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ストレスチェックに関わる助成金は4種類
ストレスチェックは事業者に義務付けられた制度のため、ストレスチェック実施に係る費用は全て事業者の負担となります。
実施が努力義務とされている労働者が50人未満の事業場では、メンタルヘルス対策に取り組むためにストレスチェック制度を導入することを検討したものの、費用面で諦めてしまったケースもあるでしょう。
実は、2017年度にストレスチェックに関わる助成制度が3種類新設され、50人未満の事業場がストレスチェックを行う場合は4種類の助成制度が利用できるようになりました。また、50人以上の事業場でも対象となる助成制度もありますのでご紹介します。
1. ストレスチェック助成金
対象 : 労働者の数が50人未満の事業場
助成内容 : ストレスチェック、医師による高ストレス者への面接指導など
産業医の要件を備えた医師と契約してストレスチェックを実施する際、労働者1人につき500円を上限として実費支給されます。
また、ストレスチェックの受検結果によってストレスが高いと判定された「高ストレス者」が医師による面接指導を受けた場合、それに伴う医師の活動1回につき21,500円を上限として実費支給されます。1事業場につき年3回まで申請が可能です。
2. 小規模事業場産業医活動助成金
対象 : 労働者の数が50人未満の事業場
助成内容 : 産業医活動(ストレスチェック、高ストレス者への面接指導など)
2017年度に新設された助成制度です。産業医の要件を備えた医師と産業医活動の全部もしくは一部を行う契約を、2017年4月1日 以降「新たに」結んだ場合、6カ月当たり10万円を上限として実費支給されます。
支給を受けられるのは1事業場につき将来にわたって2回限りで、これまでに産業医を選任していなかった事業場に限られます。産業医活動とは、職場巡視や健康診断異常所見者に関する意見聴取、保健指導などを指します。
3. 心の健康づくり計画助成金
対象 : 事業場の労働者の数に制限なし
助成内容 : ストレスチェックを含むメンタルヘルス対策
2017年度に新設された助成制度です。メンタルヘルス対策促進員の助言や支援(3回まで)を受け、ストレスチェック実施計画を含む心の健康づくり計画を2017年4月1日 以降「新たに」作成・周知し、計画に基づいてメンタルヘルス対策を実施した場合、一律10万円支給されます。
支給を受けられるのは、1企業につき将来にわたって1回限りです。メンタルヘルスに関する専門家などに業務を外部委託する場合に係る費用などが対象です。
4. 職場環境改善計画助成金
対象 : 事業場の労働者の数に制限なし
助成内容 : 職場環境改善におけるコンサルタント費用、機器・設備購入
2017年度に新設された助成制度です。ストレスチェックを実施し集団分析を行った後、職場環境改善計画の作成・実施において産業医などから指導や助言を受けた場合、将来にわたって1回限り支給されます。
例えば、「職場が暑い(寒い)」「湿度が高い」といった労働者からの声に対する改善策として、エアコンを買い換える費用などが対象です。
<専門家の指導を受けた場合>
指導にかかる費用や機器・設備購入費の実費が、10万円を上限として支給されます。うち機器・設備購入費は5万円が上限、なおかつ単価5万円以内のものとされています。
専門家とは、2017年4月1日 以降「新たに」職場環境改善指導に係る契約を締結した産業医などの医師、保健師、看護師、精神保健福祉士、産業カウンセラー・臨床心理士などの心理職、労働衛生コンサルタント、社会保険労務士を指していて、原則社外の人物となります。
<メンタルヘルス対策促進員の助言・支援を受けた場合>
産業カウンセラーや社会保険労務士などの資格を有する「メンタルヘルス対策促進員」から、2017年4月1日 以降「新たに」助言や支援(訪問3回まで)を受けて機器・設備を購入した場合の実費が、5万円を上限として支給されます。こちらも単価5万円以内のものが対象です。
ストレスチェックに関連する4種類の助成制度については、以下のサイトで確認できます。
独立行政法人 労働者健康安全機構
【概要】
https://www.johas.go.jp/Portals/0/data0/sanpo/sanpojoseikin/pdf/jyoseikin_annai_H29.pdf
「ストレスチェック助成金」の申請・受給方法
労働者が50人未満の事業場が利用できるストレスチェックに関わる助成制度4種類のうち、「ストレスチェック助成金」の申請・受給方法を見ていきましょう。
まずは、次の5つの要件を全て満たしているかどうかを確認してください。満たしていなければ、「ストレスチェック助成金」を申請することはできません。
1.労働保険の適用事業場であること。
2.常時使用する従業員が派遣労働者を含めて50人未満であること。
3.ストレスチェックの実施者が決まっていること。
4.事業者が産業医資格を持った医師と契約し、ストレスチェックに係る医師による活動の全部または一部を行わせること。
5.ストレスチェックの実施および面接指導などを行う者は、自社の使用者・労働者以外であること。
<「ストレスチェック助成金」手続きの流れ>
産業医やストレスチェック実施者との契約内容が支給要件を満たしていないと、助成金が支給されないことがあります。
助成金を申請する場合は、産業医やストレスチェック実施者と契約を結ぶ前に、以下の添付書類の「4. ストレスチェック助成金支給申請チェックリスト兼同意書」を確認しましょう。また、ストレスチェック実施後、6カ月以内に助成金の支給申請を行う必要がありますのでご注意ください。
<申請に必要な提出書類・添付書類>
【提出書類】
1.ストレスチェック助成金支給申請書
【添付書類】
2.ストレスチェック実施報告書
3.ストレスチェックに係る医師による活動報告書
4.ストレスチェック助成金支給申請チェックリスト兼同意書
5.産業医との契約書(写)
6.産業医の要件を備えた医師であることを証明する書類(写)
7.労働保険概算・確定保険料申告書等(写)
8.ストレスチェック実施者へ支払った費用の領収書(写)
9.産業医へ支払った費用の領収書(写)
10.ストレスチェック実施者の要件を備えていることを証明する書類(写)
11.労働保険料一括納付に係る証明書
12.事業所宛ての返信用封筒(切手貼付)
1~4の書類は、独立行政法人労働者健康安全機構のホームページから書式をダウンロードし、記入してから提出します。
5~10の書類は、原本ではなく原本をコピーしたものを提出します。
10、11は、該当する事業場のみ提出します。
メンタルヘルスケアに関わる助成金
中小企業には、ストレスチェック制度以外のメンタルヘルスケアで利用できる助成制度も用意されています。
「中小企業労働環境向上助成金」の雇用管理制度助成は、中小企業の事業主が労働者の労働環境向上を図ることを目的として、雇用管理の改善につながる制度などを導入・実施した場合に対象となる制度です。
導入した制度に応じた定額(30万円または40万円)が支給されます。メンタルヘルスの専門家が、労働者の相談に対応するといった健康づくり制度の導入も支給対象になりますので、詳しい受給条件や申請方法などを厚生労働省のホームページで確認してみましょう。
労働者が50人未満の事業場がストレスチェックを行うと時間や費用の負担が大きいため、ストレスチェックの実施は努力義務とされています。しかし、大企業と比べると一人ひとりの業務範囲が広く、個々の労働者が持つ責任が重い傾向がある中小企業こそ、「ストレスチェックを実施するべき」との声も少なくありません。
50人未満の事業場であっても、ご紹介した助成制度を積極的に活用するなどして、メンタルヘルス対策に取り組んでいきましょう。