインにいち早く気づき、速やかに対処することが大切です。ここでは、メンタルブレイクを疑うべきサインについてご紹介します。
精神的なメンタルブレイクのサイン
精神的・心理的な不調のサインとしては、以下のようなものが挙げられます。
精神的・心理的な不調のサインの例
- 何もしていないのに気分が落ち込む
- やる気が出ない
- 憂鬱な気持ちになる
- ささいなことにイライラする
- マイナス思考になる
- 集中力が落ちる
- 気持ちが落ち着かない
身体的なメンタルブレイクのサイン
メンタルブレイクのサインは、体調に表れることもあります。身体的な不調のサインの例は、以下の通りです。
身体的な不調のサインの例
- 頭痛やめまいを感じる
- 腹痛がある
- ドキドキして息苦しい
- 下痢や便秘がある
- 食欲がない、または増加する
- 体がだるい
- なかなか眠れない、よく眠れた感じがしない
メンタルブレイクを予防する方法
メンタルブレイクを予防するためには、自分の抱えているストレスや心身の状態を理解し、ストレスに上手に対処していくことが大切です。最後に、ストレスとの向き合い方や、解消するための方法をご紹介します。「ストレスを解決しよう」という前向きな意識を持って取り組んでいきましょう。
考え方を柔軟にする
自分の考え方のクセを知り、柔軟な思考を持つことで、ストレスを溜めにくくしたり、軽減したりしていくことができます。あるトラブルや問題にぶつかったとき、悪い結末を想像してしまって身動きがとれなくなったり、ついネガティブな方向に考えて不安になったりする心のクセを、「認知の偏り」といいます。自分に「認知の偏りがある」と知っておくと、また同じような状況・ストレスに遭遇したときに、「うまくできたところもある」「ここまでできたからOK」「たまたま失敗しただけかもしれない」と、ものの見方を意識的に変えることができるようになり、気持ちが楽になるでしょう。難しい状況の中でも、「今自分にとって大切なこと」にフォーカスし、そのために集中する「心理的柔軟性」を高めることも有効です。
自分なりの方法でストレスに対処する
リフレッシュできることや楽しいこと、気持ちが落ち着くことなどをして、ストレスから離れることも大切です。自分に合ったストレス解消方法をリストアップした「コーピングリスト」を作っておくのもおすすめです。お気に入りの飲み物を飲む、ストレッチをするなどは、職場や仕事中にも実践できるでしょう。
【コーピングの例】
- 深呼吸をする
- 目薬をさす
- コーヒーやお茶を飲む
- 座ったまま軽いストレッチをする
- 音楽や映画鑑賞をする
- ヨガや筋トレをする
- 部屋の模様替えや整理をする
- お気に入りのカフェに行く など
睡眠と休養をしっかりととる
最も基本的なことではありますが、睡眠と休養をしっかりととることも、メンタルブレイクの防止に効果的です。睡眠不足は心身にとって大きな負担となり、ストレスへの耐性も低くなることが指摘されています。睡眠には、体の疲れを回復させるだけではなく、脳の休養・メンテナンスという役割もあるのです。必要とする睡眠時間には個人差があるものの、働く世代は、およそ7~9時間の睡眠をとることが推奨されています。生活リズムを乱れにくくするためにも、平日・休日問わず同じ時間帯に就寝・起床することを心がけましょう。
睡眠の質を上げるために、寝室の環境を整える、寝具を工夫するなどしてもよいかもしれません。眠る前のパソコンやスマートフォンの操作は、睡眠の質に悪影響を及ぼすため控えましょう。忙しいときや疲れているときは、入浴を面倒に感じてシャワーで済ませてしまうこともあるかもしれませんが、しっかりと湯船に浸かり休息することも有効です。体が温まると、筋肉や関節が柔軟になるため、肉体的な疲労が和らぐといわれています。また、副交感神経が刺激されることで、リラックス効果も得られるとされます。
悩みを相談する
ストレスでつらいときや、不安や悩みを抱えているとき、それらを一人で抱え込まず、信頼できる誰かに話を聞いてもらうことで、つらさが和らいだり、気持ちが晴れたりすることもあります。家族や友人、あるいは職場の同僚などに相談することで、新しい気づきが得られて解決策が見つかることもあるでしょう。知人に相談しづらいときは、カウンセラーなどに相談してもよいかもしれません。メンタルブレイクに陥り、深刻な状態になる前に、職場の健康相談窓口や住まいの近くにある保健所、精神保健福祉センターなど、第三者を頼ることも検討しましょう。
【人事の方へ】ストレスへ対処する力を身につけてもらうために
従業員に、ストレスに適切に対処する力を身につけてほしいとお考えであれば、研修などの学びの場を提供することも有効です。
アドバンテッジリスクマネジメントでは、自分の「考え方のクセ」を振り返り、困難に対して前向きに対処するスキルを習得する「メンタルタフネス度向上研修」を提供しています。親しみやすい観点で整理された「ストレスを感じやすい考え方のクセ」について触れ、段階的に検討するワークで自分自身の認知も振り返ります。
*メンタルタフネス:困難に直面しても、悪い感情に振り回されずに前向きに対処できる能力
また、従業員がカウンセリングを利用できるよう窓口を整えることも重要です。相談窓口は、ストレスによって心身が深刻な状態に陥る前でも、気軽に利用できることを周知し、積極的に活用してもらえるよう呼びかけましょう。
「アドバンテッジ タフネス カウンセリング」は、心理専門家によるカウンセリングサービスです。対面でのカウンセリング以外にも、メールやオンライン面談、SNSを使ったチャット相談など、従業員が気軽に利用できる相談方法をご用意しています。従来の傾聴型のカウンセリングだけでなく、出来事に対する考え方や、行動に変化を起こすことを目的とした「認知行動療法」のアプローチまで行えるため、ストレスとうまく付き合うヒントを得られます。
ストレスに適切に対処しメンタルブレイクを予防
ストレスフルな現代において、精神的に追い込まれ、メンタルブレイクに陥ってしまうケースは少なくありません。メンタルブレイクの引き金となるストレスは、人間関係や仕事の悩み、ライフイベントなどさまざまなものがあります。しかし、それらのストレスが一律にメンタルブレイクの原因となるわけではなく、ストレスの感じ方やその人の心の状態によっても変わります。メンタルブレイクを予防し、心身を健康に保つためには、自分の考え方のクセを知り、物の見方や捉え方を意識的に変えたり、自分なりのストレス解消法を身につけたりして、ストレスとうまく付き合っていくことが大切です。