ストレスチェックとは、従業員のストレス状態を調べる検査のことです。この結果を上手に活用することで、従業員のメンタルヘルスの不調を未然に防ぐことができ、ウェルビーイング向上や職場環境の改善につなげられます。本記事ではストレスチェックシートの概要や作成時のポイントに加え、サンプルシートも紹介します。
目次
ストレスチェックとは?シートについても解説
ストレスチェックを行う前に、ストレスチェックがどのようなものなのかをしっかり理解する必要があります。はじめにストレスチェックの概要や流れから見ていきましょう。
ストレスチェックの概要
ストレスチェックとは、労働者のストレスの程度を把握し、労働者自身のストレスへの気づきを促すとともに、職場改善を進めることによって、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止することを主な目的としたものです。ストレスに関する質問票に回答し、それを集計・分析することで労働者のストレスがどのような状態にあるかを調べます。
労働安全衛生法に基づき、50人以上の労働者がいる事業場に対し、年に1度の実施が義務付けられています。契約期間が1年以上または1週間の労働時間が、通常の労働者の4分の3以上の要件を満たす必要があり、社長や役員、派遣労働者は対象外です。
ストレスチェックの一連の流れ
<一連の流れ>
①ストレスチェック導入前の準備
ストレスチェックの実施内容・方法について等、社内ルールを取り決め、従業員に周知する。
②ストレスチェックの実施
③結果の確認・通知
ストレス状況の評価や、産業医による面談の要否を確認。面談が必要な場合、本人に結果を通知する。
④必要に応じた措置・職場改善
必要に応じて従業員の面談などを行う。また、ストレスチェックの集計・分析を行い職場環境の改善も検討する。
ストレスチェックシートは企業が作成できる
ストレスチェックを行うシートに、特に指定はありません。紙ベースで行うのか、ネットを利用して行うのかなどは企業の判断によります。また、ストレスチェックシートの質問内容も企業の任意であり、質問項目なども決められます。
ただし、質問項目設定の際には含めなければならない項目があるため注意が必要です。詳しくは後述の「ストレスチェックシート作成時のポイント」で説明します。
ストレスチェックシートのサンプル
ストレスチェックの質問票はどのようなことを聞くのでしょうか? 厚生労働省がサンプルシートを提供しているので紹介します。
厚生労働省が推奨するサンプルシート
サンプルシートは主に23項目版、57項目版、80項目版の3種類があり、厚生労働省ではベーシックな57項目版を推奨しています。
職業性ストレス簡易調査票(簡略版23項目) | 設問数が少ないので短時間で行えるが、得られる情報は少なめ。従業員のストレス状況を知るには、不十分。 |
職業性ストレス簡易調査票(57項目版) | 厚生労働省が推奨する標準的な調査票。5〜10分ほどで回答できるので多くの企業が使用している。ただし、職場に対する評価項目はないので、職場環境へのストレスがわかりづらい。 |
新職業性ストレス簡易調査票(80項目版) | 基本の57項目版にハラスメントや働きがいなどに関する内容を盛り込んでいる。人事評価や職場全体の評価もあるため、職場環境を改善したい企業に向いている。 |
項目数が多いほどチェックを受ける側の手間は増えますが、その分詳細にストレス状態をチェックできます。
サンプルシートのダウンロードサイト
厚生労働省のサンプルシートは必要事項を網羅しているので利用すると便利です。23項目版と57項目版は、「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」ダウンロードサイトよりダウンロードできます。参考にしながらストレスチェックシートの内容を考えてみましょう。
※57項目版 サンプルシート
※23項目版 サンプルシート
※厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム
なお、同サイトではシートの他、ストレスチェックの結果出力、集団分析等ができる実施プログラムも無料で配布しています。
このようにサンプルシートを用いてストレスチェックを自社で運用したり、設問を追加したりすることも可能ですが、よりスムーズにストレスチェックを実施し、その結果内容を活かしていくために、ストレスチェックから組織改善までをワンストップでサポートするサービスを活用するのもおすすめです。
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独自ストレスチェックシート作成のポイント
業種や職種、企業の規模などによって、労働者が受けるストレスの程度や種類は異なります。
