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コーチングスキルとは?構成要素や高めるメリット、方法を解説

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「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

コーチングとは、従業員の主体性やリーダーシップを育てるための手法の一つです。より質の高いコーチングを目指すには、管理職などマネージャーのコーチングスキルを高めていくことが不可欠ですが、具体的にどのような取り組みが有効なのでしょうか。今回は、コーチングスキルを構成する要素や高めるメリットや手法について詳しく解説します。

コーチングスキルとは?

話している社員達

まず、ビジネスにおけるコーチングの定義を踏まえたうえで、コーチングを実施する側のスキル向上が求められる理由について掘り下げていきます。

ビジネスにおけるコーチングとは

ビジネスにおけるコーチングとは、従業員がコーチ(上司)との対話によって新たな気づきを得て、主体的に目標達成や課題解決に向けた行動を取れるよう促していく人材開発の手法です。コーチは従業員の話に耳を傾け、ときに質問を交えながら、従業員本人が持つ答えを引き出していきます。

ただし、コーチが明確な答えや具体的なアドバイスを与えることはありません。あくまでも課題解決のサポートを行う立場です。

コーチングと類似する概念との違いは以下の通りです。

ティーチング     知識やノウハウを伝え、課題解決に導く。先生と生徒のような関係で、1対1だけではなく多数を対象に指導を行うこともある
メンタリング 実務的なことだけではなく、職場の人間関係や個人的な悩みなど、幅広いテーマで対話する。基本的に目標設定は行わず、メンターの知識・経験を共有しながら、メンティー(相談する側)の気づきを促す

メンター制度については、以下の記事でも詳しく紹介しています。

コーチングスキルを高めるべき理由

コーチングスキルとは、コーチングを受ける従業員が自らの力で課題解決できるよう、彼らを導いていくための対話や質問の技術のことです。先述したように、コーチングは具体的な目標達成や課題解決のサポートを目的として行われます。知識やノウハウを教えるティーチングや実務だけではなく、社会人として成長していくための中長期的な”支え”としての目的を持つメンタリングとは、やや異なるスキルが求められるでしょう。

コーチングスキルの向上が求められる理由としては、ビジネス環境やマネジメントスタイルの変化が挙げられます。ビジネスを取り巻く環境が刻一刻と変化するVUCA時代であり、また少子高齢化によって労働力不足が懸念されている今、組織が持続的に成長していくためには、トップダウンで物事を進めていくのではなく、従業員一人ひとりが各々の課題発見力や問題解決力を活かして主体的に行動し、スピーディーに市場やニーズの変化に対応していくことが必要です。

(※VUCA(ブーカ)…Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取った言葉)

また、ダイバーシティが広まる中で働き方に対する価値観や人材も多様化しており、求められるリーダー像も変化しています。強いリーダーシップを発揮してチームを率いるスタイルから、部下の能力を引き出す、メンバー同士が協力しあえる環境をつくるなど、一人ひとりの自律性を重視するスタイルにシフトしつつあります。

コーチングスキルを構成する3要素

チェックボックスのブロック

次に、コーチングスキルを構成する3つの要素についてみていきましょう。

傾聴力

傾聴力とは、相手の話に関心を持ち、共感を示しながら真摯な姿勢で「聴く」会話のスキルです。積極的傾聴やアクティブリスニングとも呼ばれており、もともとは心理学の分野で使われていました。

部下の話をただ「聞く」だけではなく、「なぜそう感じたのか」「どのような視点や価値観を持っているのか」など言外の要素にも意識を向け、深く理解することが大切です。善悪や好き嫌いといった聞き手の価値観で評価することなく、話し手の気持ちに寄り添い、肯定的に相手の考えを受け入れる必要があります。

「傾聴」については、以下の記事でも詳しく解説しています。

質問力

質問力とは、相手に気づきを与えたり、視点を広げたりするような、「適切な問いかけができるか」というスキルです。コーチングにおける質問とは、「聞き手が知りたいこと」を聞くものではなく、話し手である部下の課題解決をサポートするためのものです。「今、どのようなことを課題に感じているのか」「それに対して、自分はどうしたいと考えているのか」など、話し手が自分自身を客観的に捉え、思考できるよう働きかけることが求められます。

