大分県臼杵市。静かな海辺の一角で、組織の人事課題に奮闘する人たちがいました。社会福祉法人海辺福祉会の理事長である芥川良彦さんは、2024年2月から現在の役職に就任。4代目の理事長として、先代から続く職場でのウェルビーイングに取り組み、様々な人事施策を実施されています。
芥川さんが思い描くのは、正規社員だけでなくパート職員までが一人ひとり自分らしく過ごせる風通しのいい職場環境。それを叶えるために選ばれたのが、当社アドバンテッジリスクマネジメントが提供する「EQ感情マネジメント力向上研修(以下、EQ向上研修)」です。EQ向上研修によって職場環境はどのように変わるのでしょうか。当研修を導入するまでの背景や、今後期待することなどを芥川さんに聞きました。

目次
ストレスチェックだけでは解決しないと感じた人事課題
——海辺福祉会では、職員が長く朗らかに働けるための環境づくりに力を入れているそうですね。これまでにどのような人事施策を行ってきましたか。
芥川様:先代から何十年も続いているのは、誕生日の特別休暇です。全職員に誕生日には無条件で休んでもらい、お祝いのお花を届けます。健康診断の日も特別休暇とし、各種がん検診などの付加検診も法人が負担しますし、お子さんの学校行事などに気兼ねなく参加できるように休暇やフレックスに勤務時間を申請するためのアプリも導入しました。食事面では、子どもたちと同じおいしく温かい食事を食べられるように配慮しています。事務に関してICT化をすすめたり、保育室の掃除機をロボット掃除機にしたりなども行いました。

——働き手の負担を減らすなど、共に働く職員を大事にされている印象です。今年初めて導入されたというストレスチェックも働きやすい環境づくりの一環でしょうか。
芥川様:世間で知られている通り、保育業界は勤務時間の長さや激務により、平均勤続が5〜6年と定着率が良くない上、業界自体から抜ける人も少なくないのが現状です。そんな中、私共の法人では平均勤続19年。立場に関わらず、意見の言いやすい環境と大事にしていることが定着率につながっていると感じていますが、人間関係が密になる業務であるので、方針や方向性を相互で確認するためのより深いコミュニケーションを進めていく必要があると考えていたんです。そこで、まずは、定性的に見える課題とチェックでの定量的な情報に乖離が無いかを確認するために、簡易的な調査としてストレスチェックを実施してみました。
——ストレスチェックの結果によって課題が生まれるようなことはありましたか?
芥川様:ストレスチェックの結果はあまり悪くなかったのです。ただ、チェックの結果がすべてだとは思っておらず、たとえば、各クラスでは若い担任の先生がベテランのパートさんと組むことも多く、ベテランの方が自身の経験をもとに自分の想いだけで走ってしまうことがどうしてもあり、そこに課題があると普段から感じていました。

——そういった課題に対し、普段はどのように解決されているのでしょう。
芥川様:各クラスの中で方向性を固めるため、月に一度行うクラスごとの月案(※)会議に、担任だけではなく園長やパートさんなどクラスにかかわる職員が参加し、意見を出し合ってもらっています。話し合いの場を持つことでクラス内部の関係性は良くなっていると思います。時折、方向性を修正する必要がある際には、園長等が担任と個別に話をして解決策を模索していましたが、パートさん側の想いを受け止めきれていなかったという反省点もあります。
※ 園生活を1か月単位で見て立てる指導計画のこと
——意見の受け入れに偏りが出てしまったのですね。そこで焦点を当てたのが、EQ向上研修だったのでしょうか。
芥川様:そうですね。EQ向上研修のプレゼンで、自分を尊重するのと同時に他人を尊重し、行動を変えていくというテーマを伺っていたので、課題解決につながるのではないかと興味を持ちました。
行動特性検査×研修で自己や他者理解が進む「EQ」 その可能性への期待
——EQという言葉はご存知でしたか?
芥川様:報道などでEQが感情のIQであることを知りましたが、言葉を知っている程度。組織課題に一緒に取り組んでくださる企業様を選定している中で、アドバンテッジリスクマネジメントさんに出会ったことが、EQについて詳しく知る機会になりました。EQは自分を理解するためにも有意義なツールだと感じています。今回は、私共が提示した自己理解・他者理解という目的や、全職員対象という条件に沿うかたちで、EQ向上研修を提案してもらいました。
——実際に研修を受けた職員のみなさんは、どのような様子でしたか?
芥川様:事前に250の質問に答えるアセスメントシートがあり、その結果を隣の人とも共有するので、自分の内面をさらけ出すことになります。それを不安に思う職員がいるのではないかと心配していたのですが、楽しそうな姿が見られて嬉しかったですし、驚きました。シートはお互いに交換し、コメントを書き込んだ上で戻す、というやり取りを1週間ごとに続けていきます。私自身が続けることで職員の間にも広まれば、と考えています。

