マインドフルネスとは
マインドフルネスとは、具体的には日々の悩み事や不安な感情や気が散ってしまうことを鎮め、「この瞬間」に集中する精神状態を意識的につくっていくことです。その代表的な手法として、「瞑想」が用いられることが有名です。
また、学術的な視点では、早稲田大学教授の熊野宏昭氏によると、「今の瞬間の現実に常に気づきを向け、その現実をあるがままに知覚し、それに対する思考や感情にはとらわれないでいる心の持ち方、存在の在り様」1)と説明される状態を指すようです。
たとえば人が思い悩んでいる時、仕事で失敗してしまったことを何度も思い出したり、次のプレゼンでうまくできるかどうか不安になったりと、時間軸上の過去か未来の思考に注意が向いてしまっています。そのため、今目の前にある仕事に集中できず、手がおろそかになってしまうのです。
マインドフルネスのプロセスは、自分の注意が過去や未来についての思考に向いている事実にまず気づくこと。そして、そうした思考に注意をうばわれないようにし、代わりに現在の自分が知覚している自分の身体の外側にある環境中の刺激(光、音、におい、触感など)、また自分の内側にある身体の感覚などに注意を戻すことが、最初の一歩になります。
マインドフルネス実践による職場の活性化
職場でマインドフルネスを実践することで、ポジティブな状態をより体験できるようになることが、科学的な研究の積み重ねによって明らかになってきています。
イースト・ロンドン大学心理学科のティム・ローマス講師らが、職場でマインドフルネスのプログラムを提供して効果を調べた研究結果によれば、ストレスや燃え尽き症候群(バーンアウト)といったいわゆるネガティブな状態の改善に加え、仕事のパフォーマンスやコンパッション(思いやり)/共感性、ウェルビーイングといった状態の向上にも効果が見られました。
企業がマインドフルネスの意味や必要性を理解し、従業員にトレーニングを促すことはとても重要です。医学・心理学の分野で典型的な手法とされる「マインドフルネスストレス低減法(MBSR)」という手法を参考に瞑想やヨガ、ボディスキャンといった具体的なトレーニングをおこなうことで、従業員のマインドフルネス向上が期待できます。
職場を活性化させるための1つの方法として、マインドフルネスの実践を取り入れてみてはいかがでしょうか。
引用
1) 熊野宏昭.マインドフルネスそしてACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピーへ―二十一世紀の自分探しプロジェクト―.東京:星和書店;2011.
2) Lomas, T., Medina, J. C., Ivtzan, I., Rupprecht, S., & Eiroa-Orosa, F. J. (2019). Mindfulness-based interventions in the workplace: An inclusive systematic review and meta-analysis of their impact upon wellbeing. The Journal of Positive Psychology, 14, 625-640.