承認力

承認力とは、相手の成長や変化を認めて肯定し、それを伝えるスキルです。単に相手の「成果を褒める」のではなく、そのプロセスにも注目して具体的な内容を伴って承認することが求められます。大きな成功だけではなく、たとえ失敗に終わったとしても、「以前より良くなった点」や「諦めずに取り組む姿勢」などを認めることが大切です。

また挨拶や会話といった「相手の存在を肯定する」声かけや、「以前より効率よく仕事ができている」のように「相手の変化に注目し、努力や成長を認める」ことも重要です。

管理職のコーチングスキルを高めるメリット

青い壁紙とプラスマークが描かれた木のブロック

管理職のコーチングスキルを高めることは、従業員個人と組織双方にメリットをもたらします。

【従業員】主体性・モチベーションの向上

コーチングスキルが高い上司との対話を通して、部下やメンバーの主体性やモチベーションをより向上させることができます。適切なコミュニケーションによって、「自らの課題と向き合い、行動する力」を身につけることで、多角的な視点から物事を捉え、目標達成や問題解決を目指せる自律的な人材の育成につなげます。

また、コーチングでは従業員自身が答えを見つけられるよう導き、自らの意思で行動を変容させていくことから、「誰かに指示されている」「やらされている」という感覚に陥りにくく、モチベーションの維持や向上もしやすいでしょう。

【管理職】リーダーシップの強化

コーチングスキルを高めることは、管理職のリーダーシップ強化にもつながります。前述のように、個々の自律性を尊重するマネジメントへと変化しつつある今、従業員一人ひとりの能力に注目し、それらを引き出せるようなリーダーシップが求められています。コーチングにおいて重要な傾聴や質問といったスキルは、これからのマネジメントに必要な能力とも共通しており、個の力を最大限に発揮できるリーダーとしての素質を養うという点でもプラスにはたらくでしょう。

さらに対話を通して相互理解や尊重を深めることができれば、上司と部下の間に信頼関係が生まれ、組織の発展・成功につながる「関係の質」の向上にも寄与します。

【組織】コミュニケーションの活発化

コーチングスキルの高い上司は、前述のように傾聴や質問のスキルが高いため、積極的なコミュニケーションが可能です。自分の考えを否定されたり、非難されたりすることなく、安心して発言できる「心理的安全性」の高い組織が構築され、チーム内に信頼関係が生まれるでしょう。また、コーチングは双方向のコミュニケーションであり、部下やメンバーがどのような考えや価値観に基づいて行動しているのかも把握しやすくなります。

個々の意思を尊重したマネジメントが可能な点は、上司と部下の信頼関係構築においても重要なポイントです。活発なコミュニケーションを取れるようになることで、チームワークの強化につながります。

コーチングスキルを高める方法

階段と的とチェックマーク

管理職のコーチングスキルを高めるためには、どのような取り組みが有効なのでしょうか。

コーチングのマインドを理解する

実践的なスキルを効果的に活用していくためにも、まずはコーチングの基本的なマインドを理解し、身につけることが大切です。「部下が自らの力で課題解決できるようサポートする」「主体性を引き出し、自律を促す」というコーチングの趣旨を理解し、部下やメンバーに対してどのように関わっていくべきか、コーチとしての姿勢やあり方を認識してもらいます。

傾聴力・質問力・承認力向上のコツを知る

コーチングスキルを構成する「傾聴」「質問」「承認」それぞれのスキルを向上させるためのコツやテクニックを知ることも大切です。

【傾聴のポイント】
うなずく、相槌を打つ、相手の言葉を復唱するなどして、「相手の話をしっかり聴いている」という姿勢を伝えましょう。また、声のトーンや話す速度などを相手に合わせるマッチング、しぐさや表情などを真似るミラーリングなどを交え、話しやすい雰囲気をつくります。

