ダイハツディーゼルが行う健康経営 ~健康経営の活動と業績の連動性~【特別対談】

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「アドバンテッジJOURNAL」編集部

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ダイハツディーゼル株式会社(https://www.dhtd.co.jp/)
事業内容:船舶用および汎用ディーゼル機関の製造販売
従業員数:859名(2024年3月31日時点)

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※文中記載の法人名・組織名・所属・肩書き・データなどは、すべて取材時点(2024年7月)での情報です

アドバンテッジ対談レポート_ダイハツディーゼルが行う健康経営の活動と業績の連動性

健康経営に取り組む背景

鳥越:健康経営に取り組みたいと思われた社長のきっかけや思いをお聞かせください。

堀田:当社は歴史もあり、ありがたいことに足元では業績も悪くないのですが、コロナ禍に入った頃、今まで通りのやり方ではダメだと気づきました。そこで、従業員一人ひとりの力をいかに押し上げていくかという点に力を入れたいと考え、人的資本経営に注力しました。個人の成長と会社の成長のシナジーによって業績が上がり、それが給料アップややりがいに繋がるという正のサイクルを作りたいと思い、それを具現化する手段として健康経営に取り組んでいます。人材の質を上げていくことが大切だと実感し、改めて勉強中です。あと、私自身「何でも取り組みましょう精神」が強いのでチャレンジしたというのもあります。

鳥越:弊社も「何でもやりましょう」です。

堀田:「何でもやりましょう」とは言っても失敗を恐れてやらない従業員もいるでしょう。失敗を恐れない文化にしていく必要がありますが、健康経営については産業保健スタッフの長野さんが尽力し、積極的なチャレンジができています。

鳥越:御社の取り組みの結果や数値を拝見しましたが、努力されていることがわかります。ストレスチェックなどのサーベイをやりっぱなしの企業が大半ですから。弊社が提供しているソリューションを導入していただいている会社も3、4割ぐらいかな、と。もちろん独自の施策に取り組む企業様もありますが、ほとんどは毎年結果を見て「今年はここが良かった・悪かった」で、何もせず終わってしまうことも多いです。

堀田:結果を踏まえて改善していくのが大切ですよね。

鳥越:「POWER! FOR ALL」という御社のブランドステートメントもそうですが、心と体が健全だからこそ会社の目的が達成できるようになったというのは素晴らしいと思います。

堀田:健康経営の活動と業績が連動するようになれば、従業員も取り組む意義への実感が湧くでしょう。「ますます健康経営に取り組みたい」という風土にしたいです。

鳥越:先ほど「人的資本」とおっしゃっていましたが、健康経営に限らず人的資本経営でも「会社の本当の力は従業員だから、人材に関する情報を開示しよう」という動きですよね。

堀田:コロナ禍による環境の変化もあっていよいよ危機感も出てきて、健康経営という切り口で会社を変える・動かす・成立させていく必要がありました。

健康経営における経営層の役割

鳥越:健康経営優良法人認定においては、大規模法人部門だと3,500社以上が調査票を出しています。調査票は書くけど実は取り組む実績をつくるための“表面だけ”の企業も少なくない中で、御社は職場改善を通してエンゲージメントの数字もすごく改善されていて素晴らしいと思います。

堀田:まずはトップダウンで経営層から全従業員に健康経営の重要性を伝えることが大切だと思っています。実際、ダイハツディーゼルを支えているグループ会社の現場に、管掌役員の水科さんが足を運んで、一人ひとりの悩みや組織の問題をヒアリングして、さまざまな壁をなくしていこうとしてくれました。ヒアリングを踏まえて、一人ひとりがやりがいをもって仕事に取り組めるようにしたこともエンゲージメント向上につながったと思います。

水科:従業員の声を聞くなかで「ダイハツディーゼルがやろうとしていること」が徐々に伝わり始めていて、良い方向に向かっていると感じます。

鳥越:従業員がきちんと健康経営を認識しているのも重要なポイントです。健康経営を一生懸命やっているけど、従業員はあまり知らないという企業も結構あるんですよ。

堀田:当社はグループで1,300名程度なので、一人ひとりの顔が見られる会社です。私も現場に顔を出すようにしています。

鳥越:結局会社がどれくらい本気で取り組んでいるかは、トップの経営層がいかに勉強しているかを従業員に見せられるかにかかっています。御社は、健康経営を行うのは流行りだからではなく、まず目的があってその目的のために健康経営宣言をしていますので、その本気さを見せるのが一番大切なポイントだと思います。