——受講者のみなさんからどのような感想を聞くことが多いですか?
芥川様:4時間の研修があっという間だったという話はよく聞きますね。忙しい日々の中で自分がどんな人間なのかを振り返る機会はあまりないので、自分と向き合ういい時間になったという感想も多いです。アセスメントシートには「ありのままに答えるように」と提示されており、正直に答えられているか、ということに対する点数が出るのは私自身も興味深かったです。構えて答えたり、考えて答えたりすると結果が違ってくるようです。結果に対する項目ごとのアドバイスもあり、参考にすることもできますし、「自分で違うと思えばそれはそれでいい」というスタンスだったので、研修を受ける職員も気楽だったのではないかと思います。


——今回の研修が、相手の気持ちを理解して行動するという課題の解決にもつながりそうでしょうか。
芥川様:職員の意識が、自分を大事にするためにも他人を大事にするところに向かっていけばと期待しています。苦手なことを自身で把握し、それを改善するための計画書を作成した上で行動するのですが、その習慣化を目指すのも、この研修のいいところ。大変なことも多い業務だと思いますが、せっかく働いてもらうなら楽しく明るい職場にしたい。研修を通して職員同士の関係が良くなるというよりは、仕事に向かう気持ちがポジティブなものになればと感じています。
——アセスメントシートの結果には24の性格評価の他に、その人の強みやネガティブポイントなどが細かく書き込まれています。全体の結果を管理者は受け取れるのですか?
芥川様:職員が了承すれば全体の結果を見られるのですが、私自身は個人個人の結果にあまり興味がありません。そもそも今回の研修は個人の査定が目的ではありませんし、査定が目的だとしたら職員も考えて答えるようになってしまう。ですから、個人の結果は見ないことを職員にも伝えてもらいました。ただ、うちの先生方が真面目だからなのか、講師の方のお話の中で、全体的に自主的な意見を伝える力が低めだと伺いました。自分を飾らず、ありのままの自分でいられる能力が高いようなので、職場でより自分らしさを出していけるようになり安心安全な風通しが良い職場となるよう期待しています。

【職員3名による研修の感想】
事前に答えた250の質問では、普段考えたことのないような内容もありましたが、4つの選択肢から選ぶ形式なので答えやすさがあります。研修を受けてから自分の強みや弱みがわかり、このための質問だったのだと納得がいきました。私自身、よく考えずに発言することがあるので、今後は相手の気持ちを慮りながら話すことを意識したいと、今は前向きな気持ちになっています。(園長・Yさん)
感情の波がないほうだと思っていましたが、実はあるほうだとシートに書かれていて驚きました。自分への理解が深まったのはもちろん、同じ職場の同期のことを深く知れたことも良かったと感じます。子どもたちや保護者さんが表に出さないような心の内面にも関わらせてもらう仕事なので、研修を通して、相手の本音にも気付けるような保育者になっていきたいです。(保育6年目・O.Kさん)
スキルを高めることでEQも高められるという講師の言葉が印象的でした。そのためにも、自分の感情を理解するのは大事なこと。普段はルールに沿って行動することが多いのですが、より良い保育のためには自分の意見を発信し、それを行動に移すことも大切だと研修後に感じています。これから感情が芽生えていく子どもたちの大事な時期を、保育者として大切に育んでいきたいです。(保育6年目・O.Sさん)

アドバンテッジリスクマネジメントのEQ研修を選んだ決め手は
——今回数ある事業所の中でアドバンテッジリスクマネジメントに絞り込んだ決め手とは?
芥川様:最初の段階では候補は何十社もありましたが、アドバンテッジリスクマネジメントさんは研修のアフターフォローがしっかりしている点が好評と知り、面談に至りました。面談は4社に絞り、それぞれの強みを生かした内容をご提案いただきました。EQ向上のポイントや必要性の説明に筋が通っていて理解しやすかったですし、私共の法人にも取り入れたいと思えたのが最も大きな決め手です。
ニーズを受け止めてもらった上で、こちらが想定していた内容をアレンジしていただいた提案もあり、一方的ではなく想いをお伝えしながら話し合いができたところも良かったです。EQに関する研修プランを提示いただいたのはアドバンテッジリスクマネジメントさんだけでしたが、他社様も職員へのアプローチの仕方など、勉強させていただくところも多数ありました。オンラインではなく、大分県の中でも南部の臼杵市まで足を運んで研修を実施しに来てくださるということも大きかったですね。