【質問のポイント】
話し手が回答に迷っている、困っているような場合は、違う視点から質問を投げかけてみるなど、質問のバリエーションを持っておくことも大切です。「なぜそう思ったのですか?」「他にはどんな可能性が考えられますか?」「いつまでにやりたいですか?」など、5W1Hを問う「オープンクエスチョン」を意識し、具体的な事柄を引き出していきましょう。

【承認のポイント】
承認の言葉がけは、話し手を主語にする「I(アイ)メッセージ」が効果的です。Iメッセージは、「私はこう思っている」のように、話し手自身が感じたことを伝えるため、相手が言葉を受け入れやすいといわれています。例えば、「〇〇さんのおかげで(私は)助かったよ」「〇〇さんの成長が感じられて(私は)嬉しい」などのように伝えてみましょう。

コーチングを実践する場を設ける

部下に業務を教えている上司

実際にコーチングを実践し、学びを深めることも大切です。定期的な1on1を行うなどして、部下の課題解決をサポートしながら、コーチとしてのスキルを高めていきます。1on1ミーティングを導入する目的や効果などについては、以下の記事で詳しく解説しています。

【コーチングスキル向上へ】社員研修プログラム

管理職のコーチングスキルを高めるためには、コーチングの心構えやコツを学べる外部の研修プログラムの活用もおすすめです。アドバンテッジリスクマネジメントでは、管理職向けの各種研修プログラムを提供しています。

コーチングを行う際の注意点

光る電球を持っている人

最後に、コーチングを実施する際に注意したいポイントをご紹介します。

ゴールを明確にする

目標達成・課題解決といったコーチングのゴールを明確にすることで、コーチを行う側と受ける側の認識を一致させながら進めることができます。目指すべき目標を定めるだけではなく、達成までのプロセスや行動を具体化し、確実に目標を達成できるよう導いていきます。部下やメンバーのモチベーション維持のため、小さな成功を体験できるような段階的な目標を設定することも大切です。

継続的に実施する

コーチングは、継続して行うことで徐々にコーチを受ける従業員のパフォーマンスを高めていくものです。一回きりでは、劇的な変化を得ることは難しいため、人材育成としては非効率に見えることがあるかもしれません。従業員の自主性や自律を促すことの重要性など、コーチングの意義を深く理解したうえで、中長期的な視点で取り組みを進めていくことが重要です。

話題をコントロールしすぎない

コーチングは質問や対話を通して従業員を導き、目標達成のサポートを行うものですが、あくまでも対話の主導権はコーチングを受ける従業員側にあることを意識しましょう。コーチ側が積極的に話題を広げたり、自分の話を披露したりするのではなく、従業員の話に沿うようにして「傾聴」「質問」「承認」を適切に織り交ぜ、従業員が自ら気づきを得たと感じられるようサポートしていきます。

従業員の主体性を高めて自律的な組織へ

上司とミーティングをする部下達

コーチングを活用した人材育成の取り組みが重要性を増す中で、より本質的なコーチングを実践するには、「傾聴力」「質問力」「承認力」といったコーチングスキルを高めていくことが重要といえます。コーチングは、一朝一夕に成果を期待できる取り組みとは言い難いですが、中長期的な視点で人材育成を行い、目まぐるしく変化するビジネス環境にすばやく対応できる、自律的な組織を目指しましょう。

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【筆者プロフィール】

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部
導入企業数3,140社/利用者数483万人のサービス提供実績と、健康経営銘柄に3年連続で選定されたアドバンテッジリスクマネジメントの知見から、人事領域で関心が高いテーマを取り上げ、押さえるべきポイントやつまずきやすい課題を整理。人事担当者や産業保健スタッフの“欲しい”情報から、心身のヘルスケアや組織開発、自己啓発など従業員向けの情報まで、幅広くラインアップ。「ウェルビーイングに働く」ためのトピックスをお届けします。

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