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メンタルヘルス対策について学ぶ、ストレスチェックの実施者向け研修
ストレスチェックを行う実施者やストレスチェックにおける事務業務に携わる実施事務従事者、ストレスチェックの実施計画を作成したり実施管理をしたりする実務担当者には、ストレスチェック制度の知識とメンタルヘルスへの理解が求められます。
独立行政法人労働者健康安全機構が47都道府県に設置している産業保健総合支援センターなど、さまざまな機関でストレスチェックやメンタルヘルスに関する研修が行われていますので、ストレスチェックの業務を担当している方はそのような機会を利用しましょう。
ここではまず、ストレスチェックの実施者が受ける研修についてご紹介します。ストレスチェックの受検結果を評価し、個々の労働者が医師による面接指導を受ける必要があるかどうかを判断する業務などを行う実施者は、以下のいずれかの者から選定することが定められています。
1. 医師
2. 保健師
3. 厚生労働大臣が定める研修を修了した看護師もしくは精神保健福祉士
つまり、医師や保健師が実施者になるために研修を受ける必要はありませんが、看護師もしくは精神保健福祉士は、研修を受けなければ実施者にはなれないのです。ただし、労働者の健康管理などの業務に3年以上従事した経験がある場合は、研修が免除されます。
研修は表1の範囲で5時間程度実施され、研修実施機関によっては、研修を受けた後に試験が行われます。研修に参加する費用は1万5,000円ほどです。
看護師や精神保健福祉士が実施者になる場合はもちろんですが、研修を受けなくても実施者になれる医師や保健師であっても、ストレスチェック制度やメンタルヘルスについての理解を深めるために、研修を受けた方が良いでしょう。
看護師・精神保健福祉士に対する研修に関する情報 [厚生労働省]
※「関連情報」から研修開催状況をご確認いただけます。
ストレスチェックについて知る、実施事務従事者や実務担当者が受けるべき研修
ストレスチェックの実施事務従事者や実務担当者、人事労務担当者などが、ストレスチェックを適切に行うための研修会やセミナーも開催されています。
労働者の同意を得ない限り、事業者はストレスチェックの受検結果を知ることができなかったり、受検結果は厳重なセキュリティのもとで5年間保管しなければならなかったりと、ストレスチェック進める上で知っておかなければならないことは数多くあります。
また、メンタルヘルス不調を未然に防ぐというストレスチェック制度の目的を正しく理解していないと、ストレスチェックを実施しても十分な効果を得ることができません。
産業保健総合支援センターなどの公的機関やEAP企業(メンタルヘルスケアなど従業員を支援するためのサービスを提供する企業)では、ストレスチェック制度を導入するに当たって必要な準備・検討事項、実施体制の構築から実施、ストレスの評価方法に至るまで、ストレスチェックの業務に関わる担当者が理解しておくべきことや必要な業務、手続きなどに関する知識を提供し、ストレスチェック制度を正しく運用するための支援を行っています。
これからストレスチェック制度を導入する事業場の方、すでにストレスチェックを取り入れているけれども、より効果的な実施方法について学びたい方は、研修を受けることをお勧めします。
労働者健康安全機構・産業保健総合支援センター主催の研修・セミナー
アドバンテッジ リスク マネジメント メンタルヘルス対策セミナー
「セルフケア」「ラインケア」研修で職場のメンタルヘルスケアに取り組む
最後に、職場におけるメンタルヘルスケアに関する研修について見ていきましょう。労働者自身がどうやってストレスと付き合っていくかを理解し、適切に対処することができなければ、職場のストレス状況の改善は難しいといえます。
厚生労働省は、「労働者の心の健康の保持増進のための指針」の中で「4つのケア」の重要性についてうたっていますので、そのうちの2つ「セルフケア」と「ラインによるケア」に関する研修について解説します。
1. 個人でできる対処法を学ぶ「セルフケア」研修