ストレスチェック制度の目的は労働者のメンタルヘルス不調を予防することにありますので、国が推奨している「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」に加えて、ストレス耐性(ストレスに対処する方法・ストレスを緩和するための工夫)やエンゲージメント(仕事への熱意度)に関する質問項目などを、事業場独自に追加することが望ましいといえます。
ストレスチェックシートを企業が作成する場合、押さえておきたいポイントがあります。ストレスチェックを適切に行うために、正しい質問項目を設定しましょう。
指定された3領域の項目を含める
ストレスチェックシートを作成する場合は、以下の3つの領域を含まなければなりません。
1. 仕事のストレス要因:ストレスの原因に関する質問項目
2. 心身のストレス反応:ストレスによる心身の自覚症状に関する質問項目
3. 周囲のサポート:労働者に対する周囲のサポートに関する質問項目
企業独自の質問項目を選定する場合、これら3つの領域を含めましょう。
参照:厚生労働省『労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル』
ストレス状態を診断する質問のみで構成する
ストレスチェックの目的にそぐわない質問項目を、ストレスチェックシートに盛り込むことは禁止されています。例えば、性格や適正を調べるような質問項目やうつ病など精神疾患をスクリーニングするような質問項目は入れてはいけません。
産業医など専門知識を持つ人と相談しながら進める
ストレスチェックシートの質問項目は、ストレス状態を診断できるという一定の科学的な根拠に基づいたものでなければなりません。
質問項目を追加したり、事業場独自のストレスチェックシートを作成したりする場合、規定を満たした質問項目にするだけではなく、ストレスの程度を評価する方法についても検討する必要があります。
社内のみで内容を決めるのではなく、ストレスチェックの実施者となる産業医や、ストレスチェックを専門的にサポートしている外部業者などに相談し、意見・判断を仰ぎながら作成することが不可欠です。専門業者に外部委託することも考慮に入れ、どのようなストレスチェックシートを使用するか定めましょう。
ストレスチェック実施に必要な事前準備と事後対応
ストレスチェックはシートを作ればそれだけで実施できるというわけではありません。スムーズに進めるための事前準備と、ストレスチェックを活用する事後対応が重要です。最後にストレスチェックの事前準備と事後対応について確認しておきましょう。
ストレスチェックの事前準備
・従業員へ実施の旨を周知する
法令根拠から、質問内容、回答方法や操作方法などの他、回答については産業医のみが確認し、必要に応じて面談推奨の連絡をすることなどを伝えます。この際、企業側が個人結果を把握することはありません。
▼従業員への通知文例はこちら:通知文書例(厚生労働省)
・ストレスチェックを行う目的や意味を伝える
ストレスチェックは高ストレス者をスクリーニングする目的ではなく、従業員自身のストレスへの気づきを促すとともに、働きやすい職場づくりを進めることでメンタルヘルス不調を未然に防ぐためのものです。また、この結果が人事評価に影響することはない旨をしっかり伝えるとともに、正直な気持ちで答えてもらえるように周知しましょう。
より多くの従業員が受検し、リアルな実態を把握することが企業の課題発見にもつながる意義を周知しましょう。
ストレスチェックの事後対応
・集団分析を実施し職場改善に活かす
ストレスチェックの結果は集団ごとに集計・分析し、職場ごとのストレスの状況を把握します。
「労働安全法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」では、「仕事のストレス判定図」を用いた分析手法を紹介しているので、参考にしましょう。
・高ストレス者には面談措置などを行う
ストレスチェックの結果、面接指導が必要とされた従業員に対しては面接の申し出の勧奨を行い、医師による指導を行いましょう。(実施可否は従業員本人が選択)
面接指導を行うのは産業医または事業場の産業保健に従事する医師が推奨されています。面接指導を行った医師としっかり連携を取り、従業員に対する措置を決定しましょう。
・労働基準監督署への報告
面接の実施後はストレスチェックと面接指導の実施状況を労働基準監督者へ報告します。報告には既定の様式が必要のため、厚生労働省のHPからダウンロードしましょう。また、インターネット上での提出も可能です。
※厚生労働省 ダウンロード先
自社に適したシートでストレスチェックを行おう
ストレスチェックを実施することで、企業は従業員のストレス・メンタル状態の傾向を把握し、働きやすい職場づくりに活かすことができます。また、従業員も自身のメンタルの状態を把握できます。ぜひ今回紹介した内容を参考に自社のストレスチェックシートの作成・見直しや、ストレスチェック制度の整備を行い、従業員のメンタルヘルスケア対策に活かしてください。
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