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衛生委員会の目的は、労働者の安全と健康の確保
常時使用する労働者が50人以上の事業場には、衛生委員会(*)の設置が義務付けられています(労働安全衛生法第18条)。労使が一体となって、労働者の危険や健康障害を防止するための対策を講じることが目的です。
*一定基準に該当する事業場では、衛生委員会の代わりに安全委員会または安全衛生委員会を設置。
一方、50人未満の事業場には衛生委員会の設置義務はありませんが、関係労働者の意見を聞くための機会を設けなければなりません(労働安全衛生規則第23条の2)。 職場における安全衛生は、それだけ重要だと考えられているのです。
衛生委員会は、事業者が指名する次の委員によって構成されています。このほか、労働者の中から作業環境測定士(適正な作業環境を確保して労働者の健康を保持する役割を持つ国家資格)を加えても構いません。
① 総括安全衛生管理者または事業場における事業の統括管理者もしくはこれに準ずる者 : 1名
② 衛生管理者 : 1名以上
③ 産業医 : 1名以上
④ 労働者のうち衛生に関する経験を持つ者 : 1名以上
①以外の委員の半数は、過半数の労働者から成る労働組合の推薦が必要となります。そのような労働組合がない事業場の場合は、労働者の過半数を代表する者からの推薦が必要です。
②の衛生管理者には、事業場の業種に応じた以下いずれかの国家資格などが求められます。
A. 衛生工学衛生管理者免許
B. 第一種衛生管理者免許
C. 第二種衛生管理者免許
D. 医師または歯科医師
E. 労働衛生コンサルタント
F. その他厚生労働大臣の定める者
また、作業環境測定士を衛生委員に含めなくても問題はありませんが、事業場に資格所有者がいるのであれば衛生委員に加えることが推奨されています。
衛生委員会の活動について
衛生委員会の目的と構成を理解したところで、具体的な活動を見ていきましょう。簡潔に言えば、事業場の衛生環境や労働者の健康保持に関するあらゆる問題について調査審議を行い、その報告や事業者に対する意見を述べるのが衛生委員会です。
衛生に関する規程の作成に始まり、健康診断・作業環境測定の計画作成やその結果に基づく対策立案、労働災害防止対策の樹立、ストレスチェックの実施に係る調査審議などの役割を担っています。
労働安全衛生規則第23条により、衛生委員会は月1回以上の開催が義務付けられていて、開催後は審議した内容を遅滞なく、書面などを用いて労働者に周知しなければなりません。
また、重要な議事に関しては記録を作成して3年間保存することも定められていて、違反した場合は50万円以下の罰金が科せられます(労働安全衛生法第103条)。
ストレスチェックにおける衛生委員会の役割
衛生委員会の役割の一つに、ストレスチェックの実施に係る調査審議があります。
ストレスチェックの実施は産業医などの実施者が担いますが、衛生委員会では、ストレスチェックの実施目的の明確化や実施体制の構築、実施方法の検討、実施に際しての情報の取扱規程の策定、受検結果の保存方法、受検結果の提供における労働者からの同意の取得方法など、ストレスチェックの実施に関わる事項を細部に至るまで調査審議し、事業者の決定をもってストレスチェックの実施が可能となります。
ストレスチェックの実施後は、ストレスチェックや医師面接の実施状況の点検・確認、改善事項の検討など振り返りを行い、次回の実施に向けてPDCAサイクルを回していきます。
ストレスチェックに関する苦情処理や対象となる労働者全員にストレスチェックを受検してもらう方法の検討、集団分析の方法など、実施前の準備から実施後の振り返りまで、対応すべきことは多岐にわたります。
実施者や実施事務従事者を外部委託した場合は、外部委託先の評価も衛生委員会で行います。
なお、実施者が衛生委員会に出席する義務はありませんが(実施者が産業医の場合を除く)、ストレスチェック体制の確認や実施者の意見を仰ぐことが必要な場合もありますので、実施者を外部委託したときは外部委託先に衛生委員会への出席を要請するといいでしょう。