堀田:健康経営のために必要なリソースを確保し、効果的な施策を実行できるように従業員をサポートするのも経営の責任です。働き方改革としてワークライフバランスも推進して、従業員がより働きやすいと思えるように環境を整えたいです。

ダイハツディーゼルの健康経営の独自施策

堀田:運動する文化が徐々に根付き始めた気がします。当社は「健康チャレンジ8」を推進しており、2023年度に実施率を調査したところ4点以上の実施は57%でした。

①睡眠熟睡できている
②朝食毎日食べる
③間食夕食後寝るまでの間食は週2日以下
④適正体重BMI25以下
⑤運動1日30分以上の運動を週1日以上
⑥飲酒飲まないか1日1合まで
⑦タバコ吸わないか禁煙中
⑧ストレス多い方ではない
健康チャレンジ8 ※1項目1点

堀田:他にも健康測定として、体験しながら学べる場を従業員に提供しています。本社では、 2023年と2024年は「正しい歩き方を学ぶ」をテーマに歩行年齢測定を実施しました。

水科:まだまだ参加割合を上昇させる必要があると思っているのですが、仕事の合間に参加いただくので、参加を促す施策にも苦労しているところです。

鳥越:業績が良くなると仕事も忙しくなってしまうというのは急成長している企業に共通した悩みですね。業績が上がると採用にも影響があるのではないですか?

堀田:キャリア採用に力を入れていますが、まだまだ人手不足です。

鳥越:新卒中途限らず「どれくらい会社が自分のことを考えてくれているのか」は企業選びの判断基準として重視されていますよね。中小企業が大手以上に健康経営を頑張っていて、健康経営優良法人の申請数は1万7,000社にのぼっています。この背景も結局「人」です。中小企業は人が採れないので、どうやったら優秀な人から応募があるか、どうすれば人が定着するかを考えて、大手より比較的悪いと思われがちの健康面の改善に取り組んでいるわけです。御社が取り組んでいる「My Chec」(ダイハツディーゼル社のストレスチェックオリジナル名称)では具体的な課題が見えてくるので、それを改善すれば当然従業員のメンタル面が改善されて生産性が上がるのですが、一歩踏み込んで組織改善のためにも使っているという点が素晴らしいと思います。

堀田:また、2022年6月から従業員目線の経営を目指し、会社の風土改革を6つのテーマに分けて経営層が率先して行っています。

・統制的側面
・会社の価値観と個人
・従業員のあり方と上司のあり方
・個人のキャリア形成
・業務品質
・会社の方向性、ビジョン

会社のビジョンを一人ひとりに伝えるために、1on1ミーティングなどコミュニケーション施策を充実させて、何でも言い合えるような組織文化を作りたいという夢を持っています。

鳥越:「従業員とのコミュニケーション量を増やす」、これに限りますよね。従業員の方々もそれを求めていると思います。会社の今後の方向性として、世の中の課題を解決するために取り組みたいことはありますか?

堀田:エンジンをつくる会社なのでCO₂排出を減らす必要があります。ただエンジンという製品だけではなく、ソリューションを提供したいですね。また、先ほどの話に繋がりますが、我々が事業として幅を広げていくターニングポイントとして人材採用・育成にはしっかり取り組みたいと思っています。

鳥越:人材や組織という面で今後強化していきたい部分などはありますか?

