産業医とは
産業医とは、ひと言で言うと「労働者の健康管理という役目を担う医師」のことを指します。50名以上の労働者を有する事業者は、産業医を選任する必要があり、産業医は職場の巡視や健康診断後の保健指導などを通して、労働者の健康をサポートします。
厚生労働省が発表した「令和2年度過労死等の労災補償状況 」によると、令和2年度に過労死や過労自殺(未遂を含む)で労災認定された事例は計802件に上ります。これは前年度比で約77件の増加でした。
企業には、労働者が健康に働けるようにするための産業医、産業保健の制度があったにも関わらず、十分に機能していたとは言い難い状況でした。こうした状況に加え、労働者の仕事と治療の両立をサポートするといった観点からも、働き方改革の中で産業医や産業保健の強化が重要視されるようになった経緯があります。
産業医の探し方
労働者の健康管理という重要な役目を担う産業医ですが、現在では、産業医の人手不足が問題視されています。 なかなか自社に合った産業医が見つからない、地方に増えた事業所の産業医を新たに探している、といった人事担当者の方も多いのではないでしょうか。
産業医を探すには、一般的に以下の二つの方法があります。医師との特別なコネクションなどがない限りは、下記の方法を取ることが多いでしょう。
①医師会に紹介してもらう
企業のある市町村の医師会に相談すれば、産業医を紹介してもらえます。産業医の候補は、各エリアの医師会に登録している開業医などです。
②人材紹介企業に紹介してもらう
人材紹介企業に産業医を紹介してもらう方法もあります。契約金額の一定割合が成約報酬として必要になるケースが一般的ですが、人材紹介企業のサポートが得られます。ただし、人材紹介企業によって支援の方法が大きく異なる点に注意が必要です。紹介や契約の代行を行うだけという企業もあれば、産業医と事業者の間に立って、体制が整うまでサポートしてくれる企業もあります。
しかし実際は上記の方法で探しても、産業医自体が不足しているうえ、近年求められるメンタルヘルス対応のできる産業医となると、すぐに医師を見つけられない可能性があります。そのような場合は、人材紹介ではなく業務委託の形態で産業医業務を代行してくれるアウトソーシングサービスを検討してみるのも一案でしょう。
中には「ブラック産業医」と言って、会社とグルになって会社よりの意見書を提出する産業医もいます。本来の産業医の仕事とは、会社と従業員との間で中立的な立場にたって、従業員が健康的に働けるように、指導・助言を行うことです。自社の従業員の健康を正しくサポートするためにも、適切な産業医と会社の保健体制を形成していきましょう。