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外部委託契約書を作成するのは事業者? それとも委託業者?
労働者のメンタルヘルス不調を未然に防ぐため、労働者の数が常時50人以上の事業場には、1年に1回以上ストレスチェックを実施することが義務付けられています。しかし、通常の業務が忙しいなどの理由で、ストレスチェックに取り組むことが困難な事業場もあるのではないでしょうか。
そのような場合は、ストレスチェック実施において事業者が行わなければならない業務以外の一部もしくは全てを、専門業者に外部委託する方法があります。
ストレスチェックを行う際は、社内規程や質問票(調査票・ストレスチェックシート)など用意すべき書類がいくつかあり、厚生労働省のホームページにひな型が用意されています。
しかし、ストレスチェックに関わる業務を、事業者が外部に委託する際の契約書は委託業者が用意するものなので、事業者が作成する必要はありません。のちのちトラブルにならないよう、事業者は委託業者が用意した契約書の項目を十分に確認しましょう。
ストレスチェックの外部委託契約書、必ずチェックしたい6項目
ストレスチェックの外部委託契約書には、どのような項目が含まれていなければならないのでしょうか。契約書を取り交わす前にチェックすべき6項目についてご説明します。
1. 守秘義務
ストレスチェックやそれに伴う面接指導を実施するに当たって知り得た個人情報を第三者に漏らすことは禁止されていて、違反した場合は罰則規定があります(労働安全衛生法第119条第1項)。委託業者が守秘義務についてきちんと理解しているかどうかを確かめましょう。
2. 安全管理
守秘義務と通じる部分もありますが、情報セキュリティ の面でストレスチェックが安全に行われること、また、労働者の受検結果や高ストレス者への面接指導結果などのデータが適切に取り扱われ保存されることついて、事業者は十分に注意する必要があります。なお、ストレスチェックの受検結果は、労働者本人の同意がない限り事業者に提供されることはありません。同意を得て事業者に提供された場合は5年間(義務)、同意が得られなかった場合はストレスチェックの「実施者」が5年間(望ましい)、受検結果の記録を保存します。
3. 業務委託範囲
ストレスチェックをどこまで行うかは事業者によって異なります。紙やWebによるストレスチェックの実施や医師による高ストレス者への面接指導といった労働安全衛生法によって義務付けられていることのみ行うのか、それとも、努力義務とされている集団分析なども含めるのかを決めて、ストレスチェック実施行程のうちどこまでを委託業者が担当するのかについて、明記されていなければなりません。
4. 有効期限
委託業者がストレスチェックに関わる業務に携わる期間について、業務委託範囲を確認の上、事業者と委託業者が共通認識を持つことが重要です。
5. 費用
契約書に書かれている場合と別途書かれている場合があります。委託業者の作成した契約書に費用が記載されていないときは、費用が記載された別の書類を確認しましょう。
6. 収入印紙
請負、不動産などに関する契約を事業者や個人が結ぶ場合、契約書に収入印紙を貼ることが法律で定められていますが、ストレスチェックの外部委託契約書に収入印紙を貼る必要はありません。
厚生労働省は、ストレスチェックを外部委託する場合のチェックリスト「外部機関にストレスチェック及び面接指導の実施を委託する場合のチェックリスト例」を例示しています。ストレスチェックに関わる業務を専門業者に委託することを検討している事業者は、チェックリストを参考にして外部委託業者を選ぶといいでしょう。
ストレスチェックを外部委託するケースとは?
最後に、事業者がストレスチェックを外部委託する主なケースについてご紹介します。
<事業場の規模が大きい場合>
事業場の規模が大きければ大きいほど、ストレスチェックにかかる時間が増大します。数百人、数千人の労働者が働く事業場の場合、ストレスチェックを担当する人事・総務担当者の通常業務に支障が出る可能性が高くなりますので、ストレスチェックを外部委託することを検討するといいでしょう。
<産業医がストレスチェックに対応できない場合>
労働安全衛生法によって、労働者が常時50人以上いる事業場は産業医を選任することが義務付けられています。産業医は各事業場の業務や職場環境を把握しているため、ストレスチェックを実施する際の「実施者」や高ストレス者への面接指導を担当することが求められています。
しかし、メンタルヘルスが専門分野ではない、時間が取れないなどの理由によって、産業医がストレスチェックに対応できないケースもあります。その場合は、実施者の業務や面接指導を専門業者に委託し、産業医は共同実施者としてストレスチェックに関わることが望ましいとされています。
<職場改善に真剣に取り組む場合>
事業者だけでストレスチェックを行うと、労働者が記載した質問票から得られたデータを正確に分析できなかったり、受検結果を職場環境の改善に適切に活かせなかったりする場合があります。
努力義務である集団分析まで行って職場のストレス要因を明らかにし、労働者が働きやすい環境を整えることを本気で目指すのであれば、専門知識や経験を持つ業者に外部委託した方が効果的といえるでしょう。
労働安全衛生法が改正されて2015年12月にストレスチェックが義務化されたため、ストレスチェックを「やらなければならないこと」と考えてしまいがちですが、多くの企業にとっては「やった方が良いこと」です。
時間と費用がかかりますが、ストレスチェックを行うことで労働者の生産性が高まったり、離職者が減ったりする効果もあります。採用や新人教育に必要なコストを考えれば、むしろ経費削減につながるケースも少なくありません。
法律で定められているから仕方なく行うのではなく、従業員と企業のために前向きにストレスチェックと向き合っていきましょう。