水科:「My Chec」の結果はまだ満足できる水準ではないと思っています。エンゲージメントや他の項目もさらに改善していきたいと思っています。「My Chec」導入当初の課題として「会社のビジョンがわからない」という声がありました。私はこれを大きな課題だと捉えて、今は会社の方向性を一生懸命共有・周知していくというアクションの真っ最中です。その中でさまざまな施策を打つことで、「My Chec」の結果に少なからず繋がっていくと思っています。

鳥越:ストレスを抱えている従業員がそのことを相談できるように上司との関係性を構築できたり、カウンセリングを受けられる環境を整えたりするという試みも実践していらっしゃるので、メンタル面でのサポートは充実していると思います。

水科:以前は従業員の悩み事を相談する体制が社内にありませんでしたが、御社にいろいろサービスをご提供いただいたおかげで従業員にそのような支援をできるようになりました。


鳥越:素晴らしいです。先ほどの「POWER! FOR ALL」にも繋がりますが、やっぱり「自分ごとにする」、自分たちの言葉できちんと実践していくということが従業員の皆さんにも伝わっていくのだと思います。

長野(ダイハツディーゼル社の産業保健スタッフ):今まさに、「My Chec」実施中です。回答率は6月27日から開始して今朝の(7月4日)時点で95%です。

鳥越:回答率95%ってすごいですね。以前は8割ほどだったと聞いていたのですが、急激に上がりましたね。

堀田:「ストレスチェック」という名称にネガティブイメージがあるということで、それに代わる名称を社内公募すると50件を超える応募があり、工場の現場従業員から提案いただいた「My Chec」を選びました。名称を変えた結果、回答率が上がりました。(2019年に「安全で安心、快適に働ける活力ある職場づくり」に役立てることを意識できる、前向きな名称を社内で募集し、「My Chec」が選ばれた。)

水科:今後は100%を目指したいところです。

堀田:毎年の結果はグループ会社の社長を含む社内会議で、高ストレス者割合の高い組織や属性の情報を共有するようにしています。それを受けて、高ストレス者に対するストレス低減施策を打つようにしています。

ダイハツディーゼルの今後の目標

堀田:今後は従業員の健康意識向上を目指して、健康経営にもデジタルやDXを導入したいですね。健康管理システムを導入し、健康診断や「My Chec」などのデータと健康経営に関連させる取り組みを進めていきたいと思っています。データを一元的に管理することで、従業員一人ひとりの健康状態の見える化を実現でき、健康リテラシー向上につながるものと思っております。

鳥越:先ほどのデジタル化の話ですが、健康診断のデータだけでなく、ストレスチェック、エンゲージメントサーベイ、勤怠管理などのいろいろなデータは健康経営にももちろん使えます。また、どこかの部署で対処しなければならないことが発生したなど組織的な問題が起きたとき、現場の管理職に聞いても良いことしか言わないという状況でも、データを見れば「この部署は残業が多いんだな」と一目瞭然です。デジタル化すると、経営陣やラインマネージャーの方々が組織の状態をいつでも細かく見られるようになるので、誰かに分析を頼まなくともご自身でデータを見てみると、さまざまな気づきが得られると思います。

堀田:それから、2024年度からの健康増進法改正に伴って、受動喫煙対策として敷地内に設置されている喫煙所を完全撤廃して禁煙化を推進していきます。特に工場などでは反対の声もあるのですが、各事業所長に「やるぞ」と宣言してもらいました。

鳥越:製造業の現場だと喫煙に関して苦労されているところも多いとは思いますが、マネージャー層の言葉はある程度効果的ですよね。

堀田:最後に、健康経営優良法人のグループ取得を目指します。「My Chec」はグループ全体で行ってはいるのですが、まずは当社が取得し、その後グループ会社にも裾野を広げていけば、グループ全体としての意識が変わってくるのではないかと期待しています。

鳥越:どこの会社も、グループになるとグループ全体の産業保健体制が鍵になってきますね。

堀田:そういった体制を整えていかないといけませんね。

鳥越:昔は健康経営も形式的でも問題ありませんでしたが、最近は問題点をきちんと把握して施策を実行できているかという実質的な部分を問われています。そういう意味で御社のようにきちんと実行できている企業は有利ですね。

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【筆者プロフィール】

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部
導入企業数3,140社/利用者数483万人のサービス提供実績と、健康経営銘柄に3年連続で選定されたアドバンテッジリスクマネジメントの知見から、人事領域で関心が高いテーマを取り上げ、押さえるべきポイントやつまずきやすい課題を整理。人事担当者や産業保健スタッフの“欲しい”情報から、心身のヘルスケアや組織開発、自己啓発など従業員向けの情報まで、幅広くラインアップ。「ウェルビーイングに働く」ためのトピックスをお届けします。

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