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アクティブリスニングとは?効果や実践に必要なスキルを解説

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「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

アクティブリスニングは、ビジネスシーンでも役立つとされるコミュニケーション手法の一つです。相手の考えや気持ちを深いレベルで汲み取ることは、その人との信頼関係の構築につながるだけではなく、コミュニケーションの円滑化によって、取引先や顧客、また組織やチームにもポジティブな影響をもたらします。この記事では、アクティブリスニングの効果や実践時のカギ、ビジネスシーンでの使い方について解説します。

アクティブリスニングとは

ACTIVE listeningと書かれた木のブロック

はじめに、アクティブリスニングの意味と目的、併せてアクティブリスニングがビジネスシーンで注目されている理由をみていきましょう。

アクティブリスニングとは

アクティブリスニングとは、相手が話す内容に関心を寄せて、共感の意を示しながら積極的に耳を傾ける「聴く」技術のことで、「積極的傾聴」とも呼ばれます。 ただし、単純に聴くだけではなく、話し手が自らの力で問題を解決できるよう手助けしながら、成長を促す聴き方であることが特徴です。

アクティブリスニングが注目を集める理由

技術の進歩やグローバル化によって、現代のビジネスはよりスピード感のある対応を求められています。目まぐるしく変わるトレンドやニーズにすばやく対応し、競争力を維持していくには、変化を否定せず受け入れ、柔軟に対応できる人材の育成が必要です。

また、少子高齢化による人手不足や、ダイバーシティへの対応などによって、従来以上に組織には多様な人材が集まることが予想されます。異なる考え方やバックグラウンドを持つ人々が、協力・連携して円滑に仕事を進めていくためには、相互理解が不可欠です。安定的な組織運営の土台づくりという点でも、ビジネスにおけるアクティブリスニングには大きな意義があります。

アクティブリスニングの効果

笑顔の木のブロック

アクティブリスニングを行うことは、チームや組織の運営という点においても良好な効果があります。主なメリット4つについて詳しくみていきましょう。

<アクティブリスニングのメリット>

  • 信頼関係の構築
  • 問題解決・業務遂行の円滑化
  • 客観的な視点からの自己理解
  • 離職率の低下

信頼関係の構築

アクティブリスニングによるコミュニケーションは、信頼関係の構築、そしてチーム全体の心理的安全性を高めることにも寄与します。自分自身の存在を肯定的に受け入れてもらえた経験は、「この人は私を理解しようとしてくれる」「自分が意見を言っても良いところなんだ」という安心感につながります。

否定的な言葉を使う、忙しそうな態度を見せて話しづらい雰囲気を作る、自分の価値観を強制するといったコミュニケーションを防げれば、上司・部下間やチームメンバーの間でも意思疎通を図りやすくなるでしょう。

問題解決・業務遂行の円滑化

相手の考えを受け入れて共感し、理解を深めようとするアクティブリスニングのスタンスは、顧客との商談の場や、社内の部署間での協働など、さまざまなシーンで業務の遂行をスムーズにします。

例えば顧客とのやり取りでは、相手の考えや希望を正しく理解しながら、解決策を客観的に思考することで、好意的に受け止めてもらえるような提案が可能となるでしょう。また、アクティブリスニングを駆使したコミュニケーションがとれている同僚や上司・部下間では、相手の立場や考えを理解し、尊重しあえる関係性が成立しています。業務に必要な相談や確認を最短で実施しながら連携して協働できるので、業務の円滑化・効率化につながります。

客観的な視点からの自己理解

アクティブリスニングを身につけると、自分側の視点と相手側の視点の違いに気づけるようになり、自分自身を高い視座で捉えることができます。例えば、自分では問題ないと思っていたことでも、相手にとってはストレスに感じることかもしれません。

客観的理解が深まれば、自身の感情を正しく理解しながら行動をうまくコントロールできるようになり、良好な人間関係の構築が期待できるでしょう。

風通しの良い職場環境の実現

アクティブリスニングを通して上司と部下の間に良好な関係が築かれると、積極的なコミュニケーションがとれる風通しの良い職場環境が醸成されます。従業員の定着、離職率の低下のほか、ハラスメント防止にも効果的です。お互いを信頼し、協力しながら仕事を進められるため、従業員のモチベーションの維持・向上が期待できます。

アクティブリスニングに必要な3つの姿勢

アクティブリスニングを実践する際には、「共感的理解」「無条件の肯定的関心」「自己一致」の3つの”聴く姿勢”を意識することが求められます。これらは「ロジャーズの三原則」と呼ばれており、カウンセリングの礎を築いたアメリカの臨床心理学者「カール・ロジャーズ」によって提唱されたものです。

