人的資本とは
経済産業省では、“人的資本経営とは、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方”と定義しています。つまり、人的資本とは、経営において人材を投資すべき対象とみなす考え方です。
従業員が持つ価値を向上させていくこと、またその取り組みのことを人的資本への投資と呼んでいます。
国際標準化機構(ISO)では、2018年に、内部及び外部のステークホルダーに対する人的資本に関する報告のための指針として、ISO30414(人的資本に関する情報開示のガイドライン)を発表しており、企業における人的資本に対する透明性が求められています。
人的資本が注目される背景
高齢化社会を迎える日本において、労働力不足に対応することは深刻な経営課題となっています。経済産業省では、人的資本への投資を行うことで「従業員の労働生産性及び企業競争力を向上させ、市場や社会における「企業価値」の向上を図っていくことが求められている」と提唱しています。
人材を単なるリソースとしてではなく、投資すべき資本として捉え、健康経営の実現を図るものです。
人的資本に投資する意義
企業経営において従業員の健康に配慮することは、これまではどちらかというと「コスト」として捉えられてきました。しかし、各企業が労働力の確保に苦慮するなか、従業員に投資をすることで、生産性を向上させることが注目されるようになってきました。
例えば、従業員の健康管理を積極的に進めることで、休職や離職の数が減少するのであれば、それは直接的に労働力の確保ができているといえるでしょう。
また、健全な職場環境を整備することによって課題が解決し、仕事に従事することができれば、個々のモチベーション向上、生産性の向上にもつながります。
その結果として、企業価値が向上するのであれば、それはまさに人材に「投資」したことであり、企業の競争力にもつながります。実際に、株式投資の現場では、企業が健康経営に取り組んでいるか、人材を大切にしているかといった指標が投資家に向けて発信されています。
この企業価値向上は、人材採用、人材活用の場面においても好影響を及ぼしているといえます。求職者にとって応募する企業が健康経営に取り組んでいるか、人的資本に投資を行っているかという情報はとても重要視されているのです。
人材確保、生産性の向上に日々取り組む人事・総務の現場において、少し視点を変え、健康経営、人的資本への取り組みに目を向けてみてはいかがでしょうか。