自分で自分のケアを行う手法を身に付けるための研修です。実は、ストレスを受けながらもストレスを感じていることに気付かない、あるいはストレスと認識していないケースがよくあります。
そのため、セルフケア研修では、「ストレスとは何か」という定義の説明から始まります。ストレスがどんなものかを理解することで、自分のストレスに気づく機会をつくるのです。
そして、自分のストレスに気付いたところで、次にそのストレスの感じ方を軽減するための方法について考えます。ストレスの感じ方は人それぞれで、ストレス耐性にも個人差があるものです。
メンタルタフネスを向上させる研修もありますが、セルフケア研修では、仕事を通したストレスとの付き合い方を主眼として行っています。
仕事をする上でストレスはつきものですので、いかにその負荷を軽減するかが重要です。自分なりの充実できる時間のつくり方などを学んで実践することで、ストレスとの上手な付き合い方を知り、効果的なリフレッシュ方法見つけることが、セルフケア研修の目的となります。
なお、セルフケア研修の対象者は労働者全員、つまり管理監督者も含まれます。管理監督者自身もセルフケアを行うことでストレスを軽減することが可能です。「自分は大丈夫」という固定観念を捨て、「だれでもメンタルヘルス不調になりうる」ことを前提に、メンタルヘルスについて学ぶことが大切です。
厚生労働省の運営する働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」では、15分でセルフケアについての基礎知識を得ることができますので、ぜひ試してみましょう。
こころの耳 e-ラーニングで学ぶ「15分でわかるセルフケア」 [厚生労働省]
2. 管理職向けの「ラインケア」研修
部下を持つ管理職を対象とした研修です。管理監督者は部下の状況を日常的に把握し、具体的なストレス要因を特定できる立場にあるので、職場環境の改善において重要な役割を担っています。
また、上司と部下という関係自体が労働者にとってはストレスとなり得ますので、管理監督者はその点を十分に理解して、ストレスや職場環境の改善活動を行うことが求められます。そのため、事業者はラインによるケアをメンタルヘルスケアの要とし、管理監督者に適切な研修を行う必要があります。
ラインケア研修にはさまざまな種類があり、基礎編・実践編・ゲーミフィケーションといったように分けることができます。
<基礎編>
部下とのコミュニケーションの取り方について、上司役と部下役に分かれてロールプレイを通じて学んだり、部下の勤怠状況や仕事の生産性など、注意すべき点がどこにあるのかについての知識を習得したりします。
<実践編>
ケーススタディやワークショップを通じて、ストレスやメンタルヘルスケアへの理解を深めます。企業などではよくあることですが、プレイングマネージャーのような高スキル者のマネジメント能力が高いとは限りません。
高スキル者は自分自身が優秀であるが故に、管理職となった際、周囲に同等の能力を求めるケースがあり、それが高ストレス者を生み出すこともあります。 具体事例を通してメンタルヘルスケアについて学ぶことは、組織を運営していく上で大変重要な意味を持っています。
<ゲーミフィケーション>
メンタルヘルス不調者への対応を、ゲーム形式で学びます。管理監督者も万能ではありません。立場上、また問題の性質上、他者に助けを求めづらいために、上司自身が問題を抱え込んでしまい、新たなストレスを生み出す懸念があります。
こうした事態を防ぎ、組織全体の生産性を低下させないためにはどのようなケアを行うのがよいか、管理監督者同士でディスカッションを行うことで、「横のラインケア」についても学ぶことができます。
セルフケアだけではなくラインによるケアについても、厚生労働省の運営する働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」で基礎知識を学ぶことが可能です。
管理監督者がメンタルヘルスケアについての正しい知識を身に付け、それを実践することによって職場環境の改善が進むことは、管理監督者のストレス軽減にもつながりますので、積極的にメンタルヘルスケアに取り組んでいきましょう。
こころの耳 e-ラーニングで学ぶ「15分でわかるラインによるケア」 [厚生労働省]