共感的理解

共感的理解とは、相手の考え方や気持ちを、相手の立場になって共感・理解しようとすることです。「大変そう」「かわいそう」と同情したり、「私だったらこうするのに」と否定したりするのではなく、相手の気持ちに寄り添いながら話を聴く姿勢が重要です。聴き手の経験や価値観は取っ払ったうえで、話し手が見ているもの、感じているものを、相手の世界観に入り込んだかのような視点で理解します。

無条件の肯定的関心

無条件の肯定的関心とは、相手をありのまま受け入れ、好き嫌い・善悪といった聴き手の価値観で判断せずに聴くことです。話し手がどんな考えや感情を持っていても、あるいは勘違いや思い込みがあったとしても頭ごなしに否定せず、相手を肯定的に受け入れます。どうして相手がそのような考えに至ったのかという「背景」に関心を寄せて聴きます。

自己一致

自己一致とは、聴き手と話し手の双方に対して、真摯な態度で言葉の真意を把握することを指します。相手をありのまま受け入れるためには、嘘偽りのない自分自身を受容することが重要です。

相手の話す内容が理解できないまま「わかります」と答えたり、自分とは考えが違うなと感じているのに、相手に配慮して「私もそう思います」と伝えたりすることは、内面に湧き上がる素直な感情と言葉が矛盾していて、自己一致の状態とはいえません。だからといって「それは違うと思います」と即座に否定することも、アクティブリスニングの場における正しい対応ではありません。言葉にせずとも、「今、自分は相手の考えに対して否定的に思っているな」と、ありのままの感情を認めようとする意識が大切です。

バーバルコミュニケーションとノンバーバルコミュニケーションの特徴と実践例

吹き出しマークを持つ人

アクティブリスニングを行うには、バーバルコミュニケーションとノンバーバルコミュニケーションという2つの方法を用います。それぞれの特徴と実践例をチェックしていきましょう。

バーバルコミュニケーションとは

バーバルコミュニケーション(verbal communication)とは、会話や文章など、言語によるコミュニケーションのことです。例えば以下のような行動を指します。

・あいづち
「ええ」「はい」「なるほど」など、相手に「きちんと聴いている」ことを示す言葉です。より話を促す効果があります。話し手の話すテンポや呼吸に意識を向けつつ、適度なタイミングであいづちを打ちます。

・パラフレーズ、オウム返し
話の内容を言い換え、あるいは要約して伝え直したり、発言をそのまま繰り返したりします。これにより話し手は、「私の話を理解してくれているんだな」と安心感を抱きます。また、「できない」を「◯◯すればできる」とポジティブな表現に変える、「◯◯と思ったのですね」と確認を取るように伝えることで、話し手は自分の言葉を客観視できるようになり、新たな気づきを得られます。

・オープンクエスチョン
「When(いつ)」「Where(どこで)」「Who(だれが)」「What(何を)」「Why(なぜ)」「How(どのように)」の「5W1H」で質問することです。質問の答えがはい・いいえにならないように問うことで、情報をより深めることができます。相手が自分の気持ちを自由に話せるよう、問いかけ方を工夫してみましょう。より具体的な話題につながるため、解決するべき問題を明確にできます。

<問いかけの例>

  • そう思ったのはいつからですか?
  • なぜそのように考えたのですか?
  • どのようなことで困っていますか? など

ノンバーバルコミュニケーションとは

ノンバーバルコミュニケーションとは、言葉を用いずに行う非言語コミュニケーションのことです。アクティブリスニングにおいては、表情や姿勢、身振り手振りなどが特に重要となります。具体例は以下の通りです。

・表情
話題に応じ、表情でも共感を示すことを意識します。

・目線・姿勢
ほどよい距離感で向かい合い、適切なタイミングでアイコンタクトをとりながら対話します。習慣的なものであっても、腕や脚を組むことや、ペンや小物を触るなどの行動は、相手に「話に興味をもってもらえていないのかもしれない」「会話に飽きているのかもしれない」という印象を与えかねないため注意しましょう。

・ミラーリング・ペーシング
ミラーリングとは、相手の表情や身振り、手振りなどを真似ることです。ペーシングとは、相手の声のトーンやテンポ、ボリュームを合わせて話すテクニックです。話すペースや口調を近づけると、「自分の気持ちに寄り添って話を聞いてくれている」「この人は相性が良さそう」という印象を相手に抱いてもらえます。

アクティブリスニングをより効果的に行う方法

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アクティブリスニングをより効果的に行うためには、日頃からの意識づけと実践が大切です。

