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ストレスチェックは外部委託が可能?
ストレスチェックの実施に際しては、社内規程の整備から実施、面接指導や職場分析を通じた労働環境改善策の検討、労働基準監督署への実施報告に至るまで、対応すべき事項はたくさんあります。
通常業務を行いつつ、年に1度のストレスチェックに大事な人的リソースを割くことが難しいと考える事業者もいるかもしれません。人事・総務の担当者への負荷も、事業者の規模によっては相当大きくなることが予想されます。
実はストレスチェックは、一部の業務を除き外部委託することが可能です。事業者が担当すべき役割と外部委託可能な役割を明確にしておきましょう。
<外部委託不可(事業者が対応)>
・自社の担当窓口の選任(主に人事担当者など)
・衛生委員会での調査・審議(外部委託先と共同して開催することは可能)
・方針決定、社内規程の整備、従業員への告知
・面接指導を行った医師からの意見聴取
・面接指導の結果を踏まえた高ストレス者への就業上の措置実施
・職場環境の改善策検討と実施(外部コンサルタントなどによる助言を受けることは可能)
・実施報告書の提出
<外部委託可>
・実施者、実施事務従事者の代行
・ストレスチェックの実施、受検結果の回収・集計評価、労働者への受検結果の通知(実施者を含む実施事務従事者の業務)
・メンタルヘルス教育研修の実施
・相談窓口の設置
・職場分析
・面接指導の申し出の勧奨(実施者の業務)
・面接指導の実施(医師のみが実施可能)
事業場内にメンタルヘルスについて専門的な知識を持っている者がいる場合や産業医が常駐している場合などは、専門業者へ外部委託せずに事業者が全て対応することも可能です。
ただし、業務の手間を考えると、自社の持っている資源や能力に応じて外部に委託したほうが合理的である場合も多いです。また、相談窓口を設置する場合など、相談のしやすさを考慮すると、外部委託した方がより利用しやすいと思われます。
ストレスチェックの「実施者」に必要な条件は?
ストレスチェックの「実施者」になれるのは、以下のいずれかの要件を満たす者です。
1.医師
2.保健師
3.厚生労働大臣が定める研修を修了した看護師もしくは精神保健福祉士
各事業場の産業医が実施者になることが望ましいとされていますが、実施者を外部委託した上で、産業医に共同実施者となってもらうことも可能です。また、実施事務従事者となるのに資格は不要ですが、実施者同様、管理職など人事において一定の判断を行う権限を持つ者はなれません。
実施者を含む実施事務従事者は、ストレスチェックやそれに伴う面接指導において知り得た個人情報について守秘義務を負い、違反した場合は罰則が定められています。
ストレスチェックを実施した結果、ストレスが高い「高ストレス者」と判定された労働者への面接指導は、医師であれば誰でも行うことができます。ストレスチェック実施者とは異なり、面接指導の実施は、労働者に対して人事権を持っている医師でも携わることができます。
ただし、そのことにより高ストレス者が面接指導を申し出にくくなることが想定されるため、人事権のない医師に依頼するのが望ましいです。
外部の医師に面接指導を委託する場合、高ストレス者の労働環境や業務内容などへの理解が不足するケースがあるため、事前に面接指導する医師に対して情報提供することが重要です。提供する情報は、ストレスチェックの結果や健康診断の情報などが有用です。
外部委託業者はどのように選べばいい?
ストレスチェックを実施する際、事業者が行わなければならない業務以外の一部もしくは全てを専門業者に外部委託する場合、どのような観点で委託先を選択すればよいのでしょうか。
厚生労働省では、外部委託を行う場合のチェックリスト(外部機関にストレスチェック及び面接指導の実施を委託する場合のチェックリスト例)を例示しており、「ストレスチェック制度への理解」「実施体制」「ストレスチェックの調査票・評価方法および実施方法」「ストレスチェック実施後の対応」「面接指導の実施方法」「面接指導実施後の対応」などの項目を確認することを勧めています。
現時点ではストレスチェックにおける厚生労働省の認可制度はありませんが、今後、整備される予定です。ストレスチェックの外部委託に際しては、厚生労働省が挙げているチェックリストを確認し、委託先が提供しているサービス内容と費用を検討しましょう。
第一に重視すべきは、実施者となったり高ストレス者への面接指導を行ったりできる医師が在籍しているかどうかです。また、ストレスチェックは法制度としては始まったばかりですが、一部の企業では法制化される以前より実施されていたため、実績のある委託先を選ぶこともポイントです。
さらに、要配慮個人情報(機微情報)を取り扱うことから、情報セキュリティに関する外部認証(ISMS/ISO27001、プライバシーマークなど)を取得しているかどうかも、委託先を決める上で重要な判断要素となります。情報管理を含む実施体制がきちんと整備されている業者を利用することが大切です。
ストレスチェックの業務を専門業者に外部委託することで、より専門的な知識に基づく対応が望めますし、人事や総務担当者など、事業者においてストレスチェックに関わる従業員の負担を軽減できることは大きなメリットです。
委託先の選択肢として、さまざまなサービス提供機関があります。それぞれに強み弱み、対応可能な範囲が異なりますので、事業者だけでは対応できない部分を明確にし、その部分をカバーできる委託先を選ぶようにしましょう。