——アドバンテッジリスクマネジメントを他の法人にもおすすめしたいと感じられる点を教えていただけますか。
芥川様:業種に関わらず、人は人と接しながら仕事をするもの。まずは自分を知ることがコミュニケーションの基本だと感じています。行動特性分析では数値化されるので数字だけでとらえてしまう部分もあるかもしれませんが、講師の先生によるフォローが頼りになります。分析結果を交換する場面でも講師の先生の雰囲気に合わせた説明のおかげで交換が嫌だという風には思いませんでした。逆に他者理解に関してのスキル向上につながったともいます。今回の研修を受けて終わりではなく、自分の計画書を作ってまずは3ヶ月パートナーと意見しあうようになるので、今後のEQ向上につなげていけるところも、おすすめしたい点です。
——今回の研修を全職員に受けてもらおうと考えた理由とは?
芥川様:トライアルという制約のある中で産休中の職員以外、短時間で働くパートさんも含め76人全員が研修を受けることができました。保育は専門職ですので、幹部や正規職員の研修会は以前から多かったのですが、今回は心の健康ですので全員学ぶ意味があると考えました。法人全員が全く同じ研修を受けたのは今回が初めてです。子どもたちや保護者のみなさんと接する以上、自分たちが健康で楽しまないと良い保育はできません。そのためにも、職場環境が整う仕組みを作ることが私の役割だと考えています。

営業担当者および講師から…「想いを共有しあう仕組みが大事」
アドバンテッジリスクマネジメント担当者は課題をどう受け止めた?
芥川様からは、自己理解や相互理解をした上でチームワークをもっと強固にしたいという想いを伺い、従業員のみなさん同士がよりリスペクトできる関係性になることを意識しました。もともと専門職の方に提供することが多いEQ向上研修ですが、「保育に正解はない」という芥川様の言葉からも、職員のみなさんがプロフェッショナルとして保育現場に向き合っておられる様子が伝わってきました。ただ、熱い想いを伝える上でコミュニケーションに不具合が生じると、せっかくのやる気を発揮できなくなります。だからこそ、従業員のみなさんが想いをスムーズに共有しあう仕組みが大事だと考えました。
研修では「確かにそうかもしれない」という声が聞こえてきて、自分の性格を言い当てられる怖さもあったと思いますが、それを前向き且つフラットに受け止めてくださり、この機会を大事にしようとしてくださっている様子が伝わりました。
たとえば、「思ったことをすぐに口に出してしまう」とコミュニケーションの課題がある場合、言ったほうがいいこともあれば、言わないほうが適切な場面もあります。今どういう発言をしたらいいのかを一度立ち止まって考えるという気づきが、EQ向上研修を通して増えていくようでしたら嬉しく思います。(アドバンテッジリスクマネジメント営業担当・S)
講師が語る“EQの必要性”とは
管理職の方によく言われるのは、EQの必要性を子どもたちにも伝えてほしいということです。日本では昔から感情をセーブするような風潮があります。そうではなく、感情を大事にしながらも、人と関わる時、あるいは自分自身を動機づける時に、感情を知性に変えてうまく使ってほしい。デジタル社会だからこそ、感情という本能の部分をうまく使いこなすことで、コミュニケーション力を高めながら、仕事でもさらなる高みを目指していけるはずです。
海辺福祉会のみなさんは、EQという言葉を知らないところから入られて最初は緊張されていましたが、終わる頃には和やかな雰囲気でした。研修で学んだことを実直にこなすだけでなく、実践に移した時、自分の行動によって周りが変わることを体感していただければ。相手から返ってくる反応を楽しんでいただくようになれば、EQ向上を継続していけると考えています。(EQ研修講師・Y)

ご活用いただいている「EQ感情マネジメント力向上研修」は、EQ行動特性検査(EQI)で自身の行動傾向を可視化し、多数のワークから課題解決に向けた行動変容のヒントを習得、具体的な行動目標を策定・実行します。研修を通して個々の非認知能力を高め、チームワークの強化やコミュニケーションの質の向上を目指します。資料のダウンロードはこちらから。