アクティブリスニングを意識した対話

実務でのコミュニケーションや、課題が生じた場面でアクティブリスニングを実践することは、効果的な学習につながると期待できます。日常のコミュニケーションでアクティブリスニングに必要な技術を身につける場合は、自分の聴く姿勢やコミュニケーションの取り方について、話し手からフィードバックを受けるなどして、うまくいった点や不十分だった点を振り返り、次回に活かします。PDCAサイクルを繰り返しながら、アクティブリスニングのスキルを高めていきましょう。

ロールプレイングによる実践

実践的なトレーニングのために、ロールプレイングを行うのもおすすめです。具体的なシーンを想定し、相手役との会話を通してアクティブリスニング力の強化を目指します。先に紹介したバーバル/ノンバーバルコミュニケーションを心がけ、スキルの定着を図りましょう。

アクティブリスニングは、すべての従業員に意識してもらい、実践すべきコミュニケーションですが、管理職など、部下の悩みや課題に向き合い、成長をサポートしていく立場の従業員にとっては、特に重要なスキルといえます。

アクティブリスニングの注意点

注意マークと虫メガネ

アクティブリスニングを実践するにあたり、注意したいポイントを押さえておきましょう。

「聴き役」に徹する

聴き手は終始「聴き役」に徹し、「聴く」を7~8割、「話す」を2~3割程度にすると良いでしょう。相手が主体的に会話できるよう意識しつつ、話し手の言葉に共感・理解することに集中して、サポートすることが求められます。

もし、相手が沈黙している、考えているような様子が見られる場合は、できるだけ話し始めるのを待つことが望ましいといわれています。特に、悩みや課題の解決を目的とした場でのアクティブリスニングでは、話し手が自分自身で考え、結論を導き出すことが大切です。

また、ネガティブな話題、感情に触れることでストレスをためてしまうこともあります。「この問題は話し手自身のものであり、自分自身の問題ではない」と、適度な距離感を保ちつつ、話を聴くことに集中しましょう。

忍耐強く相手のペースを尊重する

相手を急かすことなく、十分に時間をかけて思いを引き出すためには忍耐力も必要です。先述したように、アクティブリスニングでは会話の主体が自分にはないため、経験をもとにアドバイスしたい、間違いを正したいという思いと、相手を尊重しなければならないという気持ちの間で板挟みになってしまうかもしれません。

「こうすればいいのでは」と、ついアドバイスしたくなるかもしれませんが、聴き手が一方的に結論づけたり、主観的な判断で答えを誘導したりしないよう注意します。

アクティブリスニングが生きるビジネスシーン

笑顔で話し合う従業員

お伝えしてきたように、アクティブリスニングは組織やチームに対して好影響をもたらします。最後に、アクティブリスニングの効果が発揮されるシーンをご紹介します。

1on1ミーティング《上司→部下》

アクティブリスニングは、よりよいマネジメントを目的とする1on1ミーティングなどにおいても、有効なコミュニケーション方法です。「上司は自分の話にきちんと耳を傾けて、理解しようとしてくれる」「共感を示してもらえた」といった経験は、上司と部下が信頼関係を築くにあたって重要な役割を果たします。自分の過去の経験や価値観を強制することなく、部下の立場や世界観に立って真意を引き出すことで、気づきをもたらし、成長を促せます。

営業《担当者→顧客》

営業や商談の場でも、顧客の話に耳を傾けて理解・共感を示すことで、自分の意見をちゃんと聞いてくれる人だと信頼を寄せてもらえる可能性があります。よりオープンに話し合えると、顧客の真のニーズを引き出すことにつながり、より、顧客に寄り添った提案・サービスの提供ができるようになるでしょう。

アクティブリスニングで組織力を強化

ハイタッチする従業員

アクティブリスニングは、ただ相手の話を聴くだけではなく、言語的・あるいは非言語的なコミュニケーションを使いながら、共感や理解を示すことが必要です。ビジネスの場でアクティブリスニングを行うことは、営業の場のような対外的なコミュニケーションを円滑にするだけでなく、メンバー同士の信頼関係の強化にもつながります。業務の円滑な遂行、風通しの良い職場環境の実現など、理想的な組織運営を目指していくための下地づくりという役割も期待されているのです。コミュニケーションに関する研修を実施するなどして、従業員のスキル向上を目指しましょう。

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【筆者プロフィール】

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部
導入企業数3,140社/利用者数483万人のサービス提供実績と、健康経営銘柄に3年連続で選定されたアドバンテッジリスクマネジメントの知見から、人事領域で関心が高いテーマを取り上げ、押さえるべきポイントやつまずきやすい課題を整理。人事担当者や産業保健スタッフの“欲しい”情報から、心身のヘルスケアや組織開発、自己啓発など従業員向けの情報まで、幅広くラインアップ。「ウェルビーイングに働く」ためのトピックスをお届けします。

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